第31話:ステラ争奪戦再び
俺たちは、国王や大臣に見送られ、王都を旅立った。
目的地は帝国、隣国とはいえ、帝国は広大だし、なにより自国のラフィール王国が馬鹿みたいに広い。
長旅になるのは間違いない。
(特別手当も付かないのに…)
尚、王都の民には伝えてはいない。
勇者と大聖女が同時に居なくなるなどパニック案件になってしまう。
(それに、今はどこに魔族が忍び込んでいるかわからない、大っぴらにするのは防衛上好ましくない。これは、特殊部隊の極秘任務なのだ)
王に用意して貰った四頭立ての六人乗り馬車二台。
その一台目のロイヤル・レディース・コーチの中、向かい合わせの前席にマリア、俺、シャルロット。
後席に紫、エテルナ。
御者に氷河流。
二台目のブレイブ・アサルト・コーチの中にはマキシミリアンと煌、迅が入り、惺が御者を引き受けている。
「エテルナさん。同行ありがとうございます」
「いえ、勇者様や聖女様と同行できて光栄です」
10人目のメンバー。エテルナ嬢は、ブロンズの毛を二つ結びにしている、可愛い系の財務卿のご令嬢で、宮廷魔導師ソフィーテア様のお弟子さんだ。
旅行中の各種折衝や、マネジメントを担当してくださるとのことで。財務卿が無理やり加えて来られた方だ。
「それより、これは、どうなされたのですか?」
エテルナ嬢が目を丸くして俺を見る。
マリアとシャルロットが俺の腕にしがみついてしなだれ掛かかっている。
マキシミリアン王子の婚約発言以来こんな感じだ。
女の子にしがみつかれるのは、問題ない、ないったらない。
(でも、寂しい気もするんだ、今の俺は女の子だからね)
「ゆ、百合だわ。聖女には多いって聞いてたけど…どうしましょう…」
(小声でも、聞こえてますよ、別に百合ではないし。
マリアはどうも面白がっている風情だしね)
それはまあ良い。問題なのが、男性勇者陣がギスギスしていて、俺と顔を合わせると避けるようになってしまったことだ。
(あれほど一緒に戦ったのに、目を合わせてくれないんだ)
既にパーティとして、破綻している?
(俺のせいなのか?)
ああ、ちなみに紫は、メモを取ったり、この輪に入ったり色々している。ニコニコして楽しそうだ。
***
太陽が赤くなると、川の辺りで野営の準備だ。
「良かったのですか、街の宿屋でなくて」
エテルナ嬢が聞いてきた。
「たぶん、他の宿泊客がいると、十人は泊まりづらい人数ですよ」
町や村で泊っても良いのだが、十人というのは宿泊施設のキャパシティ的に一か所に泊りづらい人数なのだ。
「それに…私たちの身なりを、他の宿泊客に見られるのは、いらぬ騒動の種になりかねません」
また、このパーティーの構成が、王族三人、貴族二名、勇者5名である。下手な宿に泊まるなら、防犯上でも野宿した方が結果的に安全という良く解らない状況なのだ。
なので宿のしっかりした街は良いけど、町や村での宿泊はパスだ。
夕食の支度は、王女だろうが貴族令嬢だろうが、問答無用に仕込まれる聖女の役目だ…
(納得したことは一度もない!)
俺は周りを見渡す。
(けど、このメンバーだと仕方がない)
紫は惺にとって幼馴染キャラだが、料理ができない。紫が造った家庭科時間の料理によって7台も救急車が来たくらいだ。
(よくニュースにならなかったものだと今更ながらに思う)
エテルナ嬢に聞いたら、やってみたいです。初めてなんで…と言われてしまった。
(いや、まあ、貴族だもんね。私もだけどさ)
焚き火を囲んで、具だくさんスープが振る舞われる。
「それでは皆さん頂きましょう」
「「「「ケッ」」」」
迅が増えていた。
「煌さん?」
「ステラちゃんが僕以外と婚約するなんて」
なんかワナワナしている。
「迅さん?」
「婚約してたなんて、よくも俺を弄んだな!」
(なんなのそれ)
「フッ。お前らガキが俺の魅力にかなうわけないだろ」
(王子がなんか言い出した。お前のどこに魅力があるんだ?)
「大聖女様。ご婚約されたんですか?」
エテルナ嬢が首を傾げる。
「私は、婚約などしていませんよ…」
「で、でも」
「信じて下さい」
「そうよ、ステラは誰にも、渡したりしないわ私のものなの」
「マリア王女、ステラを独り占めにはさせませんよ」
「フフフフ…」
「フフフフ…」
「あの食事が終わったら、王子から剣技をお教えいただ…」
「「「「ケッ」」」」
(どうしよう)
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