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世界領域。

「いやぁ、ご足労頂きありがとうございます。」レジールは言った。


夜通し移動だった所為か、少しやつれてみえる。


朝食の後、馬車が着く音を聞いた。いくらかもしないうちに屋敷の主であるレジールが挨拶に来た。


「全く、中央というのは人使いが荒くていけませんね…。人より多く碌を貰っているというのにわざわざ出向かないと事が進まない。ーー失礼、そのまま移動してもかまいませんか。」いえ、むしろそのお疲れな身体に仕事意外のことをさせてしまうことに、良心が咎めます。


「いえね、僕としてもこのような状態でないと、なかなかお話できそうにありませんから。」レジールは苦笑すると私たちを連れて歩き出す。


一体どこへ連れていかれるのか、疑問はあったがあの時ー初代が部屋を隔離した言葉。


『世界領域』確かにそう言った。それは何なのか。


「今から行く場所は、代々我が家の当主のみに受け継がれてきたものです。とはいえ、それほど古いものではありませんが…」


道すがら、沈黙に耐えきれなかったのかレジールが話す。


あの書庫へまた来た。

「書庫?」

「ええ。我が一族にとって『黒の術』は守るべきものでした。犠牲を払えば使えるかもしれない、そんな危険なものを魔法省には置いておけません。あちらにあるのは一般的なもののみ。桐子様は独自に自らを守るための要塞としてこの地に居を構えたのです。」だから、この屋敷はこれほど不便な土地にあるのだとレジールは言う。この地に骨を埋める覚悟をした彼女は、まず自らの力の脅威とそれによって起こる事態を正確に把握していたという。


だからこそ、辺鄙な田舎の天然の要塞の中、さらに、なんの変哲もない書庫に紛れ込ませ『黒の術』を隠した。

「あいにく、僕らは『黒の術』とも魔法とも縁は無く、厄介な遺産を受け継いだものだと、当初は思っておりました。」レジールはそう言って、右手の人差し指にナイフを当てた。

「!」少し顔をしかめたと思うと、そこから玉のような赤いものが。


それを床に向かって数的落とす。


「!」私たちを囲む輪ができる。それは静かに光っている。

「特別なものは必要ありません。桐子様の血を受け継ぐ者の血であること。それが鍵です。」何の変哲も無い床ー模様すらどこにも無いーそれが光り、やがて輪が天井へ向かって登って行く。


光りが天井に吸い込まれると、まばゆい光りが一瞬周囲を覆う。驚いて目を閉じた。


「あれは!」誰かが言う。


目を開くと、皆が上を見ていた。その視線の先にはーーーー



「…門?」天井はドーム型になっていたが、そこにどう見ても両開きの門らしき物が出現していた。


『世界領域だ。』

「初代!」隣にはいつかの時のように実体化した初代がいた。

「あなたは…」レジールや皆も驚きを隠せない。

『桐子は用心深い女だったからな。鍵を自らとしたわけだ。ー桐子の最期はどうだった?』問われ、レジールは言葉につまる。

「……穏やかな最期であったと聞きます。」

『火葬だろう?』

「はい。」

『だろうな。『黒の術師』の身体は死して直その価値がある。あいつは強い上に用心深かったからな。だからこちらで恋すら楽しめた。ーまぁ、お前にそこまで求めてはいない。』初代が私を見て言う。


相変わらず、初代は初代だ。


『死ぬ寸前まで【魔法使い】に狙われるような生き方、できるか?』


マジですか。

嫌ですね何それ怖い。おばーちゃんになっても狙われるの?


『だからこそ、自分の子孫に『黒の術』を授け、自らの砦で自らを守ったのだろう。全く、侮れない女だよあいつは。』初代が思い出したように苦笑する。


『あいつについてはこの前吸収した日記に書いてあった。人のことをやたら罵っていたがな。』何やったんですか初代。まぁその話はまた後で聞くとして。


「世界領域って何ですか。」私は聞く。


『簡単に言えば、この世界の根源だ。あそこを支配した者がこの世界を支配できるーと、思われているな。』

うわー来たよ、ファンタジー。ん?

「思われている?」

『リオはそういう小賢しいところだけ秀でている。』うるさいですよ。初代はメンバーを見回し、腕を組む。何とはない仕草すら人を惹き付け、まるで飲み込まれるように。


『【魔法使い】の元になる雫は世界領域から零れ、その雫を宿した者が【魔法使い】になる。だから【魔法使い】がその力を研磨し求めるほどに『世界領域』への想いは深くなる。『黒の術師』と戦うのは『黒の術師』が扉を開くための鍵であることを本能的に知っているからだ。最もー彼等がそれに気づくのは『黒の術師』を倒した後だが。』


「僕が聞いた話しでは、【魔法使い】とは元々貧しい人間が多いそうです。それ故、その力が見いだされると各国のお抱えになり、その国の影響を受けざるを得ないーつまり、各国が喉から手が出るほどに欲しいと思っているのが、この『世界領域』だそうです。正直、この目に見るまでは信じられませんでした。僕がこれを受け継いだのは当主になった時。そして、実際に目にするのはこれが二度目です。」レジールはそれまでの経験から、自らの手に負えないものは背負わない、と決めていた。

だから、これを受け継いだ時も限りなく隠匿しようと心に決めたのだと言う。当主はこの話しを黒の関係者以外に話せない呪いが有り、かつ、悪用されないよういくつもの縛りがあるのだという。


そんな重いものをよく子孫に残したものだと思う。


「でも初代は何でそんなことを知っているのです?」私は聞いた。『黒の術師』が倒されなければーということは。


『バカだなお前。俺は一度死んでいるだろうが。』


「!」いや、そうですけどね。そんな生き生きとした顔で言われても。


『死んだ直後に『世界領域』に飛ばされたのさ。いや、跳んだのか。どちらにせよ俺の場合は偶然俺の能力とかち合ったからだろうな。だから、あそこがーそんなお優しいもんじゃぁないことは知っている。で、桐子の子孫。だいたいの所は桐子の日記でわかっている。俺を呼んだのはそれが桐子の望みだからだろう?』


「はい。桐子様の遺言です。」レジールを見て、初代は何か目を細めた。

『目元が似ているな。あいつはいつも俺の心配ばかりしていた。』


「それで、それと今リオをここへ連れて来たことに関係が?」今まで黙っていたウリセスが言う。その声に切なくなる。

今朝、交わした挨拶

とても普通で。そういう風に私が仕向けたから。だから、彼は普通に返してくれた。

なのに、その遠くなった距離が寂しいなんて。


『「絶対領域」を知っているか。【魔法使い】が争うための領域だ。彼等は今この瞬間も、彼等自身の力と探求のために領域で争っている。』初代が言う。え。えええ!?そうなの!?


『正確には、数名だが。それが地上での人間の戦をしている国々だ。』ええと?


「今は西のベルセーンと北のファルラクが小競り合いをしていますね。そこに所属している【魔法使い】が争っていると?」レジールが応える。


『そうだ。戦となれば【魔法使い】は制限なく戦えるからな。戦を利用して『絶対領域』で戦い、『世界領域』への道を求めている。馬鹿らしいが、ここ数百年これの繰り返しだ。』何それ気持悪い。


『まぁそんな顔をするな。人類の歴史だとて戦いの歴史だ。争いの無い世界は存在しない。愛する者ですら傷つけあうのが人間だ。ーで、リオの役目だが。』


ごくり、と唾を飲み込む。


『面倒だから、『世界領域』を封印しろ。ほんと面倒だから。』ため息まじりに呟いた。


はい?

話しがでかくなってきましたが、本編まだまだ続きます。はやく二人を楽にさせてあげたい(涙)

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