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第2話 白い入口

黒い渦が消えた後も、蒼真はしばらくその場を動かなかった。


クールタイム。次回解放まで約二十四時間。


つまり、あのダンジョンは消えたわけではない。


一度踏破したことで休止状態に入り、時間が経てば再び現れる。


「明日の今頃か」


同じ場所に出るのか。


中身は同じなのか。


スライムも再び現れるのか。


踏破報酬はまた出るのか。


疑問はいくつもあった。


だが、今は確かめようがない。


蒼真は焦げたスーツを隠すように腕を組み、足早に商店街を離れた。


帰宅すると、玄関の鍵を閉める。靴を脱ぎ、部屋へ入る。


途端に、全身から力が抜けた。


「疲れた……」


ベッドへ倒れ込みたい。


だが、焦げたスーツのまま寝るわけにもいかない。


上着を脱ぎ、シャツを脱ぐ。


鏡の前で腕を確認する。


赤くなっている。少しヒリヒリするが、思ったほどひどくはない。


ズボンの裾も焦げていた。


明らかに、普通の残業帰りではない。


「どう説明すんだ、これ」


誰かに聞かれた時の言い訳を考えた。


考えて、すぐにやめる。誰に説明する予定もない。


蒼真は机の上に、スキル玉を置いた。


酸耐性・小のスキル玉。


ほんの一時間ほど前まで、この世界に存在するとすら思っていなかったものだ。


「ステータス」


念じる。


半透明の画面が浮かぶ。


名前。


レベル。


能力値。


称号。


スキル。


蒼真は表示された内容を順番に見ていく。


称号には、【人類初到達者】【人類初討伐者】【人類初成長者】【人類初会心撃者】【人類初踏破者】


ちょうど五つ。


スキルには【先駆者の証】【報酬増加】【成長加速】【幸運招来】【真鑑定】


ユニークスキルが五つ並んでいる。


「……五つ」


蒼真は思わず数え直した。


一つでも十分に特別そうなものが五つ。


人類で最初だったからこそ得られたもの。


おそらく、後から同じことをしても手に入らない。


その事実を、まだ実感できなかった。


蒼真は机の上のスキル玉を手に取る。


《真鑑定》


【スキル玉】


【内容 酸耐性・小】


使い方が分からない。


持っていればいいのか。


【使用時 酸耐性・小を習得できる】


「使用時……使うって、どうやるんだ」


握る。


念じる。


砕くのか。


飲むのか。


少し迷った後、蒼真はスキル玉を両手で包んだ。


使う。


そう強く思う。


玉が淡く光った。


次の瞬間、光の粒となって手の中から消える。


【スキル 酸耐性・小を習得しました】


「おお」


感覚として何かが大きく変わったわけではない。


体が強くなった感じもしない。


試しに酸を浴びるわけにもいかない。


それでも、ステータスには確かに【酸耐性・小】が追加されていた。


「本当に覚えるんだな」


改めて、今日の出来事が現実なのだと感じる。


レベル。


スキル。


称号。


ダンジョン。


これまでの人生にはなかったものばかりだ。


蒼真はベッドへ腰を下ろした。


明日は土曜日。仕事は休み。


今日見つけたダンジョンは、次に開くまで約二十四時間。


だが、あれが一つだけとは限らない。


テーマが【チュートリアル】。


チュートリアルというくらいだ。


あれで終わりとは思えない。


駅の近くにあった。


なら、他の場所にあるかもしれない。探せる。明日一日使って、街を歩けばいい。


そう考えた時だった。


部屋の奥で、小さな音がした。


何かが擦れるような音。


蒼真は顔を上げる。


クローゼットの扉が、わずかに開いていた。


閉めたはずだった。少なくとも、家を出る前は閉まっていた。


蒼真はゆっくり立ち上がる。


疲労よりも警戒心が勝つ。


手近な武器になるものを探す。


だが、部屋の中にそんなものはない。


仕方なく、机の上にあった厚い本を片手に持った。


「泥棒なら、もうちょい音立てないようにするよな」


自分に言い聞かせながら、クローゼットへ近づく。


扉に手をかける。


ゆっくり開く。


服の奥。


そこに、白い入口があった。


蒼真は動きを止めた。


商店街で見た黒い渦とは、まるで違う。


人ひとりが通れるほどの白い入口。


入口の周囲は、幅六センチから七センチほどの石の板で囲われていた。


灰白色の石板。


表面には、植物とも文字とも取れる精巧な飾り彫りが施されている。


古い遺跡の一部を切り取って、そのままクローゼットの奥へ埋め込んだようにも見えた。


黒い渦のような不気味さはない。


むしろ静かだった。自分を待っているような、不思議な馴染み方をしている。


「……何で部屋にあるんだよ」


蒼真は《真鑑定》を使う。


情報が浮かぶ。


【プライベートダンジョン】


【所有者 天城蒼真】


【人類初称号五つ獲得による特別報酬】


【許可なき者の侵入不可】


【第一階層 未設定】


「特別報酬……」


称号を確認する。


五つ。


【人類初到達者】


【人類初討伐者】


【人類初成長者】


【人類初会心撃者】


【人類初踏破者】


その五つを獲得したことで、この場所が与えられた。


自分専用のダンジョン。


他人は許可なく入れない。


第一階層は未設定。


「設定って何だ」


疑問は増える一方だった。


だが、【真鑑定】から得られる情報はそこまでだった。


中へ入れば、何か分かるかもしれない。


蒼真は白い入口を見つめた。


今日はもう十分だ。


スライムに酸を飛ばされ、石で何度も殴り、最後は五匹のスライムを相手にした。


体も疲れている。明日もある。


「今入るのは、さすがに馬鹿だな」


そう口にする。


白い入口は何も答えない。


蒼真はしばらく立っていた。


そして、入口へ手を伸ばしかける。


「……いや」


止めた。


今日はやめる。


今度こそ、本当に休む。


蒼真はクローゼットの扉を閉めた。


白い入口は見えなくなる。


だが、その向こうにあることは分かっている。


自分だけのダンジョン。人類初称号五つの特別報酬。


胸の奥が、また熱くなってくる。


ベッドへ倒れ込む。天井を見上げる。


眠れる気はしなかった。


頭の中では、明日の予定が勝手に組み上がっていく。


ホームセンターへ行く。


まともな装備を買う。


街を歩く。


ダンジョンを探す。


見つけたら、入る。


会社のことも考えた。


月曜日になれば、また出勤する。


今までと同じように働く。


だが、本当にそれでいいのか。


今日一日で、蒼真の世界は完全に変わった。


まだ仕事を辞めると決めたわけではない。


生活できるかも分からない。


あの透明な石に価値があるのかも分からない。


ダンジョンが他にもあるのかも分からない。


何も分かっていない。


それでも。


このまま何事もなかったように、会社員へ戻れる気はしなかった。


「明日、ダンジョン探すか」


そう呟いた声は、自分で思ったよりも楽しそうだった。


スーマ「作品のAI利用って色々難しいみたいですよ」

AI先生「オ前一人ジャ書ケナイモンナ」

スーマ「もっとAIの知識入れないとですね」

AI先生「オ前二足リナイノハ日本語力ダ」

スーマ「俺が三行使ってした表現、一行にしてましたね」

AI先生「読者ガ可哀想ダロ」

スーマ「あざぁーっす!!」

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