第28話:ネズミ駄目なの
《ヒール》
俺はぶっ倒れて目を回している、マキシミリアン王子に回復魔法を掛ける。
「マキシミリアン王子、起きて下さい」
揺すってみる…
「きゃぁ!」
しゃがんで覗き込んでたら、抱きついてきやがった!
「は、は、離れてーーっ!」
「兄様、な、なんて恐れ多い、離しなさいぃ!」
「メリージェーン、初めて会ったときから好きだったよ!」
人の腹で頭グリグリするなー!
(ん……メリージェーン様の夢か…そうだ!)
《インプリント》
「ステラ。何を?」
俺は、人差し指を口に当てて、シャルロット王女に見せる。
そして、王子の頭を撫でつつ…
「マキシミリアン、私もお慕いしておりました。この世界が平和になったら貴方のもとに…」
「ステラ……」シャルロット王女が引いている。
(ま、まあいい…いまはこっちだ)
「だから、貴方のその力を貸して下さい」
「…わかった、メリージェーン。お前のためなら、俺はこの力を、この世界のために役立てよう」
(おお!言ったね)
「だから、平和になったら、俺と、け、け、け、結婚してくれ!」
(…ん~~)
「わ、わかったわ、そ、その時が来たら…」
シャルロット王女の視線が突き刺さるー
《ウェイク》覚醒の呪文。
「は、俺は何を…」
「マキシミリアン王子、離して頂けますか?」
「…!ああ!こ、これはすまない」
パッと飛び退いてくれた。
王子は俺の顔を見つめると…
「俺は負けたのか?」
俺は頷く。
「え?ステラがお兄様、剣聖に?」
「剣では勝ってないけどね」
「?」
「約束はお覚えですね」
「グウゥゥゥ…わかっている
戦ってる時に言っていた、平和のためにというやつだろう…」
「はい、力をお貸し下さい」
王子は目を瞑ると、大きく頷いてくれた。
「メ、メリージェーンとの約束もある、一緒に行こう」
(おお、上手く刷り込みで記憶改竄できてる!)
「そして、平和になったら、大聖女。お前と結婚だ!」
「「…何ーーーーー!!」」
(なななな何でそうなる!)
「何言ってるんですか!お兄様。寝言は寝ていって下さい!」
シャルロット王女が俺の前で両手を広げて庇ってくれる。俺は隠れて何度も頷くしか出来なかった。
(あわわわ…何を間違えた?)
ズ、ズズズズシャーァァッ!
「何?」
突如。崩れた小屋が更に崩れてペシャンコになる。
「あー俺のスィートハウスが!!」
王子が絶叫…膝から崩れ落ちる。
同時に小石が跳ね始め、地面が揺れ、断続的な振動がどんどん大きくなる
こ、これは地震ではない。
「魔物の群れによる揺れです!」
俺は叫んだ、このままでは何処まで魔物が進むかわからない。何とかしないと…
「向かいますよ!」
俺が走り出すと、シャルロット王女、そしてマキシミリアン王子も付いてきてくれた。
(よし)
***
目の前を二メートルクラスの鼠に似た魔物が数十頭、森の中を縦横無尽に走り、王都の方に向かっていた。
「いやーーーーネズミー!」
王女が悲鳴を上げると、身体が竦んで手足に力が入らないみたいだ。腰からふにゃふにゃと座り込んでしまった。
(生理的恐怖心は不可抗力だねー)
脳が過剰な恐怖を処理できず、筋肉が硬直するか、逆に弛緩して力が入らなくなる症状で凍結反応というらしい…
「シャルロット王女はここにいて下さい」
「ごごごご、ごめんなさい。ネズミ駄目なの」
木を抱いて、涙を浮かべてしまった。
俺と、王子は頷きあって鼠の先頭まで走る。
王子のほうが断然早く、直ぐに見えなくなってしまった。
(法衣が走り辛いんです!)
我が儘ピンク法衣ではないが、動きやすいように何か考えようかな?
大体法衣とか、回復役だと敵に教えてるようなものだし、知能があれば先に狙うよな…うん、あとで考えよう。
王子は、鼠を追いかけつつ、バッタバッタと撫で斬りにしているみたいで。
森がスプラッター状態になっている。
シャルロット王女を置いてきて本当に良かった。
俺も走りながら《ホーリーブリト》を唱える。
空間から、聖なる弾が射出され、森を縫うように飛び回り鼠を襲う。
頭を吹き飛ばし、四肢を吹き飛ばし、胴を穿つ。
(森が秋でもないのに真っ赤に染まってしまった。また、何処かからかクレームがこないだろうな)
先頭なのか王子が戦っている場所に、やっと辿り着いた。
(おや?)
王子が苦戦しているようだ、それもそのはずか…見上げる高さの鼠だった。
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