第26話:王族ニート
崩れかけた小屋、その中は…
広さは変わらないが、重厚な木張りの内装、しっかりした暖炉に、テーブルとソファー、装飾ベッドという豪華さだった。
お菓子や、ワインも完備しているようだった。
(ああ、流石王族ニート…)
実は、中に入れて貰えるまで一悶着あった。
マキシミリアン王子は、暗くなってきたこの森の中へ、俺たちを追い返そうとしたのだ。
(信じられるか?)
俺が、美少女ムーブでお願いすると、薪小屋を指さしやがった。
(信じられるか?)
仕方ないので、美少女ムーブの泣き真似で、渋々中に入れてもらえたのだ。
(なんてやつだ)
「この家に入ったのは、お前らが初めてだ」
テーブルを挟んで座ると、開口一番そう言った。
「は、はい、光栄です」
「先に言っておく、ここにある物には一切触れるな。触れれば斬る」手にしたままの剣の鍔を上げ鞘から刃を見せて凄んでくる。
(こ、怖わ!)
「ひっ…」
シャルロットがガタガタと震えてしまった…
この部屋は何処に居ても刃の届く、マキシミリアン王子のテリトリー。死界だろう。
(しかし、妹や、大聖女に言う言葉か?)
「質問宜しいでしょうか?」
「嫌だ!」
(…)
「ここに来たご説明を…」
「するな!」
(…)
俺はシャルロットと目を合わせる。
シャルロットの目が、もう良いから帰ろうよと言っていた。
(王に《コメットスター》ブチかましたくなってきた)
話も出来ないじゃないかこの王子。
「俺はもう休む。お前らはにはソファーを貸してやるからそこで寝ろ」
そう言って席を立つ。
「朝になったら帰…」
言いかけて俺の方を向く。
「そう言えば大聖女、お前俺のことに気づいていたな…」
シャルロット王女の手を引いて、直後マキシミリアンが現れたときの話しだ。
「はい」
隠してもしょうがない。
「ならば、外の気配。お前はもう気づいているのか?」
「先ほどから…」
「ステラ、何のこと話しているの?」
シャルロット王女が何の事だろうと聞いてくる。
「近くに魔物が居ます。複数」
「え、この森には居ない筈でしょ?」
「ああ、私も今まで見たことがない」
「昨日まで安全でも、今日は違うという事です。どこかに魔素溜まりが出来たのでしょう…」
「こんな所にできたら王都が危ないじゃない!」
「出来れば魔素溜まりを潰しておきたいですね」
シャルロット王女がウンウンと頷く。
「そうか…」
マキシミリアン王子はそう言うとベッドに潜り込んでしまった。
「宜しくたのむ…」
「はぁあ?」
ヤバイ流石に、地の言い方が出てしまった。ってか、しかたないだろ。
「マキシミリアン王子は来て頂けないのですか?」
「なんで?」
(え、ええぇ?)
「あ、あれ?いや、ちょっと、えー、いくら何でも、えー」
「お兄様、いくら何でも、この近くの話ですよ。お兄様が何とかしないでどうするんですか!」
俺はウンウンと頷く。
「あー!だから嫌なんだよ!」
「「!?」」
「人がいるとあーだとかこーだとか」
「「え、え、え?」」
俺とシャルロット王女は手を握りあい驚くしかなかった。
「煩わしいから、誰とも話さずに済むと黙々と剣の修行してたら、いつの間にか剣聖にされて…」
「「?」」
「あっち行けだの、こっち行けだの言われて」
いきなりベッドの上に立ち上がると地団駄を踏み始めた。
「だからここで一人で居るのに、なんで来るんだよお前ら!」
(ヤバイ、この人はマジヤバイ)
「理解してくれたのは、聖女メリージェーンだけだ…」
恍惚とした顔をみせる。
(ん?)
「マキシミリアン王子。もしかして、聖女メリージェーン様のことお好きだったのですか?」
「馬鹿言うな、彼女は大聖女になって皆を救うんだって頑張っていたんだ。恋愛など出来る相手ではない…」
(そっか、それで、情報も何もかもない隠遁に)
「そのメリージェーンが死んだなど…この世界などもうどうなってもいい!」
「わかりました!では私と勝負して勝ったら、今後一切マキシミリアン王子に話が来ないようにします」
小屋内に静寂が訪れた。
王子と王女が私の顔を見る。
「勝負…だと、どうやって?」
「何でも良いですよ、剣でも競争でも」
「ステラ…」
「剣でもとはどういうことだ?お前聖女だろ」
「はい」
「俺は剣聖だぞ?」
「その代わり、私が勝ったら、私の言うことを聞いてくださいね」
お読みいただき有難う御座います。
評価・ブックマーク・感想・レビューなどアクション頂けると励みになります。
よろしくお願いします。




