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第58話:この世の者なのか?

「本当は私も一緒に行きたいのです」

リアナ王女が泣いて別れを惜しんでくれている。

「リアナさん、この国を立て直すのが貴方の役目ですよ」

「はい…」


「私も、一緒に行きたいのですが」

ちっちゃな聖女候補が俺の手を握り続けている。

「アテナ王女、貴方は必ず聖女になります。先ずは教育を受けてください」

(それはそれでどうかとも思うが)

「必ず追いかけます、その時は一緒に戦わせて下さい」

「お待ちしています」


ハイライト王国とのお別れだ。


王族が総出で俺たちを見送ってくれている。

それだけ大きな事件だったのだ。

爪痕も大きく暫くは経済も滞るかも知れない、頑張ってほしい。


王都の人たちも、遠巻きに俺たちを見に来ていた。

「ありがとう」

「ありがとうございました」

王都の人たちからも感謝の声が上がっている。


シャルが感極まったようで、涙を流してしまった。

俺はシャルの頭を肩に引き寄せて上げる。


「それでは、ハイライト王国の方々。私たちは次の目的地に向かいます。何かあった時はまた駆けつけます。みなさん頑張って下さい」


俺は朗々とそう言うと頭を下げ、ロイヤル・レディース・コーチに乗り込む。

他の皆も手を振って乗り込む。

男性陣はブレイブ・アサルト・コーチだ。

歓声がいつまでもいつまでも木霊する。


こうして俺たちは、ハイライト王国を出立した。

(まあ、懸念点がないわけでもないが、大丈夫だろう)

魔族の狙撃事件。あれは完全に俺をターゲットにしていたのだから。


「大聖女ステラフィール殿」

王都の城門を出たところで声を掛けられる。


「はい、グレース皇女」

昨日の葬儀の後に訪れられた、帝国の聖女王女であるグレース皇女。

レディース・コーチに一人同乗されている。


「拙者このたび、教会より同道せよと申し使ったでござる」

(せっしゃ?ござる?)

女の子が?


というところまで聞いたところで昨日は終わっている。


聖女王女は外交官の役目も果たす場合があり。他国が集まる葬儀や式典は時間が限られている場合が多い。

マリアやシャルは大使など代わりもいるため葬儀前に済ませたみたいだが、帝国は大使や領事を置く国も少ないためこういう機会のときは大変らしい。


「呉越同舟、かたじけなく思います」

(呉越同舟、かたじけない?)

いや、そもそも呉越同舟は使い方違うだろ…


「いえ、こちらこそ、帝国に詳しい皇女殿下が一緒なのは心強いです」

(帝国に入った瞬間に掴まる心配もなくなる)


「グレース皇女は私たちの目的はご存じなのでしょうか?」


「大司教殿よりの御連絡、すでに承っておるでござる。

帝国へ赴き、帝国の勇者殿と共に刃を交えたい――そのような御意向にて相違なきでござろうな」

(えええ…なんでこんな言葉遣いなの?)

俺はマリアとシャルを見る。


首を振られた…デフォルトではないという事か?

この皇女だけの話しなのかな。


「あ、あの皇女様?失礼ですがその話され方は?」


「む、何かおかしい所でも?」

(いやおかしいだろう)

とは、流石に言えないよな…


ここはギルド受付嬢に対応して貰えば…

一瞬アリスを見るが、思いとどまって視線を流す。

アリスは残念職員だった。


アリスに笑顔を向けられた、く、黙ってれば可愛いのに。


商人っぽいエテルナ…でもないよな。

エテルナに笑顔を向けられた、く、黙ってれば可愛いのに。


紫ちゃんは?

寝てた…

――疲れたんだね。


結局俺か!


「いえ、お聞きになっている通りです。

勇者が各国に別れていれば各個撃破される可能性があります、戦力を結集する必要があると思っています」


「拙者としては賛同いたすところにござるが、本国がいかなる裁断を下すかまでは、さすがに計りかねるでござる。

帝国までの道中の案内であれば、どうぞ拙者にお任せくだされ」

(意味は分かるけど、一瞬思考が止まるよこの話され方)


「あ、ありがとうございます」


「………」


「……」


「…」


く、空気が重い

周りを見渡す。

(ちくしょう、俺と皇女以外みんな寝ちゃったじゃないか!)

マンツーマンの圧迫面接のようだ。


「大聖女殿」


「はい」


「そなたは、この世の者なのか?」


「え?」


「その神聖性、魔力、美貌…人の域を超えてはおらぬか?」

(ナニソレ)


「人ですよ。地を這い、血の流れる、神の信徒です」

俺は意図が掴めず首を傾げながら答える。


「祈祷が終わり、光に包まれた折――

そなたの背後に、まこと神影を見たような気が致したでござる」


「すみません、私もあの演出には驚いていたくらいでして、何が起こっていたのかも…」

(神様、何かしてたの?)

俺は上を見る。


「左様でござるか?大聖女殿には神がついておいでなのかのう」


「………」


「……」


(俺もどちらかと言うと根はコミュ障寄りなんだぞ、間が持たん)

取り敢えずニコニコしておこう。


「皇女殿下はどこにおいでだったんですか?」


「TPOさえ心得頂ければ、拙者のことはグレースと呼んで下され」

(TPO?)


「では、私もステラとお呼び下さい。グレースさん」


「ステラ殿じゃな。承った」

そういってグレースは両手を膝に置きお辞儀した。

武将のように…


「拙者、次なる遠征地へ向かう折、ラフィール王国を経由いたした際にこの件を知り申した」

(葬儀の日数的にそれくらいが限界地だよね)


「その折、ラフィール王国の大使殿より葬儀参列の儀を仰せつかり、さらに大司教様より、ステラ殿と行動を共にせよとの御命令を受けた次第にござる。」

(なるほどね)


「遠路ありがとうございました」


「ステラ殿が感謝する話でもなかろう」


「ところで、その話され方は、勇者様より?」


「如何にも。勇者殿と同道するなら必要と申し使っている」

(どこのどいつだ、そんなこといったの)


「して、勇者殿はどこにおいでに?」


「グレースさんの横で寝てらっしゃる、紫さんがラフィールの勇者です。」


「おお、この御仁が」


ちなみにマキシ御者の下。現在7人がレディース・コーチに乗っている。

規格上六人乗りなので、ギュウギュウ詰めに近いが、元々ロイヤル仕様。10代の女の子だと8人くらいは余裕だ。

でも、この先これ以上増えたらどうしよう。

俺があっちに乗ってもいいけど、アイツラの理性に期待できんしな。

(というか俺なら、ステラが横にいたら舞い上がるよな)


「それと、もう一台のコーチに、男性の勇者が四人乗っておられます」


「四人も…五人の勇者が揃っているわけでござるか……」


「それに帝国の勇者をお加え頂ければ…」


グレースは頷く。


「まこと壮観にござる。加えて大聖女までおわすとなれば、なおのことでござろう。」

グレースは、言葉と抑揚は喜んでいるのに、表情が暗くなった。


「どうされました?」


「いえ、なんでもないでぃ…痛てぃ」

(あ、舌噛んだな、目の端に涙が…)


「グレースさん、ここの勇者はござるではないので、もし無理にその話し方をされているなら、普通にお戻し下さい」


「えええ、ござるじゃないんですか?」

 「そんな馬鹿なことが!」

  「お姉様が言ったことよ」

   「言いつけは守らないと」

  「でもでも、このままでは喋りづらいわ」

 「大聖女が良いって言ってくれてるんだから」

「いいのかしら?」


(こ、この娘、もしかして喋ると止まらないタイプ?)

もしかしてござるがギアスだった?


お読みいただき有難う御座います。

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― 新着の感想 ―
ゴザルって作っていたのか(´゜д゜`) 奏楽雅さんも頑張ってください(๑•̀ㅂ•́)و✧
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