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【15000PV突破】元勇者、転生聖女として俺を召喚し異世界救います。~惚れた大聖女に転生していました。中身は元勇者のおっさんですTS~  作者: 奏楽雅


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第70話:エーナの存在を消してしまう可能性があるからだ

「エルウィン…何故理解してくれないんだ?」


エドヴァンは優しくエルウィンに語りかける。


ああ、アイツはこういう話し方だったな。


「魔族と手を組むなんてありえません。この星に生を受けたものとして許せない判断です王子」

(ちょっと待て!)

魔族と手を組むだって!

吸血鬼族が魔族と…そんなことあるのか?


「人族の勇者も既に2名死んだと聞く。ならばこの世界の覇者は、異界の魔族になるだろう」


「まだ勇者は残っていると聞きます。人族と手を組めば良いではないですか!」

(そ、そうだぞ、頑張れエルウィン!)


「弱き者と手を組む、それこそ吸血鬼の矜持を損なうとは思いませんか?」


「人族とはわかり合えると思います。ですが異界の魔族とは無理だと思います。人族が滅べば我らも遠からず滅ぼされます」


「その時は、我らが魔族を倒せばよいではないか」

先頭の男が口を挟む。


『随分威勢がいいですね。我らと敵対しますか?』

赤い目の集団の中に、一人黒い肌の者が混じっていた。

(魔族じゃないか!)

肌の色以外だと特徴が似てるなこいつら。

「………」


『フン。反抗分子は既にその小娘だけですさっさと始末してください』


吸血鬼は顔を見合わせる。


『早くしなさい、こんな寒いところまで飛んで逃げ隠れていたなんて迷惑な』


「致し方ない、トランファ。頼む」

エドヴァンは先頭の男に命令を下した。


それを聞いたエルウィンの顔に恐怖が張り付く。

一拍置くと両手を合わせ神に祈るような仕草をした。吸血鬼の神は俺たちと同じ神なのだろうか…


トランファが剣を抜きつつ、ゆっくりエルウィンに近づく。


「エドヴァン様。問題はありましたがお慕い申し上げていました」


エルウィンの言葉にエドヴァンは背を向けた。


(まったく。致し方ないじゃないだろうが)

致し方ない…な


「この島には吸血鬼、魔族はいないと聞いていたのですが…」

俺はエルウィンの直ぐ側で《ハイド・エクステンス 》を解く。


「な、何者だ!」

吸血鬼の気配察知能力は高い。それにも拘わらず、直ぐ側で姿を見せた俺に吸血鬼は驚く。


「人間?」

「ばかな、人族ごときが我らを欺けるものか!」

『ゲーー大聖女』


(おや?)

俺をご存知ですか。魔族さん。


『なんで、ここに!貴様は帝国に向かっているはずだろう』


えー

俺たちの情報って魔族に筒抜けですか?


『そうか、俺の計画を嗅ぎ付けてノコノコやって来たんだな…くそっ。俺が優秀すぎるために』


「貴方…誰?」

俺は首を傾げる。


『…なんだと!誰かだと!ウガァーーーー!』

なんか、勝手に勘違いしているみたいなので、誰何したら、魔族が怒りだした。

いや、なんでだよ!


『き、吸血鬼ども。この女を殺せ、最優先事項だ!』


「我らは、お前の部下ではないぞ魔族!」


「だが、人族ごときが我らの会話に口を挟んでくるとは許せんな」


「トランファ。まて、魔族と手を組んだとて人族と戦うとはいっていない!」


トランファをエドヴァンが止めようとする。


「王子。人族とは元々敵対関係みたいなものではないですか、何を躊躇う必要があります?」


(まあ、そうね)


「貴方、逃げなさい。目的は私です」


エルウィンが俺を気遣うようなことをいう。

俺はエルウィンの足に手を翳すと

《リカバリー》状態回復の魔法。


魔族と違って吸血鬼にとって聖魔法は弱点ではないが、人と組成が違うためヒールを使用しない。

エルウィンの怪我した脚が光りに包まれる。


「貴方…」


「心配はご無用ですよ、安心してください」

俺はニコリと笑って安心させる。


「ここはノースランドの領土です。貴方がたが踏み入ってはいけない地ですよ。直ちに立ち去ってください。魔族は此方で処理しても構いませんので置いていって頂いても構いません」


『「貴様!」』

トランファと魔族の声が重なる。


俺はそれを無視してエドヴァンを見つめる。

引いてくれないかな…

エドヴァンとは敵対したくないんだよ。


(ん?)


エドヴァンが、魔族のほうを気にした目配せをする。


え?いいの?


エドヴァンが瞳で頷く。


『大聖女を殺せ!そうすれば吸血鬼族は優遇する!』


「言われんでもこんな女引き裂いてやるわ!」

魔族の叫びにトランファが俺に突っ込んでくる。


「おい!トランファやめるんだ!そいつはヤバイ!」


エドヴァンの制止に聞き耳を持たず俺に襲い掛かる。


ふむ…躾けが悪いぞエドヴァン。


トランファはその速度と膂力で唸りを上げる拳を振り下ろしてきた。


俺はそんなトランファの懐へと潜り込んで背を向ける。

「見た目で舐めていませんか?」

空を切る拳の上腕を両手で掴むと、その勢いに俺の跳ね上げたお尻で突き上げ回転するように投げ飛ばす。

奴らはエルウィンを追うときに時速60キロで走っていた。

その勢いのまま俺の力が乗った投げは木々にぶつかりながらも数十メートル吹っ飛んでいく。


「……」


言葉を失う、エルウィンやエドヴァンたち。


だが、魔族は驚いていなかった。

『全員で掛かれ!手を抜くな!奴は化物だ何人も仲間が殺さててるんだ!』


(えー)

なんか酷いいわれ方じゃないか?


「噓だろ」

「魔族が?」

「あんな人族の小娘に?」


『奴の容姿に騙されるな!』


「ガァアアアアアアアア」

トランファが怒りの形相で立ち上がってくる。

横の大木を殴り折り、怒りを表す。


突然だが、エーナを先に返したのには理由がある。

最大の目的はミロクさんとサロメさんの安全を図るためだが…

俺の聖魔法が、エーナの存在を消してしまう可能性があるからだ。


《セイクリッド・ピラー》


俺は聖なる光の柱を展開する。


夜の森に光の柱が天を貫くように輝きを発する。

柱の中は夜にも関わらず、七色に輝き昼間のように明るく照らし出す。

同心円に広がる光は、吸血鬼に、魔族の元へと範囲が広がり始める。


「あ、あ、あ」

俺に一番近い場所にいたエルウィンは悲鳴のような声を上げ、後退り、光りに包まれるときには両手を結び祈りの姿勢をとっていた。


だが、吸血鬼はこの世界で生まれた種族だ。光はエルウィンの身体を取り込んでも何事も起こらない。

「え、え、え?」


セイクリッド・ピラー

単なる神の力ではない。

この世界に生まれた者の命を慈しみ、育む力だ。

怪我を病気すら治す奇跡。


だが、それに外れるものには牙を向ける。

魔族は動けなかった、そのエネルギーに、神々しき光に。

触れた瞬間、蒼い炎で燃え上がる。

『な、なんだこれは…何が。俺は…』

魔族は光の粒へ変わっていく。

『吸血鬼ども奴を奴を殺せ…』


森に太陽が落ちたかのような光は魔族の消滅とともに淡い光を残しつつ消え失せた。


虫の声すらしない静寂が訪れる。


今後、俺は戦いの最中にエーナの位置をいつも把握しないといけないだろう。


「終わりました」

俺はそういって、立ち尽くす吸血鬼たちに声を掛ける。


お読みいただき有難う御座います。

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