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「それにしても、紙とペンなんて果てしなく不合理だね。今時モニターとキーボードだってあんまり使われないのに。君はよく『二〇世紀人間』とか揶揄されるけど、十九世紀以前の文明の利器を使うんだな」
「いいんだ。君が最先端な反動で、僕は古いものが好きなんだ。IT機器なんか使ったら、どこの誰に情報流出するかわからないからね」
そのためか知らないが、デスク上に並んだディスプレイも全て切ってある。彼はうずたかく積まれた紙製の本の間から、赤と白の機械を取り出して見せびらかした。
「見てくれよ、これ。一〇〇年前の日本製のゲーム機だ。ファミリーコンピュータって言うんだぜ。サムライ・イングリッシュだ。いかしてるだろ? ここに『カセット』を差し込んで、ケーブルでディスプレイにつないで、ここに繋がっている『コントローラー』で操作する。ワクワクするね」
「そんなものでワクワクするのは、僕の知る限り、このあたりでは三軒隣の五歳児くらいだぜ」
彼の心が少年のままなのは、僕も認める。オリジナル・マイケルは肩をすくめて、僕の皮肉を受け流した。
「君のやりたいことはわかったよ。100万年かかっても構わないけど、早く始めてくれないかな。というか、なんで突然僕についての手記なんか書こうと思ったんだ?」
「生きているうちに、書き残しておこうと思ってね」
愁いを帯びた顔を作って、オリジナル・マイケルはふっと笑った。おいおい、君はまだ五二だろ? そんなに急ぐ必要はない。僕は彼の遺伝子情報も医療機関での受診内容も知っているので、彼が何歳くらいまで生きるのか大体の予測はできるのだが、それは言わない決まりになっていた。まあ、一億年くらいかけて紙とペンで仕上げるので、早いほうが良いのに越したことはないか。




