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兄と妹

どうしてこうなった!?



「リオお姉様。ご機嫌麗しゅう。」


目の前に、


春の女神に愛された如く輝ける女人が佇んでおります。


うひ、なんて声にならない変な悲鳴が漏れてしまったのは、私だけのせいではないでしょう。


でしょう!?


ウリセスより薄い青い瞳が私をキラキラと見下ろしております。背が高いんですね。なんだかちょっとショック。ああ、だから妖精じゃなくて女神なんだ、私の頭すごい変換能力。


「お兄様から聞いてお待ちしていましたの。さ、こちらへ。」


春の女神―基、セラフィナさんは私の手を白魚のような手でひいていく。


ヒューザード邸は変わらず綺麗だった。庭も庭師が手入れしているのか、ウリセスと見た時とそう変わらず、むしろ花がいくつか増えたかもしれない。そこを見渡せるサンルームにお茶の準備がされていた。ぽかほかと陽射しが暖かく、そこへ座ったら長い時間馬車に揺られていた身体は間違いなく夢の世界へご招待されそう。


ともすればこのきらびやかな雰囲気にのまれそうだったが、踏ん張りましたとも。


「では、さっそくですがいくつかご質問にお答えいただけますか。」


「はいっ。お姉様。」その呼び方はもう標準装備なんでしょうか。いえ、悲しくなんかありませんよ?ええ。


セラフィナに聞いた話は以下だ。


王宮に上がった際に、誰に会ったか、何を話したか。


「私は式典まで控えの間におりました。その時ミリィも一緒でした。他に、エリカ、サリー、アンナの三名が一緒でしたわ。」


「式典までにミリィさんは席を立ちましたか?」セラフィナさんは一度思い出すように視線をそらすと、


「…はい。確か、1度だけ。はばかりにしては少し遅いような気がいたしました。それから、式典へ向かい、他の候補の方とはじめて会いました。」


「それが、閲見の間でですね?」


「はい。あの…」


「何か?」


「ミリィは王宮へ行くことは初めてのはずなんです。けれど…」


話によれば、ミリィさんは迷わず歩いていたという。それも、席を立った際、一緒に行くという先輩の言葉を断って出て行った。


「…どなたか、お知り合いがいたのでしょうか。」セラフィナは言う。


もし『黒の術』をかけられたとしたら、その時だなと思う。式が終わればすぐに帰る準備となったので、王宮をうろつく時間などはない。


「でも…身分の高い人でないと、不用意に歩いたりできないのではありませんか?」私は思い出したことを言う。それでなくても、当日の刑部の警備体制は強化されていたはずだ。


「はい。少なくとも私共がおりました北館は奥殿とも言われて、上級騎士か官、または王族の方でなければ入館の許可は下りません。許可が出たとしても、刑部の者が二人は必ずつくはずです。」


なるほど。じゃぁ、その中にミリィと接触した人間がいるかもしれないってことか。


「では次に、『黒の術』のことを。そういえば…セラフィナさんは私が怖くありませんか?」


「怖い…何故ですの?」


「…いえ、だって私も『黒の術』を使うのですよ?」一度被害に合っている人間にしては、随分落ち着いている。


「ふふ、お姉様、それはありえませんわ。お兄様がリオ様のためにあるというのなら、私もまた同じ。エセルバード様の伴侶となる者がこの程度のことで恐れていては先が知れるというものです。」おや。


意外と、強いみたいです。彼女。


「それに、お姉様、『黒の術』を使う者は【魔法使い】ですら虜にするらしいですから、私がお姉様に惹かれるのも無理はありませんわ。」そして、今度はコスチュームを考えましょうと、アリッサに余計なことを言ってくれました、このお姫様は。


部屋の隅にいるアリッサの感動具合は見なかったことにして。


目の前でキラキラ目を輝かせている彼女のよくわからない感情も、まぁとりあえず流すこととして。


「…ええと、それで『黒の術』をかけられた間に何か変わったことはありませんでしたか?」


「いいえ、特に何も。」


何だろう。何かがひっかかっている。

でもわからない。後で整理しないと。


「それにしてもリオお姉様、すごい数の『守り』ですのね。お兄様が?」セラフィナが私の色の合わないペンダントなどを見て言う。


「ええ。自分が行けないからといただきました。」


「お兄様だけずるい。私も何か差し上げたいわ。私の命を救ってくださった恩人なのに。…あ、失礼いたしました。私、未だにリオお姉様にお礼申し上げていませんわ。」


「…いいですよお礼なんて。」私があわあわと手を振り、テーブルのお茶を口に含む。


「いいえ、駄目です。お姉様…」セラフィナさんが立ち上がり、私の前まで出てくる。


「本当に助けていただいて、ありがとうございました。」



ちゅ。



ちゅ?



ほ、ほほに柔らかい感触が。これは標準の挨拶なのかどうか。マナー関係を深く勉強していなかったのは問題だわ。


「…ふふ、お兄様より先に触れてしまいましたわ。」



「せ、セラ…」



「ああ、リオお姉さま、今夜はもちろんお泊りになりますよね?」見下ろされて言うのは、どうなんだ。


「いえ、今日はこの後すぐに王宮へ行って、他の被害者の方を調べ…」


いやん、春の女神が泣きそうな顔しているんですけど!!


「泊まっていただけますよね!?」ずい、と今度は唇が触れそうな位置に顔を寄せられた。



私が折れたのは別に怖かったからじゃないもん。


でも、ヨアキムに相談に乗ってもらうのもいいかもしれないなと思い、お言葉に甘えることにした。


さっそく図書室へ向かう私には、セラフィナが呟いた言葉は聞こえていなかった。


「リオお姉様、お兄様のこと、頼みます。」

更新遅くてすみませぬ…。


※表示がおかしかったので直しました。

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