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【15000PV突破】元勇者、転生聖女として俺を召喚し異世界救います。~惚れた大聖女に転生していました。中身は元勇者のおっさんですTS~  作者: 奏楽雅


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第64話:陛下行きましょう

「我が国は、氷に閉ざされた島で、夏でも農耕できる土地は限られていてな」


王族と立ち話もアレなので食堂兼ラウンジに場を変えた。席に座り船員がティーカップを置くと女王は話し始めた。


「そのため産業は、漁業、海運が主で、私掠も国として認めている。それが国交が少ないのと教会を受け入れ…いや教会が来なかった理由だ」


グレースはそれに頷くと話しだした。

「ノースランドは海賊の国で、国交のない国への略奪を行っているの、帝国は国交のある数少ない国なので、海賊被害はないわ」


「そちらの方は?」


「帝国のグレース皇女殿下です」

女王の誰何に、俺はグレースを促す。


「陛下、お会いできて光栄です。プロミネンス帝国第3皇女グレース・ゼスト・プロミネンスです。姉さまから話をいっぱい聞いています。大、大、大ファンです」


「そ、そうか?光栄だな皇女殿……」

女王はグレースのあまりの勢いに身体を引くと俺に助けを求めるような顔をする。


「グレースさん。話を続けたいので止まってください」


「あ、あ、あ、つい、ごめんなさい、ごめんなさい」


「つまり、第一次産業が気候的に厳しい土地柄で、国家的に略奪行為を産業の主軸としたため、各国や教会と縁がなかったという認識で宜しいでしょうか?」


「ま、まあ、もっと複雑な事情もあるが、概ねの把握はそれでよい…」

なんかちょっと悔しそうに女王は言った。


「魔族や魔物の脅威はどうされてたんですか?」

シャルが小首を傾げて質問する。


「寒い土地だからな、魔族の手も及ばないらしい。魔獣も脅威になる物は現れていなかった」


「住むに適さない土地であったため、逆に魔族の脅威はなかったわけですね」


「今回の救援を要請したい奇病とはなんですか?大聖女を請われる理由はなんですか」

シャルが納得したところで俺は切り出した。


「大聖女はハイライト王国の奇病を治したと聞いている。普通の聖女が同じことができるとは思えないからだ」


女王の言葉に、聖女王女三人が何度も頷いている。

(…ああ、もう話が広がっちゃってるのか…)


「き、奇病とはなんなんですか?」


「わからない…突然人が燃えたり凍ったりするんだ…」

人が燃える?

人が凍る?


「「「それって病気?」」」」


みんなの声が揃った。


「それって、オカルトとか魔法の話ではないんですか?」

マリアが声を上げる。


うんうん


「宮廷魔道士が言うには魔法、魔力は感じられないとのことだった。医者や神殿の巫女にも観て貰った、錬金術師も薬師も、だがわからなかった」


「しかし、それではステラだって…」


「占術師に聞いてみた、今世の大聖女ならと告げられたのだ」


(ここで俺?)

イヤイヤこれ無理だろ、訳わからないって。


「フィール王国の港町に辿り着いたところで、大聖女の噂と、大聖女に出会えた。これを天命といわずなんという」


「で、ですが今は帝国の勇者の危機なのです。人類の危機と同義です。陛下の事情はわかりましたが、大聖女の派遣は不可能です、そのような権限はもございません」


「頼む、なんとかしてくれ。

昨日も、今日も多くの者が亡くなり、国民は明日は自分かと恐怖に打ちのめされているんだ」

女王はテーブルに額をつけるように頭を下げた。

一国の国主がである。


「陛下…」


「う、うぉこぉおおぉぉぉ」

俺が陛下に声をかけようとして声を詰まらせると、女王の背後に控えていたノースランドの乗組員が苦しみだした。


「お、おい」

「俺に触れるな、離れてくれ」

別の船員が肩に触れようとするが、苦しんだ男は手を払いのける。


様子がおかしいことに気づき、みんな席から立ち上がり様子を見守る。


「ノリス!」

女王が、船員の名を叫ぶと男はニヤリと笑った。

「キャプテンいい旅でした。キャプテンのおかげです」

そういうと手や足から燃え始めた。


《ウォータジェット》

氷河流が魔法を唱え、放水車のように水をふきかける。


だが、火は消えない。いや引火しようとした床や天井の火は消える。船員から発火している火だけが消えない。


(なんだこれは呪いか?)


《ピュリファイ》

マリアが浄化の魔法を放つ。


《ハイヒール》

シャルは回復魔法を唱える。


しかし…


効果がない


浄化はまるで意味がなかった、呪いではない。


ヒールは…焼けただれていく時間を伸ばしただけだった。


「大聖女さま。お願いです…」

全身に火が周り、吸った息で肺が焼かれていく。声も出せず呼吸もできず…


『祖国を、ノースランドを助けてください』

そう、確かに聞こえた。


ノリスという名の船員は、ひとしきり燃えると火は消えていった。


床と天井に黒く焼けた後を残し、自身は黒い骸となって横たわっていた。


「ノリス…」

女王がポツリと声を漏らした、小さな声だったが部屋のみんなの耳にとどいた。


俺にも原因が何もわからなかった。


だが


「陛下行きましょう、私をノースランドにお連れください」


死に行く者の願いを、俺は無下にはできない。


「ステラ。ダメよ勇者を助けに行かないと世界が」

マリアの悲痛で必死な呼びかけ。


「二手に分かれます」


「分散はダメよ貴方もわかってるでしょ!」


「私とそれ以外という編成にします」


「ステラさん!」

「だ、だめですよ。そんなの」

「危険です」

「い、嫌よ私はついていくわよ」

シャルが俺の腕にしがみつく。


「ステラ。そんな編成認められるわけ無いでしょ」

マリアも俺の手を取って行かせまいとする。


「大丈夫、みんなが帝都に着く頃には追いつくようにします」

シャルの頭を撫でながら俺はそう宣言した。


お読みいただき有難う御座います。

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