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第1話 始まりの小迷宮

ハジメテカイタ。キンチョウシテル。

金曜の夜は、いつも少しだけ街が浮ついている。


仕事終わりの会社員も、飲み会帰りの大学生も、明日が休みだというだけで足取りが軽い。駅前の商店街には閉店した店のシャッターが並んでいるのに、空気だけはまだ眠りきっていなかった。


その中を、天城蒼真(あまぎそうま)は一人で歩いていた。


時刻は、もうすぐ午前零時。


残業帰りだった。


別に仕事が好きなわけではない。


好きか嫌いかで言えば、かなりどうでもいい部類に入る。ただ、放っておけば翌週の自分が困る。それだけの理由で残った結果、こんな時間になっていた。


「腹減ったな」


呟いた声が、閉じたシャッターに反射して小さく返ってくる。


コンビニで何か買って帰るか。


いや、家に冷凍パスタがあった気がする。


そんなことを考えながら歩いていた蒼真の足が、ふと止まった。


商店街の一角。


古い雑貨屋のシャッター。


そのすぐ横に、黒いものがあった。


最初は影かと思った。


だが違う。シャッター脇の壁に、人ひとりが通れるほどの黒い渦が浮かんでいる。


光を吸い込むように揺らめき、そこだけ夜よりもさらに暗く見えた。


蒼真はスマートフォンを取り出す。


午前零時ちょうど。


「……何これ」


周囲を見回す。


誰もいない。さっきまで聞こえていた酔っ払いの声も、車の走行音も、妙に遠い。


普通なら近づかない。


写真を撮るか、警察へ連絡するか、少なくとも誰かを呼ぶ。


だが、蒼真は普通より少しだけ好奇心が勝つ人間だった。


「いや、さすがに入らんけど」


そう言いながら、黒い渦の中を覗き込む。


渦の向こうに、かすかに石畳のような床が見えた。


その瞬間、足元の感覚が消えた。


「うおっ」


バランスを崩した。


片足が黒い渦の向こうへ滑り込み、そのまま体が前へ倒れる。


次の瞬間。


蒼真は冷たい石の床に両手をついていた。


「いってぇ……」


顔を上げる。


薄暗い通路。


湿った石壁。


天井の低い洞窟のような空間。


背後を振り返っても、さっきまで歩いていた商店街は見えなかった。


代わりに、頭の中へ文字が浮かぶ。


【ステータスを獲得しました】


「は?」


声が漏れた。


続けて、さらに文字が現れる。


【称号 人類初到達者を獲得しました】


【称号報酬 ユニークスキル 先駆者の証を獲得しました】


蒼真はしばらく固まっていた。


しかし、混乱より先に、別の感情がこみ上げてくる。


「……ダンジョン、だよな。これ」


理解は早かった。


ゲームでも漫画でも見たことがある。異空間。ステータス。称号。スキル。


現実に存在するとは思っていなかった。


だが、目の前で起きてしまえば、そう理解するしかない。


蒼真は足元を見る。


石が落ちていた。


片手で握れる程度の、角張った石。


拾い上げる。


「武器……これしかないか」


出口を探すのが先だろう。


戻れるのか確かめるべきだろう。


自分でもそう思う。


それでも、蒼真は通路の奥を見た。


暗闇の先に、わずかな明かりが揺れている。


胸の奥が妙に熱かった。


怖くないわけではない。


だが、それ以上に気になる。何があるのか。

どこまで続いているのか。自分は今、何を手に入れたのか。


「ちょっとだけな」


誰に言い訳するでもなく、蒼真は石を握って歩き出した。


数分も進まないうちに、それは現れた。


通路の奥から、半透明のゼリー状の塊がぷるりと震えながら近づいてくる。


スライム。


そう呼ぶしかない見た目だった。


「うわ、本当にいるのかよ」


スライムが跳ねた。


次の瞬間、細い液体が蒼真へ飛んでくる。


反射的に身をよじったが、避けきれなかった。


液体がスーツの袖にかかる。


ジュッ、と嫌な音がした。


布地が焦げ、白い煙が上がる。


「っぶねえな!」


恐怖より先に怒りが来た。


蒼真は踏み込み、握った石をスライムへ叩きつける。


ぐちゃり、と鈍い感触。


スライムの体が大きく潰れた。


だが、まだ動く。


もう一度。


さらにもう一度。


最後の一撃。


石の角が、スライムの中心へ綺麗に入った。


それまでとは明らかに違う感触。


狙った場所に的確に攻撃ができた感覚があった。


スライムの体が大きく弾ける。


【クリティカルヒット】


【スライムを討伐しました】


【レベルが上がりました】


文字が浮かんだ瞬間、体の奥が熱くなった。


疲労が引く。


呼吸が軽くなる。


指先に力が入る。


「……マジか」


さらに文字が流れる。


【称号 人類初討伐者を獲得しました】


【称号報酬 ユニークスキル 報酬増加を獲得しました】


【称号 人類初成長者を獲得しました】


【称号報酬 ユニークスキル 成長加速を獲得しました】


【称号 人類初会心撃者を獲得しました】


【称号報酬 ユニークスキル 幸運招来を獲得しました】


「……多くないか?」


思わず口から漏れた。


一匹倒しただけで、称号が三つ。しかも全部ユニークスキル付き。こんなものが普通とは思えなかった。


口元が自然と緩んだ。


蒼真は焦げた袖を見る。


それから、スライムが消えた場所を見る。


危険なのは分かっている。


でも、それ以上に胸が高鳴っていた。


危ない目に遭った。


服も焦げた。


まともな武器もない。


それでも蒼真は笑っていた。


「レベル、上がったんだよな」


ほんの少し前まで、残業帰りのくたびれた会社員だった。それが今、明らかに体が軽い。握った石も、さっきより軽く感じる。


蒼真は奥へ進んだ。


二匹目のスライムは、最初より早く倒せた。


三匹目は、液を吐く前に石を叩き込めた。


四匹目を倒す頃には、足の運びが変わっていた。


自分の体なのに、思った以上によく動く。


力が出る。


怖いはずなのに、楽しい。


その後も何度かレベルが上がるたび、体の奥に火が灯るようだった。


そして、通路の最奥。


明らかに雰囲気の違う扉があった。


石造りの大きな扉。


左右には、ぼんやりと青白い光が灯っている。


「ボス部屋、だよな」


ここで戻るべきだ。


そう思った。


思っただけだった。


蒼真は両手を握り、肩を回す。


体が軽い。


さっきまでの自分とは違う。


学生時代。


何の根拠もなく、自分は何でもできる気がしていた時期があった。


大人になるにつれて消えていった、あの不思議な万能感。


それに近いものが、胸の奥に戻ってきていた。


「いや、行っちゃえ」


扉を押した。


中は広い部屋だった。


中央に、スライムが五匹。


今までより少し大きい。


五匹が一斉にこちらを向く。


蒼真は石を握り直した。


最初の一匹が液を飛ばす。


横に跳んで避ける。


二匹目が迫る。


石で叩き落とす。


三匹目に足を取られそうになり、転びかけながら蹴り飛ばす。


格好良くはなかった。


必死だった。


息が上がる。


袖だけでなく、ズボンの裾も焦げる。


腕にも熱い痛みが走った。


それでも止まらない。


一匹。


二匹。


三匹。


体力が削られる。


腕が重くなる。


それでも、レベルアップで得た力を頼りに石を振り続けた。


最後の一匹を叩き潰した瞬間、部屋の空気が変わった。


【ボスを討伐しました】


【ダンジョンを踏破しました】


部屋の中央に、古びた宝箱が現れる。


蒼真は膝に手をつき、荒い息を吐いた。


それから笑った。


「やば」


頭の中に、また文字が浮かぶ。


【称号 人類初踏破者を獲得しました】


【称号報酬 ユニークスキル 真鑑定を獲得しました】


響きだけで、ただの鑑定ではないと分かる。


蒼真は宝箱を開ける前に、部屋そのものを見る。


知りたい。


そう思った。


《真鑑定》


その瞬間、情報が頭の中へ流れ込んでくる。


【ダンジョン名 始まりの小迷宮】


【ランク F】


【階層 一階層】


【テーマ チュートリアル】


【状態 踏破済み】


「……便利すぎるだろ」


蒼真は宝箱を開けた。


中には、小さな透明な石と、見慣れない玉が入っていた。


玉へ意識を向ける。


【スキル玉】


【内容 酸耐性・小】


スキル玉?


スキルを覚えられる玉?


「内容は酸耐性……」


スーツの袖を見る。


スライムの液で焦げた部分。


あれに対応する耐性なのだろう。


報酬としては分かりやすい。


蒼真は透明な小さな石とスキル玉を拾い上げた。


部屋の奥に、外へ続く白い光が浮かぶ。


そこへ足を踏み入れる。


次の瞬間。


蒼真は元の商店街へ戻っていた。


夜の空気。


並んだシャッター。


遠くを走る車の音。


振り返る。


人ひとりが入れるほどの大きさだった黒い渦が、徐々に小さくなっている。


《真鑑定》


【クールタイム】


【次回解放まで残り 23時59分54秒】


黒い渦はさらに縮み、やがて視界から完全に消えた。


蒼真はしばらく、その場所を見つめていた。




自分が読みたい作品を書いています。

「俺ガ考エタ最強ノ武器!」「俺ガ考エタ最強ノ技!」が活躍しているところが見たくて。

スーマ「これでどうよ!カッコイイっしょ!」

AI先生「日本語オカシイダロ」

スーマ「ですよね!直します!!」

AI先生「ココ主人公ノ情緒コワレトルンカ」

スーマ「ですよね!書き足します!!」

AI先生「ダカラ日本オカシイッテイッテルダロ」

スーマ「これでどうですか!?」

AI先生「誤字脱字18カ所アルヨ」

スーマ「うぉおおおおおお!!!」

AI先生「コノ表現ハコウ。コノ時ハコウ。イイデショ?」

スーマ「最高ですやん……欲しかったのそれです……」

先生と二人三脚で頑張りましす。

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