第29話:悩殺ポーズ
二階建ての家くらいの黒と紫の斑の鼠とマキシミリアン王子は戦っている。
後ろには、湖が見えていて、その先は観光地と王都へ続く平原だ。
(ここで食い止めないと)
何より。鼠っていうのがたちが悪い。
鼠は、病原菌を振りまき増殖速度が高い動物だ。それが魔物になった場合どうなるか考えたくもない…
シャルロット王女じゃないけど好きな奴なん…て…い………るね…
ネズミーなランドやトムキャットとジュリーとか鼠が好きな人がいたっけ…
まあ、あの国の人達はゾンビも好きだしなー
(致し方ない…)
俺は飛び跳ね攻撃してくる二メートルの子鼠の攻撃を躱しつつ、呪文を紡ぐ。
《グレートセイントウォール》
俺の叫びとともに、俺や王子と湖の間に横方向に長い長い光の壁を作り出す。オーロラが地上に降りて来たような幻想的な輝きを纏っている。
「なんだ、この巨大な光の壁は…」
王子も巨大鼠も、その他子鼠も一斉に動きを止めてしまう。
「王子。これで鼠は先に進めません」
「貴方がやったのか大聖女…」
「このくらい聖女なら誰でも出来ます」
「そ、そうなのか?」
俺の頭の中のシャルロット王女がブンブン頭を横に振っているが無視する。
(ん?王子の顔色が悪い?)
というか、王子の肌の見える部分が黒く、一部水疱のようにリンパ腺が腫れてないか?
(………)
それを見た俺は血の気が引いた。
(ヤバイヤバイヤバイヤバイ。黒死病やん)
《グレートピュリファイ》
急ぎ俺は浄化の魔法を唱える。
俺を中心に浄化の光が津波のように森へと駆け抜ける。
光が通り王子や木々、花や草に触れるたび光が瞬く。
光の通り過ぎた後は心なしか色づきが明るく変わったような気がする。
「お、おおお、これも貴方が?」
全ての病原菌を浄化し無効化と無害化するのだ王子を侵していた原因はなくなった。
(わかっていますよ、ちゃんと善玉菌は浄化対象外です)
俺は微笑みを返し、鼠を見る…
(あれ?なんか…鼠が苦しんでないか?)
子鼠がバタバタと倒れ始めた…
キュウキュウ切なそうな声を上げて事切れていく…
(うーん。あいつら自体が病原菌みたいなものなのかも…)
そうすると、残るは…
目の前の巨大鼠…
鼠の尻尾が振られ遠心力で木々をなぎ倒す、中には樹齢何十年とも思える木も含まれる。
俺は右から《ホーリーブリト》を間断なく射出し、王子は左から様々な技を繰り出している。
傷をつけるのがやっとだ、質が悪いのは大鼠の血が硫酸のような液体のようで、振りまかれると木も石も溶けるのだ。
王子の剣が溶けないのは、技量のなせる業なのだろう。
ヴヴォォオオオオオォォォオオン!
また、大鼠の尻尾だ。
移動して逃げるしかなく逃げた先で、俺の背に王子…剣聖が背を向けて立つ。
色々アレな人だが、こういう場面では心強い…気がする。
「マキシミリアン王子。貴方の剣は蒼霜、その速さで凍てつかせることが可能になる剣です。
今はまだ理があり至れませんが。私が力をお貸しします。頂きの力自身で見てきてください」
「どういう事だ?」
「最も早い技をお願いします」
俺は王子に向き直ると、王子の肩と剣に手を添える」
「願うは?」
俺は王子に問いかける。
「誰にも負けぬ剣…」
王子は素直に返してきた。
「想いは?」
「誰も失わない剣…」
「抱くは?」
「誰にも至れぬ剣…」
「全てを願い想い抱いて駆けて!」
「応!」
森が静まり返った、時が時を刻まない、運動を司る熱が消えた。
マキシミリアン王子は、掛け声の後、軌跡も残さず大鼠の反対側で剣を鞘に納め、結果だけを残した。
切り刻まれ凍り付いた、全長五メートルの鼠。
チン…
という鍔の音が、今届く…
***
その後、俺たちは魔素溜まりを見つけ、聖なる魔法で結界を張った。
王子は、一旦壊れた小屋に行きたいと申し出た。
人は住む場所に愛着をもつ、人との別れの寂しさと変わるものではない。
俺はそう思っている。
王子は壊れた小屋で、思い出の品を探しているようだ。
担ぎ袋に、大事そうにしまっている…
直接の原因は俺ではないが、彼の楽園を奪ってしまった気もしていて、心が締め付けられていた。
「もう宜しいのですか?」
「ありがとう、もういい」
歩いて来た王子は満足そうにそう言うと、背負い袋を担ぎ直そうとした。その時持ち手が切れてしまい落ちて中身が出てしまった。
「「「あ」」」
多数の木彫りのメリージェーンフィギュアが散乱した…
法衣は当然、スカート姿や、水着姿、悩殺ポーズ…
非常によくできている。これは俺も欲しいと思った。が…
シャルロット王女に全部踏み壊されてしまった。
(なんで…)
王子と俺はその場に崩れ落ちた…
お読みいただき有難う御座います。
少しでも面白いと思っていただけたら、どうか★をお願いいたします。
作者が折れないため是非ご協力ください。




