第30話:前途多難
「マキシ久しぶりだな」
王の書斎、王といつものように侍従が横に控えている。
その前に王子を城に連れ帰った、俺とシャルロット王女、マキシミリアン王子が立っていた。
「……」
王子の表情が暗いというか表情がない、完全に魂が抜けている。
「ど、どうしたのだ?」
「それが…最後に命より大事なものを失ったためにこのように」
王の問いに俺は答える。
「剣を失ったのか?無念だろうが宝物庫より好きなものを持って行くが良い」
「ち、違うんだ、そんなチンケなものを失ったわけじゃない」
(剣をチンケって、お前剣聖だろ?)
「お兄様!いつまでウジウジしてるんですか!」
「ヒッ、ヒィーーー」
王子はシャルロット王女から、俺の影に隠れてしまう。
どうも、フィギュアを壊されたことで、心的外傷いわゆるトラウマになってしまったみたいで、シャルロット王女を怖がるようになってしまった。
「…ス…テラ…一体何があった…?」
「はあ、なんと言いますか……どうしましょう?」
「私に聞き返してどうする?」
「ハァ〜〜〜」
一難去ってまた一難である。
***
まあ、なんだ帝国へ行く準備が整った。
(不安が増えた気がしないでもないが…)
帝国へ向かうメンバーは
勇者
惺、紫、迅、煌、氷河流
聖女
マリア王女、シャルロット王女、俺
剣聖
マキシミリアン王子
大所帯だ。
ポーターを付けて貰うより効率的ということで、移動には馬車と馬を用意して貰った。
(自衛できない人だと危険だからね)
***
「このお方は、マクシミリアン王子。蒼霜剣の剣聖です」
帝国に向かうメンバーに、会議室に集まって貰い、顔合わせを行なう。
「宜しく頼む」
「剣聖…」惺が声を漏らす。
「とてもお強いって事ですか?」と紫。
「物理では勇者よりお強いですよ」
「じゃあ俺たちは要らないのでは?」
惺が勇者を見渡す。
「勇者はそれに勝る総合力があります。魔王や魔神に抗することが出来るのは勇者だけです」
「なるほど」
「どうしても魔法寄りになる勇者の弱点を補って頂くためにも、重要な方です」
俺はそう言って勇者を見渡す。惺と紫は頷き、迅は聞こえない声で「けっ」と言っている。まあ、二年も居る煌や氷河流にはわかっていたことだから反応はない。
「それと。勇者には帝国への道中に剣技の指南をして頂きます」
「何故?」
煌が噛みついた。
「生存率を上げるためです」
煌と氷河流が訝しい顔をする。
「回避、防御、察知は経験や技術から育ちます」
マリアがウンウンと頷いている。
「敵の攻撃で瀕死か死か…
経験や技術によって、その僅かの差が生まれるのです」
俺は勇者を見渡す。
「生きていてさえいてくれれば。
マリア王女もシャルロット王女も、そして私も必ず健康な体に戻してみせます。
どうか生きて元の世界に戻ってください」
俺は両手を結んで懇願した。
(てへっ)
「「わかりました」」惺と紫。
「「わかった」」煌と氷河流。
「けっ」ぶれない迅。
わかってくれたみたいだ。
「マクシミリアン王子からも何かありますか?」
俺は王子に話を振る。
王子はコホンと咳払いをすると語りだした。
「一つだけ言っておく」
渋い声で一拍置き、みんなを見渡す。
誰かの唾を飲み込む音がした。
「大聖女ステラフィール」
(?)
「はい?」
「彼女は俺の婚約者だ手を出さないように」
「「何ー」」
惺、煌の声がハモり。
「何だとー!」
迅が机を叩き。
氷河流が茶を吹き出し。
「「「何ですって!」」」
マリア、シャルロット、紫が立ち上がり。
「兄様、何ですかそれは!」
バタンと扉が開いてエドリック王子が入って来た。
「何言ってるんですか!誰が婚約者ですか!」
俺も顔を真っ赤にして王子に詰め寄る。
「ステラは平和になったら結婚してくれると約束してくれたではないか?」
(う)
シャルロットが右手で顔を覆う。
「駄目です!ステラは渡しません」
マリアが俺に抱きつく。
それを見た、シャルロットも抱きついてきて、マキシミリアン王子にフゥッーー!と威嚇する。
(前途多難だ)
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