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第59話:事もなし

国境の街、リバーサイドブリッジ。

俺たちは、ラフィール王国まで戻ってきた。

(もうこのままお家に帰りたい…)


冒険者ギルドに立ち寄り、事の顛末を報告する。まあ約束みたいなものだからね。


そして、アリスはこの勇者パーティに残留することになった。

ギルド職員の出向扱いで。


軍務卿の娘で、勇者因子、数少ない闇属性のアサシンというレアキャラ。

勇者パーティに於いて、お荷物どころか役立つ有能キャラ。

逆に…ギルドの受付にいても迷惑なお荷物キャラ、居なくて清々する上に、勇者パーティにギルドが援助している風を装える特典付き。


ギルド長とマリアが硬く握手をしていた。


「なんか良くわらないですけど、ボーナスも出たんでこれからも宜しくお願いします」

アリスがお辞儀する。

「「「「「「ようこそ!」」」」」」


そして…


「ギャァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァーーーーー!」

エテルナの絶叫が街に木霊した。


「あ、あ、あ、あ、ああああーー

グロリアーナから報奨貰うの忘れてたー」


(そりゃあの状況、雰囲気で貰えんだろ普通)


「エテルナさんはチャリティコンサートで儲けたんだから我慢してください」

俺は泣き崩れるエテルナを慰める風を装う。

(いや、可哀想って感情は湧かんだろコレ)


「凄いわ凄いわ

何このカオスなパーティ

さすが大聖女と芋洗いな勇者の集団

お姉さまに報告しないと」


(………)


かつて、こんな勇者パーティがあっただろうか…


***


冗談はさて置き。


ここに戻ったってことは、殆ど王都から離れてないんだなこれが…


半月位経ってるのに、二日分くらいしか進んでないんじゃね?


東に向かうコーチの中。


「………」

マリアが声もなく蒼白な顔をしていた。


「速く速く速くー」

聞こえないくらい小さい声でブツブツ言っている。


(怖いっす)


シャルは相変わらず俺の腕にしがみついている。

(まあ、いつも通りだ。事もなし)



そういえば…男性陣って馬車で何してんだろ、昔何してたっけな………

……


「!」

(やばい!)


「マ、マリア。席替え席替えを提案します!」


「な、何よステラ」


思い出した。男子だけのコーチの中でギスギスして会話もなく、精神が病んでいく感覚。


「だだだ、男子と女子でコーチを分けるの止め!夜以外は男女一緒にします!」


「「「「「「えーーーーー!」」」」」」

(おっと!)

「「「「「「やだーーーー!」」」」」」

(お前ら…)


「気持は痛いほどわかります。

だ、だけど聖女として、パーティのメンタルケアが必要です。パーティーなんだから理解して」

俺はこれでもかというほど頭を下げた。


***


「ステラさん、突然どうしたんですか?」

惺が聞いてくる。


ブレイブ・アサルト・コーチには、俺とシャル、グレースが乗り込み、惺と迅が残り。


ロイヤル・レディース・コーチにはマリア、エテルナ、アリス、紫、煌となっている。マキシと氷河流は御者だ。

マキシの御者率が高いのは本人の希望だ。

(すぐ剣を抜くから丁度いい)


「いえ、同じパーティです交流は多いほうが良いかと思いまして」


「やっと俺のものになる気になったか?大聖女」


「フゥゥーーーー!」

シャルが迅を威嚇する。


(しかし、何故そう思えるかな?)


「迅様も、ハイライト王国での活躍ありがとうございました」

俺は微笑んで迅を見る。

「フッ当然だ」

と言いつつ迅は俺から視線を外した。

(ん?)


んーーーー


「迅様カッコ良かったですよ」


「と、当然だ」


目を瞑って鼻をヒクヒクさせている…

(んん?)


手を握ってみる、ビクッとすると、直ぐに手を引っ込めやがった…

(ほほー)


そう言えば、紫ちゃん曰くお嫁に行けなくなる快感だっけ?


「ステラ何してるの」

(痛った)

シャルに抓られた。


「ステラ殿…」

俺の行動を不思議がって黙っていたグレースが躊躇しながら口を開いた。


一抹の不安が過ぎる。


「本当は話してはならないと厳命されているのですが…」


「はい」

俺は居住まいを正す。


グレースの視線が上下に忙しなく動いている。


「実は帝国の勇者…」


お読みいただき有難う御座います。

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