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リセットできない。

リオです。

できることならこのままベットに逆戻りしたかったけど、王様に起こってしまったことの報告を求められているため、現実逃避もままなりません。


腹痛で会社休むのは簡単なんだけどね。



あれから。

私はまる1日眠り続け、その間に治療されたウリセスは血を流したせいか、未だ安静が必要で。

傷口はまだ塞がっていないらしい。


初代はあれから応答しない。きっと、かなりな裏技だったに違いない。今襲われたらどうするんだ。


なんてことを考えていたら、会議室へ着きました。


扉が開くと、中には円卓メンバー勢揃いです。嫌な感じ。


まだ本調子でないのに、まるで犯人扱いですよ。まぁ、仕方ないよね、『黒の術』を私も使える以上は、私がやってないという証明は不可能。


それこそ、犯人を捕まえない限りは。


「私からは以上です。この報告結果は頂いてよろしいですか?」さっさと退出したいので手元にある被害報告を指さす。

読む暇もなく、報告を求められたからね。せっかちは嫌われるぞ。


「リオちゃん、犯人の目星はついたのかい?あと5日だね?」


終わりたかったのに!!


オーティス候を思わず睨んでしまうが、もちろんそんなことに怯むようなヒゲではない。ばっちり、ウインク返されました。(げっそり。)


「未だです。」五大候がマイナス感情顕にしてます。うん。わかったから、わかったから、とにかく退出させて欲しい。


「『黒の術師』殿が来てから物騒な事だな。」うるさい、メタボ。


「それよりもこうも易々と禁殿へ入られることが問題よ。刑部は何をしていたの。」メガネ美人が冷笑をします。


「【魔法使い】も暴走したそうでは?そちらの報告はどうなっている?」細マッチョはやっぱり【魔法使い】が嫌いらしい。


「ほ。」好々爺は何考えてるかわかりません。


「エリスさん立ち会いのもと、本日より被害者と妃候補に会わせていただきます。五代候の皆様にはご協力と、ご理解を感謝いたします。」


とりあえず、文句言うな。


にっこり笑ってノイズを消去させる。


「私からは以上です。退出してもよろしいでしょうか?」


私のすっごく不機嫌そうな笑顔でようやく王も察してくれたらしく、不毛すぎる会話に終止符が打たれた。




寝ている暇はない。何で異世界で刑事の真似事しなくちゃいけないんでしょう?


被害報告書を歩きながら目を通す。


発生現場

1.調理場

2.下院渡り廊下

3.上殿騎士談話室

4.洗濯場

5.南館渡り廊下


被害者

1.調理人補佐 男

2.下院青室秘書 女

3.上殿駐在騎士 男

4.下官 女

5.御用商人 男


被害者による殺傷


1.調理人見習い1名死亡、1名怪我。

2.なし。

3.同僚1名死亡。上殿官使3名死亡、上官女史1名死亡。

4.下官5名怪我。

5.同僚1名死亡、下官女史2名死亡。


色々最悪。


死亡は全部で9名。特に私が居合わせた騎士の所が悲惨だ。どこから手をつけようか。


歩いていると私が術を使った中庭へさしかかる。ここは今立ち入り禁止になっており、ロープがひかれ、刑部の人間が監視している。


「子供?」

ここは禁殿に近い場所で普通は子供は入れないし、それこそ五大候レベルでないと簡単には許可されず入ることができない。

そこに、子供。一応、隣に女性がいるので、親子だろうか?


私が近づいていくと、刑部の一人がぎょっとしてこちらへかけてくる。


「『黒の術師』様ですね、申し訳ございませんが—」こんな所を歩く女は私くらいしかいないのだろう、黒髪ではないが彼らには私が誰かわかるようだ。


「おとうさんをかえして!かえしてよぉ!」



甲高い、子供の声。


嫌なものを聞いた。


できればこの場から立ち去りたい。今にでも逃げ出したいくらい。でも。


聞かなければ。


私は子供の側にいる女性に声をかけた。

女は、調理人補佐の妻だった。今日休みを取り、城を下がり家族で会えるはずだったという。


「イオウも死んじゃった。」子供が呟くのを聞くと調理場に出入りしていたオウムに似た鳥で、随分調理人補佐に懐いていたという。


あれだ。ウリセスをぶっさした槍だ。あの鳥か。


そして私は刑部の男に余計なことを言わぬよう口止めをし—もちろん、私のような者がここにいることについて、だ—その場を後にする。


ほっとしてしまった。


私が『黒の術師』であることは守秘されている。だからこそ、あの子供は現場に向かって亡き父を想った。


人殺し。


私が原因でないにせよ、彼に止めをさしたのはまぎれも無く私なのだ。

あの子供に罵られでもすれば、もう私は動けなくなってしまう。


自分の中の狡さに微苦笑すると次の目的へ歩いた。




リセットできない。


「これが、やり方。」


殺意なんて、滅多なことで沸くはずがないと思っていた。


でも―――――


扉の前まで来ると、ノックをするのが躊躇われる。


「リオ?」いやいや、私扉開けてないよ?


部屋の中から聞こえた人外の台詞に思わず退けなくなり、部屋へ入る。


「ウリセス。」ベットに横たわったままの彼の姿は痛々しい。


「リオ、酷い顔色をしている、大丈夫か。」怪我人からそんなことを言われる。


「私は、大丈夫。ウリセス、かばってくれてありがとう。ごめんなさい。」ようやく吐き出すことができた。あの時の自分ときたら、酷かった。助けを呼ぶことしかできなかった。それすら満足にいかず。


「リオ、王へ報告があったと聞いた。」どこで聞いてくるんです。風の精霊?


「はい。進展は無いと。これが報告書です。…9名、失われました。」私が、もっと『黒の術』を使えていて、事前に王宮をチェックしていれば、未然に防げたかもしれない。ifを考えるのは馬鹿らしいけれど、考えずにはいられない。


「リオが無事で良かった。」相変わらず美形ですね。何でそんなに嬉しそうなんですか。


「ウリセス、これから妹さんにお会いしてきます。戻るのは明日になると思います。」他の妃候補の調整が私の体調に合わせたので、ずれてしまい、セラフィナさんから会うことになった。


「リオ。一人では…アリッサを連れていくように。そこの棚を開いてくれないか。」ウリセスに言われて、ベッドサイドの棚の引き出しを開けると、中に小箱があった。それを開けると中にブローチとペンダント、それからアンクレットがあった。


「それぞれに精霊の加護をつけてある。」ウリセスが動けない分、こんなものを用意してくれたらしい。ブローチは赤色、ペンダントは青色、アンクレットは緑色だ。色のバランスが悪いが、三つも属性をつけてくれたのかと思うと、ありがたく身につけさせてもらった。


「くれぐれも気をつけて。それからリオ、これも。」そう言ってウリセスは自分の指にはめていた指輪を取り、私に手渡す。色は黒いから闇属性だろうか。オニキスのようなそれを見て首をかしげていると、


「お守りのようなものだ。それは持っているだけでいい。」そうですか。とりあえず、何でも強化できるならいただいておこう、と指輪をペンダントと一緒に鎖に通した。


じゃあ行くね、と扉へ向かう途中で、


「リオ、一緒に行けなくてすまない。」


背後から追いかけて来る声を振り切るのが大変だった。


「大丈夫だよ。大丈夫。心配してくれてありがとう。」ウリセスを見ないでそう応え部屋を出た。



しばらく歩いてから、壁にもたれて座り込んだ。


ちゃんと、明るい声が出せていただろうか。一人で、不安なんですなんて顔してなかっただろうか。


世界で、私意外に頼れない中で、ウリセスに傾倒していくことが、良いことだとは思えない。けれど、どうしたらいいんだろう。


もう、切り離せないくらいには、信じてしまっているのに。


もし、彼が離れるようなことがあれば、私は本当に一人になってしまう。妙ななれ合いなんか要らないと思っていた。だって、こちらには誰一人私を知る人間は居ないのだから。


それが、怖くて近づけない。


「…あと、5日。」大きく深呼吸をして、立ち上がる。


そして私はセラフィナさんに会いに王宮を出た。





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