第40話:俺の記憶にないんだ…
俺はステラフィールになってから初めて無力感に苛まれた…
勇者時代後半からステラフィールに生まれ変わり現在まで(日本に戻っていた時代は除いて)、何でも出来ると思っていた。
それだけの力があったし、知識もあった。
(だけど…)
悔しい…
そして、薄々思っていたことだが、俺が辿った歴史と、異なっているんだ。
最初は俺こんなこと言ったっけみたいな惺の発言から始まり。違いがあるけど、結果が同じだし、ステラの視点だから、まあ、そういうこともあるかな?とか考えていたんだが…
実は、ハイライト王国の話は俺の記憶にないんだ…
視点の話どころではない…
「どうしたのステラ?」
「ごめん」
「ステラ悪いけど病人は救えないわよ」
マリアは正しい。正しい現状分析だ。
「そうです。それに、元気になったらラフィールに攻めてくる人たちですよ」
エテルナも正しい。
「わ、わかってます…」
優先順位は王国の中枢を正し。戦争を回避すること…
俺は惺を見る。
「ステラ。どうしたの?」
俺は惺に向かって、歩く。
「…どうしました?ステラさん」
俺は一瞬躊躇するが、惺の手をとる。
「惺さん、お願いがあります」
惺はキョトンとする。
「なんですか?」
「病気の人たちを出来るだけでいいので治して回って頂けませんか」
「ステラ!何言ってるの!」
マリアが俺の肩に手を掛けて引っ張る。
しかしその手が止まる。
俺は、悔しさと情けなさで泣いているようだ。
でも、構わない。
「私の偽善です。でも助けられる人は助けたい…惺さんお願いします」
「でも、僕は回復魔法なんて使えませんよ」
「惺さんは聖属性をお持ちですから、回復魔法が使えます」
(俺なんだから)
「でも…」
「お教えします…ダメでしょうか?」
「ステラ、勇者を一人でここに置いてくなんて駄目よ、絶対駄目」
「なら俺が、勇者の護衛をしよう」
アリスが聖女服の何処に隠していたのか短刀を抜いて俺の前に立つ。
Sランク。なるほど流石の動きだ。
「アリスさん、大丈夫です」
「お兄様」
護衛をかって出てくれたのは、マキシ王子だった。
「ステラ。泣いているのか?」
「何でもありません。大丈夫です。
お早いお帰り助かります。本当にご苦労さまでした」
「父には全て伝えてきた。内乱に備えて調査に入ることになった」
「ありがとうございます。ただ状況がより深刻になっています」
俺は視線を落とす…
「そうか…」
「ステラさんわかりました、僕やります、回復魔法を教えてください」
俺は、マリアを見る。
「わかったわよ、私だって助けたい気持は一緒なんだから」
マリアはそう言って、コーチに戻ってしまった。
(ごめんマリア)
***
惺とマキシ王子をその場に残して、馬を走らせる。
王都へ入った時には既に陽が暮れるところだった。
門は日没と共に閉められるのでギリギリということだ。
街は、年齢も服装もバラバラだが、性別は男ばかり。それが街中に溢れ返っていた。
「うっわー」
これには、女性陣だけでなく、男性陣も引いた。
馬とコーチは門の近くの馬屋に預けることになった。とても街中を走らせられる状況ではなかった。
そして、今は徒歩で途方に暮れている。
宿屋が空いてないのだ…
「まあ、当然よね」
マリアが、宿屋に入るたびに断られて出てくるを繰り返している。
「教会に行ってみましょう」
「うっわ、ここもだー」
エテルナが死にそうな顔をする。
男が多いとどうしても、女性の俺たちに視線が集まる。
ちなみに、リアナがいるため、頭にウィンプルを顔にベールを着用している。
見た目よく知る修道女、シスターっぽい感じになっている。
「私、余り男性の免疫ないんですよ…皆さんは大丈夫なんですか?」
「聖女は従軍するので、軍は男性が多いでしょ、だから…」
エテルナの悲鳴にマリアが答える。
「私も冒険者だったし、ギルドには男性が多いから」
「あ、私も学校はずっと共学なんで」
「私も、城では近衛や騎士など男が多いので…」
エテルナが一番免疫がないことがわかった。
「「「「「「「でも、ちょっとこれは多すぎて嫌!」」」」」」」
女性陣の叫びに、勇者男性陣がちょっとへこんだ。
教会も溢れかえっていたが、聖女ということで宿坊の使用を許可してくれた。
「アリスさん、城の調査をお願いして本当に大丈夫ですか?」
「任せてください」
「城には魔族がいるかも知れません、十分注意してください」
「わかりました」
アリスは一瞬で姿を消した。
「行って来ます」
声だけ残して。
さて。
「マリア、私も少し出てきます」
「え!どこに行くつもり?」
俺は城の方を見つめていた。
お読みいただき有難う御座います。
少しでも面白いと思っていただけたら、どうか★をお願いいたします。
作者が折れないため是非ご協力ください。




