第68話:貴方は何者だ?
村を出ると直ぐに森で、針葉樹林が日差しを遮るように立っていた。
リスっぽい生き物や兎っぽい生き物、鳥の姿が僅かだが見て取れる。
少し進むと等間隔に切り株が見えるようになった。
ここまで、大型獣の痕跡はない。
村もその辺は考えて作られているだろうから、しかたないか。
再度川沿いに向かう。
おお、大きな糞がある。
イノシシくらいの生き物かな?
とはいえ、糞だけだ。
流石に手に取って分析をしたりしない。
(だってそんな知識はないから)
どんぐりが混じってるとかわかっても今回の解決には繋がらないからね。
川に出ると渓流の魚が泳いでいる。
眺めていても焼き魚が流れてくることはなかった。
「ふーーー」
うっすら浮かんだ汗を拭うと俺は河原の岩に腰掛ける。
うーん
(手詰まりっぽくね)
ミロクさんと、サロメさんにそれぞれ調べてもらっているが、俺自信も魔法を発動させて組成調査を行っていた。
《エンジェル・アナライズ》
知覚未知覚含め環境中の組成分析から構造まである程度わかってしまうダンジョン用魔法だ。
それでジゼルさん見ろって?やだよ個人情報じゃん、それに結構ザクッとした結果がわかるだけだから万能じゃないんだよ。
ただそのザクッでも、閾値を下げて何度も走査すれば精度は上がるんだけど、何も異常な反応はなかった。
(吸血鬼が原因ならそのほうが手っ取り早くて良いんだけどな―)
こういうアプローチはどうだろう…
ミロクさんは俺ならこの問題を解くことができると占術にでたといっていた。
ならば、その占術で教えてくれた存在は何なのか…
乱暴に分けると、占術は学問系とスピリチュアル系だと思うんだ。
学問系は東洋で言うと命術や相術。
命術は、要は四柱推命や占星術とか
相術は、手相、人相、風水だな
スピリチュアル系は、卜術や霊感だったか?
卜術は、タロット、易、ルーン、ダウジング
霊感は、神託や降霊、アカシックレコードへのアクセスなどか?
「ミロクさんはどれなのかな?
神?
精霊?
高次元存在?
悪魔?
それとも魔神か?」
「儂は高次元存在とアカシックレコードじゃな」
「んんん…」
俺は口を塞いで、声のした方を見る。
「それと厳密にいうと少し違うが、神=高次元存在で良いと思うぞ」
ミロクさんとエーナが森から出てきた。
「なぜこちらに?」
「原因場所を占っていて、こちらに足が向いてのう」
「何かわかりましたか?」
エーナが走ってきて俺の膝の上に乗る。
ミロクさんは肩をすぼめてみせた。
「大聖女殿、少し話さないか?」
「はい?」
(なんだろうか?)
「儂はな…地球からこの世界への転生者じゃ」
(!)
ミロクさんは俺の顔色を伺いつつ話を進める。
「転生は召喚と違って、特別な力が権限しないことが多くてのう。もっとも記憶すら引き継げる者は少ない」
「転生ですか…」
んーー
「…そのような話も教会には集まっていますが…」
俺の顔の変化を探りニヤリと笑う。
(そのニヤリはやめて!)
「運よくか悪くか、儂は前世の記憶があり。前世の知識があった。その上特殊な能力も持っていた」
「…占術ですか…違いますね…未来へのアクセス能力…」
「そう。高次元存在とアカシックレコードへのアクセスそれが儂が託された能力じゃ」
「…それは、凄い能力ではないですか」
アカシックレコードは宇宙開闢からの事象、想念、感情が記録されている図書館とでもいうべきメモリーの集積それを参照できる能力とは。
「だが、未来は絶対ではなかった。ズレる狂うも多々起こりよる」
「量子力学にある不確定性原理やカオス理論……」
俺は自分の呟きにハッとして口を噤む。
「よく知っておるのう、この世界ではまだない概念なのに」
(くっそ!)
「…貴方の言う神も未来の確定は無理だった?」
「ラプラスの魔か?」
ラプラスの魔。因果的決定論。原因と結果が因果律で結ばれれば不確実なことは何もなくなり未来が決定づけられる概念。
「魔族にせよ勇者にせよ他の世界が繋がって来る以上、この世界をどんなに管理できたとて不可能じゃろうからな」
だろうな…
「それに大聖女殿。貴方は何者だ?アカシックレコード上では完全なイレギュラーでありエラーな存在。だがバグとも違う。そして神はそんな大聖女殿の存在を認めている…不思議でしょうがない」
「そういわれましても…何のことか」
「少し腹を割って話さないかい、大聖女殿」
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