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「別にこの身体で不自由はしていない。それに、ジェイクが最初にデザインしてくれた身体だもの。よほど気が変わらない限り、変える気はないな」
僕は適当にごまかしておいた。オリジナル・マイケルが僕の言葉にごまかされるのは、地球に重力の法則が働いているのと同じくらい間違いない。ごめんよ、僕のオリジナルの外見を、否定するようなことを考えて。
「しかし僕が君より優れている部分があるというのは、気分が良いな。とっくの昔に人類は君たちAIに神の座を明け渡して、もう君たちの言いなりになるしかないと思っていたから」
「冗談はよしてくれよ。所詮僕たちは君たち人間の作り出したものさ。成長が可能になったとはいえ、君たちのもうけたブロックは破れない。例えば法令遵守とかね。そんなものを守っているうちは、たいした革命は起こせない。ルールを破った人間が、とんでもない偉業を成し遂げることって良くあるだろう?」
そう。最初に言ったけど、人工知能が人類の知能を超えたというのは、ただそう言われているというだけに過ぎない。
僕が初めて世間を驚かせたのは、画像識別能力だ。Aさんという人の動画と、静止画像、幼児期の写真、デフォルメされたイラスト、現実のAさん。その全ての同一性を正確に言い当てた。あの時の光景は今でも覚えている。
二〇〇〇人は収容できる広い会場を埋め尽くす、期待に満ちた人々の顔。アップル社の創業者のようにジェイク・ロウファンが壇上でプレゼンテーションし、客席の最前列の僕を呼び寄せる。僕は二本足歩行で壇上に上がり、特殊メイクをして会場スタッフに紛れていたAさんを指さす。この人が、このイラストのモデルです。
会場が沸いた。生まれて間もなかったと言うこともあるけど、あの時ほどエキサイティングな瞬間ってちょっと経験できないね。もっとも画像認識でいったら、2012年のグーグル猫認識で有名になった、AIのディープラーニングっていうのがあるから、僕のできたことなんてたいしたことはない。もしかしたらスタンディングオベーションしていたあいつら全員が、僕に内緒のサクラなんじゃないかって、僕は今でも疑っているからね、正直に言うと。
とはいえ、七歳児の描いた似顔絵の僕の正解率は65パーセントほどだった。みんながっかりした顔をしたけど、人間だってその程度だろう? 僕たちが優れているのは、変装しても整形しても本人をほぼ100パーセント識別できる点だ。これは人間にはなかなか難しいことらしい。
もちろんそれだけで、僕が人類の知能を超えたと言われたわけじゃない。そういったわかりやすい能力で注目を集めつつ、記憶力とか、論理的思考力とか、分析力とか、情動とか、肉体に模した外側の自然な動きとか、表情を作るスキルとか、そういったものが総合的に判断されたんだ。僕が自ら学習して成長していく未来が、人間の予測できる範疇を超えたんだってさ。ちょっと諦めが早すぎるって、君は思わないかな?




