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【15000PV突破】元勇者、転生聖女として俺を召喚し異世界救います。~惚れた大聖女に転生していました。中身は元勇者のおっさんですTS~  作者: 奏楽雅


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第61話:お前が神の推し

だいたい、海の旅となると海賊とか幽霊船、クラーケンやリヴァイアサンなどが出るイベントがある訳で…


「ステラ!何のんびりしているの!」


俺の像を艦首に抱いたフリゲート艦は。


「正面クラーケンです!」


「右舷幽霊船が出ました!」


「リヴァイアサンが左舷より接近!」


「後方、海賊が詰めてきました!」


ご多分に漏れず。

――纏めていっぺんに襲ってきやがった。

(なんだよそれ)


ええい!致し方ない!

「紫さん!紫さん!クラーケンを風の魔法で切り刻んでしまいましょう」


「え?えぇぇ?」


「さあ、さあ」


と俺は紫ちゃんの背中を押して艦首へと向かう。


全高六メートルはありそうな、いかにもなクラーケンが足をうようよ動かしてこちらを伺っていた。


んん?

なんか足の先端が俺を向いているような気がする…

俺は左右に移動してみる。

ロックオンしたみたいに、先端も移動している…


ああ…あのクラーケンは俺に対して魔族が放った魔物か。容赦不要だな…


「紫さん、ウィンドカッターの上級、ウィンドブレードでいきましょう」


「あ、はい」


俺は、何時ものように紫ちゃんの左横に立つと手と肩に手を添える。


ビクンと紫ちゃんの体が跳ねる。

(え、なに?)


紫ちゃんの息遣いが荒い…


「紫さん大丈夫ですか?」


「…うん、はい。だ、大丈夫です」


「もし辛いなら他の方に…」


ガシッと手を握られた。


「大丈夫です」


「は、はぁ…無理しないでくださいね。

いきますよ。」


「三千世界を渡る風の王よ」

「さんぜんせかいをわたるかぜのおうよ」

「「我が前に立ち塞がる」」

「「愚か者を」」

「「その力を持って」」

「「知らしめたまえ」」

「「《ウィンド・ブレード》!」」


紡ぐ呪文を風の王が聞きとどけてくれたのか。


空間の歪みが可視化され

目前に数多の刃が埋め尽くす。


ひとつの刃が放たれると

続けてクラーケン目がけて全ての刃が目で追えぬ速さで、立ち塞がるものを、半分に半分に半分に半分に切り刻み

クラーケンは悲鳴を上げる間もなく血煙へと変わっていった。


海面は正に血の海と化していた…


「ウォォォーー」

「凄い!」

「これが勇者か!」

「紫!」

   「ゆかり!」

  「紫ーー♡」

 「ステラ様ーー♡」

船員の歓声が飛ぶ。

(おいまだ終わってないぞ)


「あああ」

しかし、デッキに紫が崩れ落ちた。

「だ、大丈夫ですか?」

「うふふ、大丈夫です…」

(うふふ?)

何やら紅潮していらっしゃる…

「えええと…中で休んでてください」


俺は、お嫁に行けなくなる快感という言葉を思い出していた…

俺のサポートってヤバイ?


でもなー


俺は紫ちゃんを何度も振り返りつつ左舷に向かう。


左舷ではリヴァイアサンが、遠巻きに頭の半分目だけを海上に出して並走していた。

蛇のような竜のような容姿に、エメラルドの色の綺麗なスベスベした輝く鱗の巨大な存在。


「リヴァイアサンかぁ…」


ドラゴンなんかより上位の存在として位置している。


異界の魔族や魔神とは違う、この世界本来の悪魔と定義されている存在だ。


(なんでそんなものが出てきちゃうかな?)


並走して様子を伺っているようにも見える。


「ステラさんどうしますか?」


右舷にいた惺が俺に尋ねる。


「んー攻撃してこないようなら放っておきましょう」

(あまり敵対したはくはない)


ふとリヴァイアサンと目が合った。というか最初から俺を見ていたようだ。

肌がチリチリする。

なんか全身をねめつけられ、能力を図られているような気がする…


「えー良いんですか?危険じゃないんですか?」


「なんか、今日はそういう雰囲気じゃないみたいですよ」


こいつも俺が目当てだったようだ…だけど敵対心は感じない。


「わかるんですか?」


「…なんとなくです。

船員の皆さーん!

リヴァイアサンには手を出さないでください!

攻撃しないでください!」


「ああ?」

「なんでだ!」

「天災級だぞ!」

「危険じゃないのか?」

「でも大聖女様のいう事だし…」


「大丈夫です。攻撃しなければ何もしてきません!」  


「わ、わかった」


俺の叫んでいたことがわかっているのか、リヴァイアサンがこちらへと近づいてくる。


「ウワァーー!」


「近づいてきたぞ!」


「退避!退避!」


俺の攻撃しないでとのお願いで、手を出さないでくれているが、乗組員はパニックだ。


「大丈夫です!慌てないで!」

俺はさらに声を張り上げる。


「本当に大丈夫なんですか」


「たぶん…」


「ス、ステラ。なんで攻撃しないのよ!」

マリアたちが右舷から駆けてきた。


「何かあったんですか?」


ズザザザザザザアァァァァァ!

海が盛り上がる。

フリゲート艦が、水面に浮かぶ木の葉のように揺れて立っていられない。

俺は船べりを掴むと、揺れが落ち着くのを待つ。


「うわぁあ、デカ!」

「何これ何これ何これ!お姉様、怖いわ!!」


頭部だけで10メートルはあるリヴァイアサンが、鎌首をもたげフリゲート艦を睥睨していた。


(ふむ)

「なにかご用ですか?」

取り敢えず話しかけてみた。


『お前たちが今世の勇者か?』

頭の中にそう言葉が流れ込んできた。


「なんだ?」

「頭に声が響くぞ!」

「頭が割れる!」

周りの人も同じみたいだ…


「ステラ、この声なに?」

マリアが頭を押さえて聞いてくる。


「リヴァイアサンよ、リヴァイアサンが頭に直接語りかけているわ」

俺はリヴァイアサンを見る。


「リヴァイアサンが?」


『屈服せよ』


膝を折りたくなるような強力な衝動が身体を支配しようとする。


ザザザザザザ


見える限りの人たちがリヴァイアサンの声に屈する。


膝をつく者、うつ伏せに倒れる者…

マリアも、グレースも、氷河流も、迅たちも抗えない。


立っているのは…

惺と煌、それと俺だけだ

マキシとアリスは中腰で耐えているがアウトだ。次の行動に移れる状態ではない。


『なるほどな…』


リヴァイアサンはそう言うと、更に俺を射すくめる。


更なる圧が加わるが耐えられないことはない。

涼しい顔をしてやろう。


『お前が神の推しなのが、良く解った』


(は?)


『ではな…ふっ』

そう、言い放ってリヴァイアサンはフリゲート艦から遠ざかっていく。


(おい!勝手に納得して、勝手に帰るな!)


『また会おう』

俺のことを無視して海中へと沈んで消える。


(ちょっとまて、神が何言ったんだよ!)


「どうしました?ステラさん」

惺がグレースを助け起こしながら俺に声をかける。


「あ、え…いいえ、なんでもありません」


「なんだったんだ…」

「神の推しとか言ってたぞ」

「立ってた勇者に言ったのか!」

「大聖女様も立ってたぞ?」

船員が呪縛を離れ口々に状況を理解しようとし、視線が俺に集まる。


(あぁ、ヤバイ俺は屈するべきだった!)


「ゆ、幽霊船のいる、右舷に行きましょう」


お読みいただき有難う御座います。

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