第67話:サロメさん株が俺の中で爆上がりした
吸血鬼、ヴァンパイア、ドラキュラ。
先日リヴァイアサンに遭遇したが、同じようにこの世界に元々いる種族だ。
地球の吸血鬼との違いは種族として存在している点だろう。
真祖とかいて起源が人間という設定はない。
好き嫌いはあるだろうがにんにくがダメとか、十字架に弱いとか聖水がダメとかいう、一宗教に根ざした弱点はない。
生物である以上、心臓に杭とか打たれれば当然死ぬ。
地球と同じなのは強靭な肉体と魔力を持った高位の存在であること。
ただ…
勇者時代に知り合った吸血鬼がこういっていた。
強靭さを得るために、吸血鬼は皮膚や筋肉、血液が高エネルギーでとても酸化しやすい組成をしている、太陽光を浴びると化学反応で 急激に皮膚が炭化し発火してしまうと。
それと、吸血に関しては、抗酸化物質、要は自分の血液濃度を下げるためで、吸血しないと長くは生きられないらしい。
銀製品に弱いのは、銀イオンが強力な酸化性質を持っているため弱点になるそうだ。
なるほどなと思った。
この吸血鬼とは勇者時代に一緒に戦った仲で……この先旅が進めば出会えることだろう。
「では、この国には吸血鬼は居ない筈なのですね?」
「まあ。渡りの吸血鬼や、追放されたはぐれ吸血鬼なんかがいて、いつの間にか住み着いていたとしても把握はできんがな」
ババはそう答えてくれた。
「あの…私までついてくる必要ありましたか?」
「はい、錬金術師としての知見が欲しいので」
なんとなく優秀そうで気に入った、錬金術師のサロメさん。
現在、事件解明は最初の現場からと思い、俺、ババ、サロメさんでエーナに騎乗して始まりの村へと飛行している途中だ。ただでさえ寒い国で高度をとったら奇病じゃないが凍ってしまう風魔法で皮膚の周りに空気の層を作って防寒と風圧は避けている。
『嫁よ、ちと重い…』
頑張れ!お前船でもあるんだから。
「何もこんなに急がんでも良いのではないのか?ささやかだが歓迎の用意も始めておったのだぞ」
このババ様、女王がババ、ババいってたんでご老人かと思っていたら三十歳前半のお姉さんだった。名前はミロクさんというらしい。
「申し訳ありません、魔族や勇者がらみで時間が無いのです」
「無理を言っている身だからのう、全ては大聖女殿に任せるが…」
ミロクさんはそういって黙った。
しかし、驚いた。
何が驚くって、サロメさんもミロクさんも処女好きユニコーンに乗れたんだよ、女王もだけどね。
ジゼルさんが嫌がって近づかなかったのが気にかかる。神殿の巫女なのに…飛ぶことを嫌がっただけだと思いたい。
『少しトウは経っているが、守備範囲じゃ』
そうですか…
***
陽が落ちるにはまだまだ明るいうちに、目的の村に到着した。
森を切り開いた地に作られた、川のほとりの小さな村だった。林業と動物の皮を加工して日々の生活を送っていたことが伺え…そうで伺えなかった。
…
途方に暮れた俺に寒風が吹き付ける。
「これは…」
「疫病なら村ごと焼き払う必要があるじゃろ?」
村は既に焼き払われていた。
「儂の指示じゃったが、忘れておったわ」
と引きつった笑いをされるミロクさん。
まあ、防疫の観点で言うと凄く正しい気はする。
解せないけど…
「どうする?戻るか?」
ミロクさんが気を遣ってくれているのは伝わる。
「い、いえ。井戸や川、生活者の行動範囲は調べたいと思います」
「大丈夫か?嫁よ」
ふらつく俺をエーナが支えてくれる。
「すみません、ミロク様は原因場所を占って頂けませんか?」
こうダウジング的に…
「やってはみよう」
「サロメさんは、調査に協力してください」
「は、はい」
「エーナ悪いけどミロク様を守ってください」
「むー我もそっちがいいのじゃが…まあ、わかった」不承不承エーナは頷いてくれた。
「みなさんをここまでお連れして悪いのですが、原因は不明です気をつけて行動してください。
暗くなる前には、この場所に集まってください」
みんな頷いてくれた。
先ずは井戸だ、井戸は必ず経口する水だ、毒、鉱物など混じればそれが原因で人は病気や死に繋がる。
「ああ、大聖女殿!」
ミロクさんの声が届く。俺が井戸を覗いたタイミングで…
「井戸も潰してあるからのー、忘れておった」
井戸は石やレンガが投げ込まれた状態で使用できないようになっていた…
「疫病なら当然じゃろ?」
た、確かにそうだけど…
「私いる意味有りますか?」
サロメさんが恨みがましそうにこちらを見る。
(私を癒してください)
と、でかかるのをグッと堪える。
「あります、水質とか土壌とか調べて欲しいんです」
「でも…」
「か、川に行きましょう」
すぐ裏手の一段下がったようなところに清流と思える川が流れている。
川の水も、井戸と同じく生活用水になる。
ただ滞留せず希釈もするので、井戸より調査し辛いかもしれない。
「サロメさん、水質調査お願いできますか?」
「わかりました、やってみます」
サロメさんはそういうとポーチから小瓶を数本取り出すと水をすくい始めた。
「そちらは?」
魔法でやるのかと思っていたら何やら化学反応を見るみたいなので聞いてみる。
「過マンガン酸カリウムを主成分にした試薬です水の汚れを見ます、こちらはインジゴカルミンの試薬で酸素量を見ます、メチルレッド、ブロモチモールブルー、フェノールフタレインの混合薬で酸性かアルカリ性かを調べます」
「それは、標準的な検査方法なのですか?」
「…いえ私が見つけ出した方法を使わせて頂いてます。すみません何処にも認めては貰えていない方法になるので…だめですか?」
(おおお、この人。自分で水質調査のDOやCOD、pH測定を確立したのか!)
「ど、どうされました?大聖女様、目をキラキラされて…」
サロメさん株が俺の中で爆上がりした。
「私は周辺の動植物の状況を見てきますので、ここはお願いします」
俺はそういって周辺を見て廻ことにした。
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