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第18話 パステルカラー

翌日から、蒼真は武器訓練ダンジョンを探し始めた。


ただし、見つからなかった。


一日目。


今日は土曜。一日かけて古い体育館、剣道場、スポーツ用品店の裏、空き地、閉鎖されたジムを見て回る。


見つからない。


代わりに見つけたのは、古い銭湯の裏にある湯気のダンジョンだった。


【ダンジョン名 白湯の浴場】


【ランク F】


【階層 一階層】


【テーマ 蒸気】


見つけたので入った。


蒸気で視界が悪く、熱気がきついダンジョンだった。


生活魔法の微風がかなり役に立った。


報酬は、熱耐性・小のスキル玉。


これはこれで当たりだった。


二日目。


武道具店を探したが、そもそも近場にほとんどない。


古い学校跡、廃倉庫、運動公園を回る。


見つからない。


代わりに、運動公園の管理棟裏でダンジョンを見つけた。


【ダンジョン名 跳ね獣の広場】


【ランク F】


【階層 一階層】


【テーマ 跳躍】


見つけたので入った。


跳ね回る兎型の魔物に翻弄され、何度も転がった。


受け身がなければ、もっとひどい怪我をしていたと思う。


報酬は反応強化のスキル玉。


これも使った。


【スキル 反応強化を習得しました】


三日目。


蒼真は少し考え方を変えた。


武器という言葉に引っ張られすぎているのかもしれない。


訓練。


試練。


道場。


そういうテーマかもしれない。


そう思って、古い公民館や体育施設、神社の境内、河川敷まで見て回る。


見つからない。


代わりに、河川敷の橋脚下でダンジョンを見つけた。


【ダンジョン名 流砂の小道】


【ランク F】


【階層 一階層】


【テーマ 足場不良】


見つけたので入った。


砂に足を取られ、思うように動けない。


土魔法で足場を固めようとすると、逆に崩れる場所もある。


かなり面倒だった。


報酬は歩法のスキル玉。


蒼真はその場で使った。


【スキル 歩法を習得しました】


足の置き方。


重心移動。


滑る場所での体の運び。


これも戦闘補助として大きい。


四日目。


蒼真は、さすがに少し疲れていた。


会社への出社はもう終わりに近い。


引き継ぎもほぼ完了している。


だが、夜のダンジョン探索は続いている。


武器訓練ダンジョンは見つからない。


代わりに別のダンジョンばかり見つかる。


そして、見つけたら入ってしまう。


結果、強くはなっている。


熱耐性。


反応強化。


歩法。


魔石も素材も増えた。


だが、肝心の武器訓練ダンジョンは見つからない。


「ないのか?」


帰り道。


蒼真は少し肩を落として歩いていた。


探している時ほど見つからない。


ここ数日で、それを嫌というほど味わった。


真鑑定は便利だ。


だが、ないものは見つけられない。


自宅近くの商店街に入る。


もう閉店している店が多い。


シャッターの下りた惣菜屋。


古い喫茶店。


雑貨屋。


女性向けの可愛い服や小物を扱う店。


パステルカラーの看板に、丸い文字で店名が書かれている。


蒼真は何気なく、その店の横を通り過ぎようとした。


その時、裏手へ続く細い通路の奥に、白い入口が見えた。


足が止まる。


「……いや、まさか」


店はどう見ても可愛い。


ふわふわした服。


小さなアクセサリー。


花柄のバッグ。


店先のポスターには、にこにこしたモデルが春物のワンピースを着ている。


その裏手。


薄暗い搬入口の横。


そこに、白い入口。


《真鑑定》


【ダンジョン名 武具試練の間】


【ランク -】


【特殊ダンジョン】


【階層 一階層】


【テーマ 武器訓練】


【状態 未踏破】


蒼真は表示を見た。


次に、可愛い店の看板を見る。


もう一度、表示を見る。


「そこにあんのかよ」


思わず声が出た。


四日探した。


道場も見た。


体育館も見た。


スポーツ用品店も見た。


神社も公園も河川敷も見た。


可愛い服屋だけは、完全に対象外だった。


それが、女性向けの可愛い店の裏手。


パステルカラーの看板の裏。


武具試練の間。


あまりにも似合わない。


あまりにもダンジョンらしい。


蒼真はしばらく笑っていた。


疲れも、トボトボした気分も、一気に吹き飛んだ。


「いや、入るでしょ」


四日探した目的地だ。


入らない理由がない。


蒼真はリュックの肩紐を握り直し、白い入口へ向かった。


入口の前で、もう一度だけ可愛い店の看板を見る。


花柄。


リボン。


パステルピンク。


その裏に、武具試練。


「場所のセンス、どうなってんだ」


呆れながらも、口元は緩んでいた。


蒼真は白い入口へ足を踏み入れる。


視界が暗転する。


次の瞬間、乾いた空気と、金属の匂いがした。


目の前に広がっていたのは、石造りの広い訓練場。


壁には剣、槍、盾、弓、短剣が並んでいる。


中央には、五つの扉。


それぞれの上に、武器の紋様が刻まれていた。


剣。


盾。


短剣。


槍。


弓。


蒼真はゆっくりと息を吐いた。


「当たりだ」


探していたものが、ようやく見つかった。


武器を学ぶ場所。


武器を得る場所。


そして、たぶん。


武器のスキルを増やす場所。


蒼真は腕を軽く回した。


疲れている。


四日間、探し回って、潜り続けて、体はかなり重い。


だが、そんなものは関係なかった。


目の前に、欲しかったダンジョンがある。


見つけたら入る。


探していたなら、なおさらだ。


蒼真は五つの扉を見比べた。


まず、どれから行くか。


剣。


盾。


短剣。


槍。


弓。


少し考えて、蒼真は短剣の扉を見た。


さっき覚えた初級短剣術。


そして、腰のナイフ。


「狭いダンジョンじゃ短剣は便利だったしな」


そう言って、蒼真は短剣の扉へ歩き出した。

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