第81話:世界に一人しかいない大聖女なのに…
行き交う人々、馬車も多い。
町並みはレンガ造りの家が多く、整然と並んでいる。
帝国北部の中継地として栄えている大きな街のようで、賑わいが凄い。街の中央に設けられたマルシェでは各店舗の前に、珍しい果物や野菜が山積みに置かれていた。
そして奴隷商も…
「ほう、珍しい。美女奴隷を連れた美少女エルフとは…」
俺たちを値踏みするような視線が纏わりつく。
「神官にアルケミスト、魔法使い…の奴隷か?冒険者か?」
俺、サロメ、エルウィンを見て、メルメルクルティエに話しかけてくる。
「そうだ。
ところで、私に似たエルフを見てないか?」
「ふむ、エルフは美しいだけに個性が無いからな…まあ、個体数自体が少ないから…」
そういってメルメルクルティエの顎に指をかけて顔を右左と動かす。
「失礼な!何をする!」
メルメルクルティエはそれを払い除ける。
「おっと、俺の知っている範囲にはいないな。エルフはよく万引きで捕まって期間奴隷になってるのが多いんだが…」
「万引きで捕まる期間奴隷?」
エルウィンが聞き返す。
「エルフは金も持たずに、店の商品に手をつけて捕まることが多いからな」
俺たちはメルメルクルティエを見る。
「…私たちは通貨など持たないからな、外部と交易どころか交流もない。里を出たものが良くそうなると聞いている…」
俺たちの視線に気づいたメルメルクルティエが嘆息する。
ああ、それで奴隷商に…
「街の西に奴隷商が多い、行ってみるんだな…
なあ、そっちの奴隷だが…売る気はないか?
高く買うぞ」
奴隷商の言葉にメルメルクルティエは俺たちを見る。
「考えておく」
俺たちの顔が引き攣る。
東西南北に突き抜ける大通りを西へと向かう。
北から入って中央、西という順路だ。
なんだろう、ガラが悪くなってきた気がする…
歓楽街だからかも知れない。
まだ、陽も高いせいで呼子が少ないが、看板や雰囲気が教えてくれる感じだ。
「なんでしょう、嫌な匂いがします」
エルウィンが嫌そうに呻く。
「お香の匂いですね。ラベンダーやローズマリーなど安物のハーブの…」
鼻をくんくんさせるサロメさん。
「たまらん!」
メルメルクルティエが鼻を両手で押さえて走り出した。俺たちはそれに続くしか無かった。
「このまま逃げませんか?
ステラさんなら取れますよねコレ」
追いかけながらエルウィンが、隷属のギロチンを指差す。
サロメさんも頷いている。
ああ、そこに気づいて大人しくついてきてくれていたのか。
「何故そこに…」気づきました?
「大聖女様が嘆いてはいますが全く焦っていないと、吸血鬼のエルウィンさんが大人しくされているので…」
サロメさんの分析に俺は頷きを返す。
「そうですか。
たぶん外せます。
呪具の類ですが魔力に反応するタイプでもないみたいなので…」
サロメさんとエルウィンに安堵の表情が浮かぶ。
「ただ、世界樹問題も放置できないので悩んでいます」
問題はルルリザクルティエを連れ戻せば良いだけなのかが判断つかない。
世界樹にとっての役割は、まだ教えてもらってないから。
「死の世界になるか、人類の存亡かですね」
俺は頷く。
この世界に生きる以上、どちらも放置できない。
***
「よく逃げなかったな。もっとも逃げれば即座にその首が落ちたことだろうがな」
メルメルクルティエは西門近くまで逃げていた。
匂いで逃げた人が凄んでもなぁ…
「人族はよくあんな匂いの中で平然としていられるな」
「あ、それには同意します」
メルメルクルティエの言葉にエルウィンが同意を示す。
いや、俺だって匂いを消すための「あんなきつい匂いは、私もゴメンです」
「私は大丈夫かな…」
と錬金術師のサロメさん…
「…そうだ。メルメルクルティエさん。衛兵に聞かれたら如何ですか?街に入ったとか出たとかわかるかも知れませんよ」
***
「何故お前が、ここにいる。奴隷に落とされたはずだろう。さては脱走したな!」
衛兵に確認したら突然叫ばれた。
「あ、当たりですね!」
サロメさんも叫ぶが、これを当たりというのか?
ルルリザクルティエと同じ顔、同じ容姿のメルメルクルティエが間違われた感じだ。
「わ、私は双子の妹を探しているだけです」
「逃亡奴隷だ捕まえろ!」
ピィーーーーーーー
警笛まで鳴らされ、他の衛兵も集まり始める。
「メルメルクルティエさん。逃げますよ!」
「わ、わ、わかった!」
俺はメルメルクルティエの手を取ると逃げ出した。
「女の足で逃げ……」
衛兵の声がわずかに聞こえるが、既に引き離している。
俺はメルメルクルティエを、エルウィンはサロメさんをお姫様抱っこで逃げたからだ。
フフフ、奴隷の上、逃走犯にまでなってしまった。世界に一人しかいない大聖女なのに…
マリアに絶対怒られルルルルル…
お読みいただき有難う御座います。
評価・ブックマーク・感想・レビューなどアクション頂けると励みになります。
よろしくお願いします。




