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元勇者、転生聖女として俺を召喚し異世界救います。~惚れた大聖女に転生していました。中身は元勇者のおっさんですTS~  作者: 奏楽雅


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第51話:ハイライト王国

シャルチームは、氷河流の創り出したアイスロックのを防護壁として籠るしかなくなっていた。

その氷もガリガリと削られている状況で、内側に内側にと追加で氷を生成している。

扉の向こうでも相変わらず扉を叩く音と、呻き声が聞こえて来る…


「もう、倒しましょうシャルロット王女」


アリスが進言する。


「うん…」

シャルが決断しようとしたとき…


ラララ…

ラララ…


「何か聞こえる?」


ルルル…

ラララ…


「聖女の歌に似ている…」

「なんだこの歌は!」

軍務卿が吠える。


扉の向こうが静かになっていく?シャルたちはそう感じた。


「ギャザリン様の気配がなくなっている?」

軍務卿がキョロキョロしだすと。


扉が吹き飛んだ。

氷河流のアイスロックごと氷塊が粉々になり、マキシ王子と惺が飛び込んできた。


その後ろからは、聖女と思しき女性と少女が歌を唄いながら入ってくる。


その後ろ、扉の外は感染者が全て倒れていた。


「どういうこと?」

シャルたちは意味がわからない。


《ショックウェブ》

惺の声が木霊すると紫電が洗脳された人々の足下を駆け抜ける。


バタ、バタ、ドサ、バタ


声も出せず力を失い倒れていく。


「ディアナ様、無事でしたか!それにアテナ!」

リアナが聖女と思しき女性に声を掛ける。

「はい、リアナ様もご無事で」

「お姉さま」

アテナと言われた、ステラに助けられた賢い子はリアナに抱きついた。


◇◇◇


『くそ!何故だ!ほぼ成功してた作戦だったのに!』

維持できなくなったのか、化ける必要がなくなったのか黒い肌に、赤い目に戻った魔族。軍務卿が城の上で悪態をついていた。


「ギャザリンは。逃げましたよ」


『うるさい、人間風情が!』

後ろから近付いた俺に、魔族は振り向きもせずにそう云い放った。


「人間風情が勝ったつもりか!」

魔族の周囲が光ったかと思うと俺の立っていた位置が、爆ぜる、爆ぜる、爆ぜる。

致死量の爆発が連鎖した。


『ギャザリンに聞いてないのですか?』


俺は、魔族の背後でそう呟く。一瞬で背後に周ったのだ。


魔族は振り向きざま腕を振る、猛烈な風を裂く音がバフォと聞こえてくる。


勿論俺はそこにいない。


『き、貴様が大聖女か…』


え、あ、呼び名?呼び名?…俺は瞳を上下左右に動かし少し考え込む………


「そうです!」

『?』

眉根を寄せた俺に不審な顔をする魔族。

(呼ばせ方思いつかなかったんだよ!)


「洗脳した人たちを解放して頂けませんか?」


『き、貴様!』

「貴方から妙な電波が出てるみたいなんです…」

(エンジェル・イヤーは電波も拾う…)


『誰がいう事を聞くか!』


「そうですか、致し方ない…ですね」


魔族の筋肉が膨らみ見上げるほどのサイズとなり、背中から腕が生えて来た。


質量保存の法則を無視している…



質量保存の法則、一グラムの金を畳一畳にしても質量は変わらないという学校で教わるアレだけど。アインシュタインの質量とエネルギーの等価性によって質量が変わるって知ってるよね?

でも、100万ジュールで0.00000001gの変化だからね…

この大きさは…

まあいいや


魔族は俺をモグラたたきのモグラとでも思っているのかボコボコと拳を振り下ろしてくる。

その度に城の屋根に穴が開く。


(ちょ、ちょっとまてお前、被害が、被害が増える、俺のせいじゃないけど修理費)


俺はそれを走って、跳躍して、避ける。

そして城の一番高い尖塔の上に降りたつ。


魔族を見下ろす感じだ。


当然ハイライトの王都も、隅々までよく見える。

王城から逃げた人たち、街の人々全ての不安な、固唾をのむ視線を感じる。


綺麗な海だ、リゾート地でもあると言ってたっけ…

この問題が終わったら少し休みたいな…


あの遠くに見える軍列と立ち上っている炎はマリアたちか…劣勢だな。

反対にも軍列が見える…結構な数だけど…


俺は視線を魔族に戻す。


魔族はニヤリと笑うと、ゆっくりと此方に歩いてくる。


俺は深呼吸をすると手を合わせる。

《セイクリッド・ピラー》

俺は静かに、手を広げた。

俺を中心に光の輪が天を突く柱となって立ち上がる。


光の柱が同心円に広がっていく。


魔族に到達した光は蒼い炎で魔族を包み込む。

『な、なんだこれは!き、消えない消えない!』

魔族は通過した光に触れた部分から粒子になって空へと消えていく。

同時に、緑の光に包まれ怪我したもの、病の者は治していく。

城の中の者も同時に癒していく。


(今回は特大だ!)


柱の外縁は、王都を王都の外壁を超え、マリアの戦場まで向かっていく。


◇◇◇


「なんですか、これは」

ディアナが驚く。


「ステラ?」

城の上方向をみてシャルが呟く。


「大聖女様?」

アテナが手を合わせる。


「こんな、こんな、力が…」

アリスたちも驚く。


扉の外の、感染者たちの傷も癒えていくのが見えた。


◇◇◇


「マリアさん!もう魔力が尽きます…」

紫の風魔法が弱くなってきた。


それは迅も同じだった、今の迅は左側も右側にも同時にファイアウォールを構築している。

エテルナはこの世界の人間だ、既に魔力が切れていた。

女騎士たちも、既に体力の限界を超えていた。

マリアのバフや、ヒールによってなんとかもっている状態だった。


「ステラ、もうだめ!」


それを、見ていたハインケル将軍は、剣を抜いた。

「これ以上は、我慢できん!

我が敵は近衛騎士だ!」

「お供します!」

「由!」

近衛騎士に向き直ると。


その瞬間だった。号令を出していた近衛騎士が…

「あと少しだ。押し込め…ぇぇ…ぇ………」

まるでマリオネットの糸が切れたかのように、近衛騎士が声もなく倒れた。

目を見開いたままだ、それが全ての近衛騎士に起こった。


「何事だ!

いや、それより。

ハイランドの兵よ民よ剣を納めよ!

攻撃を辞めるんだ。」


そのとき、光の壁が戦場を通過していった。


怪我したもの、病を持ったものは如実に変化がもたらされた。


怪我したものの傷が塞がり、咳き込んでいた者の咳がとまる。

近衛騎士に斬られた男の指がピクリと動く…



「これは?」

紫が驚く。


「大聖女…ステラフィールの力」

マリアが城の方を見る。


「これが、これが大聖女…」

エテルナが四つん這いになって城へ向き直った。


大聖女、その力を見た者は少ない。

だが、見たことがあるものは、その力に敬意を示さずにはいられない。


たとえ、いつもはあんなでも。


◇◇◇


洗脳されていたものは、魔族が消滅したことにより、一部洗脳深度が高かったものが治療を要したが、元に戻れた。


感染患者は。聖女の歌。魔力を乗せた聖女の声と歌で特殊な周波数を発生させることで、種子をアポトーシスに導き、自死させることで救うことができた。

(今回、ディアナとアテナにやってもらったのがそれだ)


ただ、既に亡くなった者には打つ手はなかった…


あと、どこにも居なかった、第二王子。彼は軍務卿の命令で、騎士団に従軍して地方に飛ばされていた。そこで命令する騎士団長の異常に気付いたそうだ。同じ不信を持った騎士と共に騎士団を掌握し、全国を周って他の騎士団を制圧していたという。民の家族には被害者がでなかったそうだ。

(最後に見た、マリアと反対方向の軍列が、第二王子の軍列だった…よくやった)


第一王妃アヴリル・ハイライト、軍務卿は地下牢獄で発見された。

(魔族のなり代わりはいつもそうだ!)

俺は一人あとで泣いた。


こうして、一応のハイライト王国事件は終結した。


お読みいただき有難う御座います。

少しでも面白いと思っていただけたら、どうか★をお願いいたします。

作者が折れないため是非ご協力ください。

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