第50話:ステラチーム?
聖女系の魔法が効かない。
「貴方のために用意したのよ」
(い、いや別に倒そうと思えば倒せるんだけど…)
今後、他の聖女の前にこいつらが現れた場合の対処を考えないといけないんだ…
下手すると戦場が瓦解する。
「私を知ってるの?」
死体から逃げるために側転、バク転、不規則な軌道をしながら俺はアヴリルに聞く。
腕を組みながら、死体から逃げる俺をアヴリルは面白そうに見ている。
「貴方のせいで、何度も計画が邪魔されたわ」
(…そ、それは知ったことじゃない)
セイクリッド・ピラーも魔にしか効かない、元より俺に使えても聖女には魔力不足で使えない魔法だから意味がない。
そんな事を考えていたせいか…
一瞬の隙が生まれ、死体に後ろから抱きつかれてしまう。
(うわ!ヤダヤダヤダ気持ち悪!)
「離れろ!」
普通なら振りほどける俺だが、脊髄反射で嫌悪感が先にくると、筋肉が拒絶反応を起こして力が入らない。
他の死体の口腔が俺の首に迫る。仮面とマフラーが解け落ちる…
「何をやってるんだステラフィール!」
一陣の風が俺の横を通り過ぎる。
「マキシ王子!」
俺は、死体の羽交い絞めから解放されていた。
死体だったものは、サイコロ状に刻まれていた。
(なにこれ、マキシもいい加減チートキャラだな…
ん、あれ?)
目についたサイコロ…
俺は死体の残骸を調べた…
《ブラスト》
惺の声も聞こえる。
死体が強風で吹き飛ばされているのが見える。
「ステラさん!大丈夫ですか?」
「ありがとう、お二人とも、助かりました」
マキシが頷く。
「すみません、ここをお願いします」
そう言って
「え、ステラさん!」
俺は声をかける惺に振り返る。
「ここにいるのは全て死者です…
追悼して上げてください」
「え…」
惺が俺の言葉にキョトンとする。
惺が殺すわけではないと、死者に慈悲を与えてくれと願っての言葉を俺は残す。
***
俺はどこに向かっているかと言うと、マキシが現れた時点で逃げたアヴリルを追っている。
牢獄を出て、中庭に出る。
アヴリルはそこで俺を待っていた。
「まさか、またこんな終わり方をするなんてね…」
空を見上げ気落ちした風情だ。
「でも、計画は失敗したけど、ここでの実験は成功よ」
「いや…そうはいかない」
俺の言葉に訝しい表情をアヴリルは向けた。
『強がっても無駄よ、今回の方法は全ての国や街、戦場で有効よ。内部から崩壊するが良いわ』
そういうとアヴリルは変身を解いた。
黒い肌に赤い目、輪郭も雰囲気も変わる。
ああ、こいつか。メリージェーンを殺し、俺が大聖女になるきっかけとなった魔族の襲来の指揮官。第一位階魔官ギャザリン。
「寄生生物の事?」
ギャザリンは此方を見下し笑っている。
「トキソプラズマというネコ科の動物を最終宿主とする細胞内寄生原虫がいます」
『?』
俺の言い出したことに、ギャザリンは何のことかわからない。
「こいつは鼠に感染し、ネコへの警戒感を失わせて、宿主を猫に捕食させて寄生先を移動します」
『何を言っている?』
「エメラルドゴキブリバチはゴキブリの脳に毒を注入し意志を奪って、ハチの巣穴へと誘導します。
他にもテントウハラボソコマユバチやクモヒメバチなど宿主を操る生物がいます」
(シャルが泣き出しそうな奴らだ)
だが今回は黒い木だ…
「植物はミツバチに密と花粉をトレードオフで運ばせます。
だけど、洞窟の黒い木は経口で花粉大の種子を人に寄生させようですね」
ギャザリンの顔が、黒いので青くはならないが眼は見開いている。
「宿主の脳を毒で支配して種子を運ばせ、宿主と他の生物も巻き添えに栄養源として育つ、冬虫夏草のような奴だとすると説明がつきます」
俺は《エンジェル・イヤー》で脳で種子が蠢くのを知覚した…溶かして成長しているようだった…
「当然、植物の生存に関するものなので、魔やウィルス、細菌に反応する聖なる魔法は効果がなかった。しかも、恐ろしいことに宿主が死んでもその体に根を張り動き回るとは…」
『貴様!』
ギャザリンの顔が怒りに歪む。
『だ、だがそれがわかってもどうにもなるまい』
「そうでもないですよ」
『なんだと』
《インフィニット・ホーリー・ブリト》
先手必勝!俺はガトリングを彷彿とする高速射出された聖なる無限の弾丸を、ギャザリンに撃ち込む。
ギャザリンは後方に跳躍しそのまま、空へと飛翔する。
聖なる弾丸はそれを追って城壁や城を削り破壊を撒き散らす。壁が崩れ塔が倒壊する。
『また、会いましょう。ホーリーエンジェル!』
ギャザリンはそう言い残すと、靄のように姿を消した。
「ちっ…」
俺は、舌打ちすると、即座に踵を返し城内に戻った。
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