第33話:王女グロリアーナ
俺は銀鎧と同じように倒れ気を失っている白鎧の騎士に近寄った。
「ん?」
この人…
ヘルメットを外すと
「あら、綺麗」
サラサラの銀髪美少女だった…
微妙に距離があったせいか、100万ジュールキックの影響はなさそうだが、矢傷や剣による傷を追っている。鎧の中が血だらけだ…
「ち、致命傷じゃないの!」
《エクストラヒール》
黄緑の光が、銀髪美少女を包み込む。
「これで傷は塞がるが…結構血を流しているみたいだから休ませないといけない…」
首に手を当てて脈をみると弱々しい。
「ステラフィール」
王子が声を掛けてきた。
「あちらは?」
返り血の跡が一つもない王子が首を振る。
「そうですか…
では、この娘が白鎧最後の生き残りですね」
「それより、このクレーターは何だ?」
直径5メートル、深さ2メートルのクレーターを指さしている。クレーター内はプラズマが発生たせいで黒く焼かれ、月明りの中では地獄への入口のように見える。
「え、あ、う…そ、それより、この娘を運ばないと」
「う、うむ、この銀鎧はどうする?息があるみたいだが、止めを刺しておくか?」
(あ、生きてたんだ…)
「情報を引き出しましょう」
***
「な、な、な、な、な、何ですかこのクレーターは、街道にこんな大穴開けて!インフラが、修繕費が!」
ほどなくして、コーチで追いかけてきてくれたみんなだが、着くやいなやエテルナ嬢がいきなり叫び始めた。
メモ帳と、そろばんを出して計算を始めると…
「土砂の埋め戻しと転圧、工事期間中の交通規制、それに伴う輸送コストの増大、納期の遅延、商品劣化、廃棄ロス、商品不着による周辺経済における価格上昇などの波及ダメージ…
数千万から数億規模の経済的損失だわ!」
(ああ、やっぱりそういう系の人材なのね、エテルナ嬢)
「だれですか!こんなことしたの!請求してやる!」
「!!!!」
俺はビクッとすると身体が硬直した。嫌な汗がダラダラと出て背中を伝う…
「ん?どうされました大聖女様」
俺は首を高速で振るしかなかった。
「ステラ!グロリアーナ王女が目覚めたわ!」
マリアがコーチから顔を出した。
マリアとシャルロットは、白鎧の娘を見ると、ハイライト王国王女グロリアーナだと教えてくれた。流石王女ズだ。
俺はエテルナ嬢と共にコーチに入った。
***
「大聖女様。助けて頂き、感謝いたします」
グロリアーナ王女は、横になったまま俺に感謝を述べた。
「傷は治療いたしましたが、失った血までは戻っていません、安静にしてください」
俺は微笑みを湛え、王女の額に手を置く《アナルジィーシク》痛み止めの魔法。傷は治っても身体が痛みを覚えているようだったので…
「いえ、どうか、どうかお聞きください」
「?」
「我が国、ハイライト王国が反乱により陥落してしまいます!」
「なんですって!」とマリア王女。
「なんで」シャルロットは両手で口を押さえている。
俺も意外だと思った、ハイライト王国は、ラフィール王国の隣国で、北部の半島にある国だ。善政を行う王の治世で安定していると聞いていた。
「突然でした。
城の出仕の貴族や騎士、使用人。身分も理由も前触れもなく隣人に危害を加え始めたのです」
「「「?」」」
「またたく間に、城に居た半分の人がそのような状態になり、誰が味方で誰が敵かもわからなくなってしまい」
(なにそれ怖い、まるで恐怖映画じゃん)
「ラフィール王国へ救援を求めるため、私と信頼できる近衛でやってまいりました」
「グロリアーナ王女を襲っていた騎士は、その反乱者ですか?」
「はい、そうだと思います。反乱貴族の命を受けているだけの可能性もありますが…私にはもう何がなんだかわかりません!」
グロリアーナ王女は興奮して息が上がり始めた。
《スリープ》
俺は眠りの魔法を放つ。グロリアーナ王女は、何か訴えようとしたが、俺を見つめて寝むりについた。
「ステラ何を!」
「彼女は混乱の中です、体力的にも精神的にも休ませたほうが良いと判断しました」
「…そうね」
「表の銀鎧の騎士の話を聞こうと思います」
***
コーチから外に出ると、男性陣が街道脇に埋葬用の穴を掘ってくれていた。
黙々とシャベルを動かしている。
「ステラちゃん。なんで僕じゃないんだ!」
「ステラさん。くそー忘れられない!」
「ケーッ、ケーッ、ケーッ!」
黙々じゃないし、なんか鬼気迫る力を込めて掘っていらっしゃる…
銀鎧は、それぞれ離れた木に縛られていた。
《ウェイク》俺は覚醒の魔法を唱える。
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