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「じゃあ、始めようか。これから僕が色々質問するから、正直に答えて欲しい」
オリジナル・マイケルは、前時代的なボイスレコーダーを作動させ、僕に向き直った。ボイスレコーダーで録音して、ボールペンで紙に書き起こすなんて、1000万年はかかる無駄な作業だと僕は思うんだけど。
ここで、彼を紹介しておこう。
彼は僕の名前の由来になった人間で、アメリカ国籍の白人男性、年齢は五十二歳、三児の父。僕のデザイナーの息子で、僕は彼が二歳の時に作られた。僕のデザイナーである天才科学者ジェイク・ロウファンは、愛息子の名前を僕につけたってわけ。
そのころAIのチップを人間風の外側《、、》に内蔵するのが流行っていたので、僕も人間の外見をしている。ただし、さすがに二歳児の外見ってわけにもいかなかったのか、僕の外見年齢は一七歳といったところだ。特に二歳児のマイケルに似せて作ったわけでもないので、一七歳当時の彼と僕はあまり似ていないんだけど。
ちなみに、現在の彼と僕とは似ても似つかない。彼は髭面の中年太りの優しそうなおじさんだけど、僕は神経質そうな細身のティーンエイジャーだ。
彼と僕は同じ名前なので、彼は世間や家族には「オリジナル・マイケル」とか、「リアル・マイケル」とか呼ばれている。大本の方に注釈がつくっていうのも、おかしな話だと僕は思うんだけれどね。
僕の方に注釈をつけるとすると、AIマイケルということになる。でもそう呼ばれることは、ほとんどない。「マイケル」といえば僕、僕といえば「マイケル」というのが、今や世界常識になってしまった。「マイケル」なんて名前は、前世紀にはキングオブポップの代名詞だったらしいんだけど。良くある名前を、自分の代表作につけるものじゃないね。
だから僕とオリジナル・マイケルの共通点は、肌の色と髪の色と瞳の色くらい。あと、僕のデザイナーのジェイク・ロウファンを僕の父親だと定義すれば、父親も同じことになる。僕は僕をデザインしたジェイク・ロウファンの価値観を、色濃く受け継いでいる。オリジナル・マイケルだって、遺伝と環境的には、きっとそうなんだろう。ジェイクの溺愛する初孫であり彼の初めての子供であるジェニファーを、何を差し置いても優先するところなんかもそっくりさ。




