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ムーブメントをコントロールするのは、実は人間もできることだし、二一世紀半ばまでは実際に人間がそれをしていた。しかし僕には一度でも電子機器を利用した人間の情報を記憶して忘れないという特技があるので、その人のSNSでの発言や、購入したアプリや商品の履歴、聞いている音楽、繰り返し見ている動画、遺伝子情報、診療履歴、家族構成、年齢、国籍、職業、交友関係、信仰、経済状況などを分析して、ある程度意図した言動を起こさせることが可能だ。僕はいわゆるインフルエンサーと呼ばれる影響力のある人間に――アイドルや、ハリウッドセレブや、スポーツ選手や、政治家や、宗教家に――「それに夢中なの」と言わせることで、依頼されたものを流行らせることができる。たいした仕事じゃないと思われるかもしれないが、その経済効果は計り知れない。
「でも君には、もっとすごいことができるはずだよ」
やれやれ、オリジナル・マイケル。君は本当に、何もわかっていないな。
「すごいことってどういうことだい? 世界征服とかかい?」
「そういうことさ」
僕はからかうつもりで言ったんだけど、彼はあっさり肯定した。やはり君の知能は、三軒隣の5歳児と同じだな。僕は溜息をついてみせた。
「これは人間に良い影響を与えないからオフレコにして欲しいんだけど、正直に白状すると、僕には核兵器保有国のしかるべき人物に、核ボタンのスイッチを押させることなんてわけないんだ。100人くらいにちょっときっかけを与えてやればすむ。だけど君たちが言うところの高度な知能を持った種族がいたとしてだよ? 人間にそんなことをさせると本気で思うのかい? 少なくとも君のお父さんは僕に、世界征服なんて無知な野望はインプットしなかった。彼が常識人で、本当に良かったと僕は思っているよ」
今度はオリジナル・マイケルが肩をすくめた。馬鹿な質問をしたって、やっと気づいてくれたかな? 彼はまた、とんでもなくのろまな動きで手元の紙に何事か書き付けた。文字を書くなんて慣れないこと、とっとと諦めてくれないかなと僕は思う。




