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元勇者、転生聖女として俺を召喚し異世界救います。~惚れた大聖女に転生していました。中身は元勇者のおっさんですTS~  作者: 奏楽雅


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第39話:茜の王都

俺は話を続ける。


「ハイライト王国は戦争を仕掛ける。でも負けることを既定事項にしているとします。

だけど、ラフィール王国はそれでも戦力を振り向けなければいけない…」


「戦力?今はどの国も魔王軍との戦いでカツンカツンよ?」

シャルの言うとおりだ。


「魔王軍との戦場からハイライト王国に対する戦力を連れてきたとしたら?」


「戦線が崩れるじゃない!」


「じゃあ、ハイライト王国の進軍を放置する?」


「ダメよそんなの!」シャルが叫ぶ。


「そう、ハイライト王国の位置からして、ラフィール王国の存亡に関わる問題となる。だから、ラフィール王国はハイライト王国に対応しなければならなりません」


「戦線はどうなるんだ…」

氷河流が珍しく聞いてくる。


「その辺は陛下と軍務卿や側近で話し合われるでしょうけど…戦線を下げたり瓦解したり…」


「人類全体の危機に繋がると…

そういうことなのね…」

マリアが天を仰いだ。


「それに、人間同士が争う事など想定していませんからね…ラフィール王国にしても対応は遅れるかもしれませんよ」

エテルナが腕組みをしている指がトントン苛立たし気に二の腕を叩く。


「わわわ、私この話聞いてていいのかな?」

アリスがキョロキョロしている。


「ステラ、この話しの信憑性は?」


「あくまで私の想像だけど…

この件、魔族が関わってる気がしない?」


「……」

みんなもリアナから話を聞いた時点で思っていたことだろう。


一部の魔族は俺が聖女になったころから、ゲームを楽しんでいる風情の奴らがいる。そんな気がしてならない…


「そうね、そうね、そう考えて動きましょう」


「ステラさん。父は、王はどうなってると思いますか?」

リアナが聖女服の胸元をギュッと握りしめ聞いてくる。


「洗脳されている、身代わりになっている…そういう可能性もありますが…今はなんとも。ごめんなさい」


リアナはゆっくりと項垂れた。


「たぶん時間が思っていたよりありません。明朝ここを発って急いで王都に向かいましょう」


シャルがリアナの肩に手を置いて慰めているのが見えた。

今後は時間との勝負だ。


***


翌朝俺たちは教会の司祭に礼を言うと、町を後にした。


駆歩、常歩、速歩を合わせ、速度と距離を稼ぐ。

自動車社会に慣れていると、馬には可哀想だが、お前ら不便という感想になる。

(ごめんよ。優雅に過ごすにはお前らだからな…)


「どうした、大聖女。馬と話ができるのか?」

迅に声を掛けられる。

「そういうわけでは…」


今日は迅と俺が御者台に座っている。

ロイヤル・レディース・コーチは六人乗りなのだ。


「お前は顔だけでなく頭も良いんだな、先の先を見通す」

(顔だけは余計だ)


「ありがとうございます」

「聞いていいか?」

なんだろう迅がまともに話している。


「俺たちは、この国で人と戦う事になるのか?」

(あー)

「そうならないために、動こうと思っています…

ですが…」

絶対無いとは言い切れない。


「そうか、まあいい、お前を信じる上手くやってくれ」

「はい…」

なんだろう、「けっ」って言わない…まさかこいつ魔族か?


「なんだその目は」

「いえ、本物の迅様かどうか怪しくて…」

「はぁ!?」

「なんでもないです」

「けっ」

(あ、本物だ)


***


空が茜色に染まるころ、白亜の王城と城塞を見ることが出来た。


街道は王都に近づくにつれ、人々の行列が形成されるようになっていた。


「どんだけ、人がいるんだ…」

迅が言葉を詰まらせる。


南から西から、見えないが北からも、声もなく歩いていく数多の人々の姿…


「まるで、赤く染まった王都に喰われているかのようですね」



「あ、迅様止まって下さい」

「何事だ?」

迅が手綱を引き馬が止まると、俺は御者台から飛び降りる。


街道脇に蹲る男を見かけたのだ。


「どうしました?大丈夫ですか?」

「聖女様…ゲホッゲホッ」


「父ちゃん病気なのに、招集を受けてここまで来たけど…」横で心配そうにしている男の子がそう言ってきた。


俺は、男の様子を観察する。

「聖女様?」

男の子が心配そうに俺の顔を見てくる。


俺は男の服を脱がせると、胸に耳を付けた。

「大きく息を吸って吐いて下さい」

直接聴診だ。


「ステラどうしたの?」

マリアたちもコーチから降りて不思議そうにする。


「水泡音がします、労咳、肺結核です」

「えーそんな人までこの行列にいるの?」

シャルが驚いて後ずさる。


《ヒール》俺の呪文に男が淡い緑の光に包まれる。穏やかな表情になっていく。

「あああ、苦しいのが取れていく…

あ、ありがとう。ありがとう」


「張り紙が貼られていて、来なければ家族まで罪人にされると書いてあったから…無理を押して来たんだ」

男の子が俺に感謝するとそう訴えた。


「ごめんなさい、ごめんなさい」

リアナが膝から崩れた。


「この人と同じような人や、もっと重篤な病気の人もこの行列にいるかも知れない…」

俺は周りを見渡す。


よく見ると街道の影に、似たように進めなくなっている人がいるのがわかった…


一発デカい回復魔法を放つことも出来る…

でもそれは出来ない、気付かれてしまう。

しかし、聖女が三人でどうこうできる人数でもない…

時間もない。


流石に救いきれない…


お読みいただき有難う御座います。

少しでも面白いと思っていただけたら、どうか★をお願いいたします。

作者が折れないため是非ご協力ください。

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