第27話:隙あり!
「シャルロット王女。良いですか、良いっていうまで絶対に出てきたり、覗いたりしないでくださいね。でないと嫌いになちゃいますよ」
シャルロット王女はコクコクと首を縦に振ってくれた。
ドアが閉まる寸前に「約束守るから嫌いにならないでね」って言うのがとても可愛い。
朝日が差し、小鳥の鳴き声が耳にやさしい朝を知らせている。
崩れかけた小屋の前、少しだけ広場になっているところで俺とマキシミリアン王子は対峙した。
「さて、始めますか?」
俺は木の棒を持って、笑顔を向けて王子に言う。
「大聖女よもう一度聞く、本当に良いのか?」
王子も木の棒だ、だが剣聖の木の棒など、真剣と変わらないんじゃないかな?
「はい、手加減してくださっても、しなくても大丈夫ですよ。
聖女のお力お見せいたします」
俺はブンブンと木の棒を振りながら応える。
王子の目がスッと細くなる。
「参る!」
そう聞こえた時には、斬撃が振り下ろされていた。
対峙した距離は五メートルあったと思うが、一瞬で距離を詰め、振り下ろし迄行ったのだ。
(ありゃ本気だ)
俺はその斬撃を、半身で躱し、そのまま回転して王子を切り付けるが。王子は直ぐに元の間合いに戻っていた。
「なるほど…昨日俺に気づいていたのを不思議に思っていたんだ」
「大したことでは無いと思いますよ」
「大したことでないならこの世に凡人は居なくなるぞ」
「今度は此方からいきますね…」
俺も、先ほどの王子と同じことを行う。但し、二連撃で。
一瞬で詰めた俺の斬撃を、王子は避けた後、二撃目を木の棒で受けた。
王子は驚愕した表情だ。
「な!なぜ!我が剣を!」
俺は微笑みを絶やさない。
マキシミリアン王子は蒼霜の剣。その剣聖である。
俺は勇者の頃に習ったのだ。剣聖に、マキシミリアン王子に。
ただ、王子は寡黙で何も話してはくれなかった。
だから、俺は剣聖という事しか知らなかったし、気難しい人だろうという事しか分かっていなかった。
俺を召喚したステラフィールがどうやって、王子を連れてきたのかも、勇者の頃は知らない舞台裏の事だった。
王子の袈裟切りを躱し、俺の袈裟切りを王子が躱す。
上段切り同士が、つばぜり合いになる。
すれ違いの斬りつけは、斬りつけにならない。
斬撃を飛ばす技は、同じ技で相殺する。
王子の衣服に裂け目や斬れ目が走る。
「ばかな!」
「私の剣は王子の明日の剣です」
そう俺の剣は、王子と一緒に旅をして研鑽されていくこれからの剣。
「籠られていても、修行されていたのでしょ?
剣は貴方の全ての筈ですよ。
剣聖になれたのは、ただ剣を振ってるだけではなれません」
「う、うるさい。なんだ、なんなんだお前は」
「大聖女ですよ…そう、聖女メリージェーン様がなる筈だった」
「メリージェーン…」
「メリージェーン様の願いは何でしたか?」
王子が消えたかと思うと背後からの上段。俺は木の棒で受けると。同じように消えて王子の背後に付くと横に薙ぐ。王子は跳んで間合いをとる。
(とはいえ、体格と体力が違うから今の俺じゃあ負けないだろうけど、勝てないだろうな…)
「メリージェーン様の願った世界にするため、王子の力を貸してくれませんか?」
「メリージェーンはもう居ないんだろ。だったら今更だ。それにお前に勝てない剣聖に何ができる」
「王子の剣はまだ先があるという事です。私の剣の先が貴方の本当の剣なのですよ」
「信じられるか!」
(うーん、疑がり深いなー)
その時、ザァーーーザザーーーーーーーーーをいう音とともに森から鳥が飛び立ち、大地を揺らす大きな振動が起こった。
揺れは大きく、激しく、崩れかけた小屋がヤバイ!
「シャルー!逃げて!」
俺は、小屋へと走る。
それを見た王子が、俺に切りかかって来た。
「隙あり!」
「隙ありじゃねえだろ!」
俺は、バックステップするとジャンピングアッパーばりに王子の顎に掌底を叩き込む。
王子は数メートル先に吹っ飛んでいった。
(知らんわもう)
俺は、小屋のドアを開けて、律儀に言いつけを守っていたシャルロットの手を取ると外に連れ出した。
直後、豪華な崩れかけた小屋は、崩れた小屋になってしまった。
危機一発だった。
だが、危機はまだ去っていない、この揺れの元だ。
お読みいただき有難う御座います。
評価・ブックマーク・感想・レビューなどアクション頂けると励みになります。
よろしくお願いします。




