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好みじゃないんで。

人々が【魔法使い】を見ることは稀だという。

生活の中でもほとんど話しには上がらない。


【魔法使い】に成る者はいつの間にかその姿を消すという。


だから、【魔法使い】は畏怖の対象だが一般人にはなんら関係ない存在。

雲の上の王様と同じような存在。


戦でもなければ、人々にはそれだけの存在なのである。



彼らは強大な力を持つが故に、平和が長く続けば続くほど、狂気に染められていく。


力を持ちながらそれを振るわずにいれる人間はとても少ない。


故に、【魔法使い】は時折暴走する。




「戦の匂いがする。血の匂いだ。なぁ、エリスちゃん。」にたり、と男は笑う。

「シグマ…!」エリスは結界の中から城壁の上空へ浮かぶ男を見る。


「なぁ、いるんだろう?『黒の術師』あの人が言ってた。初代が復活したってさぁ…!初代ってめちゃくちゃ強いんだろう!?ああ、早く戦いたいなぁ!」


「シグマ!戻りなさい。我らが戦うことは許されていない。」


国家の戦で【魔法使い】が参戦するのは認められているが、個々に戦うことは許されていない。これは全世界の共通意識。ただし、【魔法使い】が参戦することで著しく戦力の差がつく場合、これに対応する者―別の【魔法使い】などを投入することは可能。【魔法使い】は基本的に中立の立場にある。国家に傾倒した場合は、戦においての制限がかかる。


「ハン…『黒の術師』がいるんなら別だ。オレらはいかなる条件下であっても『黒の術師』を攻撃することはできる…!」


ドン、ドン、ドン、ドン


太鼓よりも大きな膜を振るわせる音がする。


何かを殴るような音。結界の膜が殴られているのか。つまり、攻撃されているのか。




リオです。

今、ちょっと不味い所に来ちゃいました。

エリスさんと変な男が向き合ってる横の城壁に登る階段の横の樽の陰に座っています。どうしよう。


不味いっていうのは、『黒の総本』が震えてるんです。携帯のバイブみたいに。ということはですよ、ここ、すっごく危険ってことでしょ。


十中八九、私が―初代が狙いのようです。どうしよう。今出て行くと確実に目撃されます。さっきまでは人だかりができていたのだけど、男が攻撃した音がしたと思ったら、皆尻尾巻いて逃げるように消えた。


そして、逃げ遅れた私、っていう。



幸い、結界がある所為か男は宙に浮いたまま入ってきてません。思うのですけど、普通に街に入ってきたら結界って抜けれちゃうんじゃ?なんて言わないお約束ですか。そうですか。



ドキドキしながら『黒の総本』を開く。鍵は―


「help me。」私が決めたんじゃありません。初代です。文句は初代に言ってください。


『今のお前じゃ戦うのは無理だ。』いきなり書かれた言葉。


そうでしょうとも。


『それから、アレは駄犬だからな、囮に過ぎん。』初代、男を駄犬呼ばわりですか。しかも囮?


『吼えるしか能の無い奴は駄犬で十分。あいつも何考えてんだ?犬は嫌いだったろうに。』初代の呟きは続く。


『リオ、とりあえずお前あの女のところまで行って、転送してもらえ。王宮に戻れ。』


えええ!?この中へ行けと!?


『仕方ないだろう、今のお前じゃ何もできんし。転移は王宮の結界を壊すことになるから使えない。』


ああもう。


「エリスさん!」走りました。


「リオ!」


「王宮へ送ってください。」エリスさんは私の抱えた『黒の総本』を見ると頷き、私を抱き寄せた。





「みぃつけた。」振り返るんじゃなかったです。


「あんたが、『黒の術師』」男が笑った。見ちゃいましたよ。思わず。赤い目に深緑の髪。すごい色合い。そして例にもれず美形です。悪役なのに。頭悪そうなのに。


男は私を―正確には、私の持つ『黒の総本』を見ていた。


何故か、その瞳の奥に別の存在を感じて、ぞくり、と粟立つ。


「かーぁわいぃ。奥まで突っ込んでかき回して引き裂いてやりたいなぁ…!あは、怖いんだ?『黒の術師』のくせに【魔法使い】が怖い?…それじゃぁだめだ。全然楽しくない。戦って戦って戦って戦って、俺にズタズタにされてよ。ピンクの綺麗な中身魅せて、泣き叫んでも許してやらないからさぁ…さぁ…!」


へ、変態フラグ…!!


ノーサンキューです。速やかにお引取りください。何を突っ込むの、何をかき回すの、そりゃいい歳ですからそんなことわざわざ聞かなくてもわかりますけど、


気持ち悪いんだよ、ボケェ!!


全然好みじゃないから、さっさと消えてください。本気で。


「シグマ、それほど戦いたいのならシュベールを呼ぶわ。」エリスさんは言うと足で大地を何度か叩く。


「ああ?」


「『黒の術師』は渡さないわ。」エリスさんはそう言うと強く地に足を打ちつける。


ダン!





一瞬光ったかと思うと、私の視界は変わっていた。



「何があった?」目の前には、『宮廷術師』シュベール。


私は、光る陣の上に居る。これが、魔法陣?そして、一人で。


「シグマという男が、エリスさんが…」シュベールの顔はとても怖かった。


何かすっごい怒ってる感じがするんですが…!


「ヒューザード!」シュベールが言うと、ウリセスが現れた。


「エリスと代わる。リオを任せたぞ。」シュベールはそう言うと魔法陣の中に入り、一瞬後に消える。


「リオ!」ウリセスに近寄る。ここは何の部屋だろう。ひんやりとした石で囲まれている、小さな部屋。机の上に『黒の総本』を広げる。


『何人か、入り込んだ。』文字が綴る。


初代は囮と言った。なら、王宮へ入ることが本来の目的!?


「探す。杉崎璃桜が命ず。『検索』ターゲット捕捉。」黒の糸が私から溢れ出す。


王宮の構造なんて知らない。だけど、糸は確実に見つけるだろう。


『移動しろ。間に合わん。』


無理ですってば、この術を使いながら走れって!?


そこに重なる手。


「私が運ぼう。リオ、どこへ行けばいい?」本を触ったウリセスがそう言うと私は、


抱き上げられた。



ぐぎゃー!


『集中しろ!』


わ、わかってわす。(舌かんだ)本を睨みながら黒の糸を追う。


黒の糸が目標を捕らえた!


『黒の総本』に王宮の建築図面が表示される。初代め、私の能力ギリギリ使う気だな!


「杉崎璃桜が命ず。『表示』!」がくん、と身体の力が抜けたのがわかる。本を持っている手が冷たくなっていく。MPがあるとすればもうかなり減ってる。術を使えてもあと1回だけだ。


『検索』で探した侵入者を地図上に『表示』させる。これでどこにいるかわかった。黒い点は5。5人も侵入している!


「リオ。行くぞ。」ウリセスは何も言わずに理解してくれたよう。


足元から風と共に水流が立ち上る。






「エル・ブリット!」視界が開けた瞬間、ウリセスの声が走る。


めーのーまーえーに、いたぁ~っ


居ましたよ。その格好は騎士ですか、騎士様ですか、もー何騎士様が『黒の術』にひっかかってるんですか、勘弁してください。


しかも何人か切り倒したのか、廊下は血の海です、うわぁ。


そちらを見ないようにして、もう一度ウリセスに侵入者と思わしき敵を凍らせてもらう。(もちろん全身)


一息ついて本を開く。


『どうするリオ、お前の力じゃ開放に1回しか使えんぞ。』初代が言う。わかってますよ、で、敵は5人。どうしましょうかねホントにもうっ。


ヘタに殺すと『黒の術』が移動して他の人に入り込むから殺せません。ってこと他の人に言わないとさらに被害が迫る。


「私が伝えよう。」ウリセスが風の精霊を使って各部署の連絡網に連絡をしてくれる。とりあえず、被害出てないといいけどな…。


「目的は?」


『まぁ、俺か?』にしては変な襲撃ですよね。初代も腑に落ちないみたいだし。


「この中で中間のポイントどこでしょう?」地図を見る。


「中二階の中庭だ。」ウリセスが指を指す。


「じゃあ、そこにその敵さん全部来ていただきましょう。」私は凍らせたものを一緒に運んでもらい、中庭へ移動した。





「待つのって辛いな。」王宮内伝達で敵を殺さず中庭に追い込んでくれるように頼んでみた。幸い刑部が動いていたので、それほど難しくないらしい。ただ、彼らからの情報によると。


つい、昨日まで働いていた同僚が豹変してしまったそうだ。


これは、心的にとても痛い。


中庭は日の光が入るような計算で建物内にあった。まるでカテドラルみたいだ。ただ、今は光が少ないから、まるで廃墟みたいで怖いけど。


緑と花が彩る場所で何をしているんだろう私は。とりあえず、庭師さんにごめんなさい。


中庭の中心に座り込んで―もう立てない―後ろをウリセスに支えてもらう。黒の本を地面に置き、両手を置く。


『リオ、来たぞ!』一人目が入ってきた。あ、可愛い、女性だ。でも目は死んでるのね~。


「ヴァン・フレイア!!」入り口から入ってきたエリスさんが女性を燃やす。死なない程度の火傷で女性が転がる。


二人目、なんか見たことのある…エプロンが白い。コックさんですかね。歳若いのに。でも目は虚ろ。


後ろから来た三人の軍服着てる人たちに押さえつけられて暴れてます。


「気が滅入るな。」三人目、四人目と、まるで普通の宮廷内で働く人たちが現れ、それぞれが微妙に怖いモンスターになってると思うと。


「リオ!これでいいの!?」エリスさんが声をかける。


「ありがとうございます。そのままで!」私は両手を『黒の総本』に押し当てる。手に黒い糸が絡みつき、本から次第に広がり、大きな網になっていく。

それは地面を描き、複雑に絡み合い文様となっていく。


5人がいる範囲すべての床を黒が染めて行く。


「杉崎璃桜が命ず。『開放』!!」ぐらり、と身体が傾いたところをウリセスに支えられた。


まだ、倒れるわけにはいかない。


黒い糸が一気に床から噴出し、5人の糸を断ち切って行く。


ぷつり。5本の糸が切れたところで、ようやく一息吐き出す。



よし、これで…



『まだだ、リオ!』本に信じられない言葉が書かれた。顔を上げる。


コックさんのエプロンから何かが落ちた。


鳥?



鳥の目がぎょろり、とこちらを向いた。


鳥は勢いよくこちらへ飛び立った。黒い禍々しいまでの翼と共に。


「杉崎璃…」間に合わない。そして今の私にはあれを止めるだけの力が無い。


鳥が途中から黒い槍に代わって私を目指す。


「リオ!」




ドン、という音と共に鈍い振動が伝わる。


『リオ、これを使え!』脳に直接叩き込まれる感触。


「…桜が命ず、『開放』!!」もう限界超えていたけれど、倒れられなかった。目の前の光景が信じられなくて。


「ウリセス!!ウリセス!!」どうしたらいいのかわからなかった。


何で私を庇ったりするんだ。何で服が赤く染みてきてるの?何で、何で、何で。


槍は細く、致命傷とは思えなかった。けれど確実に私を庇ったウリセスの肩を深く貫いていた。


貫いた槍の先はもう少しで私の胸に吸い込まれるところだった。ウリセスの両肩が私の肩を押す。


「…良かったリオ…」何で笑えるんだ。死ぬほど痛いでしょう。何で笑っちゃうのよ。


ぷつり、と糸が切れると槍は消えてそれと同時に血が噴出してきた。


「っだ、誰かっ…早く……早く助けてぇ…!!」目の前が真っ暗になりながら必死で両手を当てたのに、血が溢れてくる。


人間が出血多量で死ぬのってどのくらいだっけ。


止まらない、止まらないよ。どうしよう!?力の入らない手で一生懸命押すけれど、手が赤に染まって行くだけ。


だんだん赤が黒に見えてくる。あ、視界が白に変わった。


「リオ!!」エリスさんの声を聞いたのを最後に、私も気を失った。

※バトルは長引くのが難点です。18禁にすればよかった。かえって台詞がめんどくさ……いえ失礼。

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