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幕間 旅立つ前に アリッサ視点。

前略 兄さまへ


次回のリオ様の旅は私も同行することとなりました。

ご主人様の希望により。


それで、相談なんですが……



「どーすればいいんでしょう。これ。」部屋の中が散らかっている。どうして、昨日片付けたはずが、今日もまた床におびただしい紙と書籍が散乱しているのか…。


宮殿には私以外の給仕をしている方々ももちろん居て。お気遣いくださって顔を出してくださる方もいらっしゃるので、前回この情景を見た方への説明は、大変困難を極めました。


「リオ様、おはようございます。」私はカーテンを開くと、ベットの主に声をかける。


「…おはよ、アリッサ。早いね。…もうそんな時間?」リオ様はベットに広がる黒髪をかき揚げ、起きようとしますが、

「っ…まーたーか。初代、重いのでどいてください。」彼女をかき抱いて寝ていた人物に向かって鉄拳を下ろします。


あ、上手。


その拳は軽く右手で押さえられ、のそり、と隣に寝ていた人物が起きます。この方も黒髪に黒目です。リオ様を見ている所為で見慣れていましたが、どうにも全身黒ずくめで、眠る時までそうなので今も黒い衣類をお召しです。


「『収集』」この方の声はどこまでも低く、静かです。リオ様が動とすればこの方は静でしょうか。


その一瞬で、部屋にあった紙と書籍が一カ所に積み上げられ整理されます。


「無駄に使わない方がいいんじゃないの。電池切れるよ?」リオ様が言います。リオ様。年頃の娘様がそんな格好で仮にも男性と床を共にするというのはどうなのでしょう。


ここ数日、私が気づいた時にはこのような状況で朝を迎えておりました。

殿方は『初代黒の術師』でカキザキ様。リオ様の師匠にあたる方です。そこでノックがして、私は扉へ向かいました。


「はいーあ、」

兄でした。

「お久しぶりでございます。リオ様。用命を受けましたもの、お持ち致しました。」そう言って平然と部屋に入って行く。兄様、この状況で何か言うことは無いのでしょうか?


「ヨアキム!久しぶり。ありがとう!」

「リオ様!その格好では!」私が慌てて言うと、リオ様も気づいたようで、あわてて掛け布団で隠しますが、兄様はそんなことでは動じません、むしろー


「リオ…失礼した。」何故か、兄の後ろに居た、ご主人様が。


私は見ました、ご主人様の目がリオ様をしっかり観察しているのを。そして、その隣の殿方へ注がれたのも。



「え!?ちょ、ウリセス!?何か誤解…って初代〜っ!?」また、黒い2人がじゃれてます。これも、数日見慣れた風景なのですが。


「ははははは。男の嫉妬は見苦しいなァ!」ものすごく楽しそうです。やめてください。今、何か精霊がざわざわしてますから。ご主人様の感情が荒れてますから。


「うわっ初代ど、どこ触ってんのー!!!」

「そりゃーま、俺も健全なオトコだからなー」

あ、そろそろ危ないので避難させてくださいね。


ドゴン!バリン!ガゴゴゴッ。


「目覚めのティーは何がいいでしょうか。」多分、ここ数日で倒壊しただろう部屋の1つにまた隣の部屋が加わるんだろうな、などと思いながら隣の部屋の壁の剥がれる音を聞きました。


「どうやらアリッサの言うことに違いないようですね。」あ、兄様。どこから湧いたのか兄様が銀食器を見つめながら言う。


つまり、ご主人様が今朝来られたのは兄様の所為なのですね?


「我が君にようやく春が来た、というわけですね?」

「私としては、この三角形の中での旅路は非常にしんどいのですが。」つい弱音を吐いてしまう。

「では、リオ様に精霊についてお教えしましょう。」

「どういうことですか?」

「リオ様は精霊をご存じない。見えるようにはなったものの、今はほとんどその感覚を切断されている。ならば、精霊とは何なのか、何であるのか、どうあるのか、という所をお教えしなくてはなりません。我が君の今の状態を知っていただくためにも。」

「どうか、お願いします。」

「いえ、可愛い妹の頼みです。そして何より我が君が荒れることは望ましくありません。」兄はにっこり笑いー何故未だに独身なのかわからないのですがー部屋を後にしました。


「さて、リオ様のお召し物、今日は何にしましょうか。」私は私の仕事に戻ったのでした。

まさかの兄登場。そろそろ次の旅へ出ます。

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