第25話:説得できる気がしない
マキシミリアン王子、第17王子で23歳。
謎多き王子で、大聖女の俺も見たことがない。
「マキシミリアン兄様ですか?」
シャルロット王女に聞いてみる。
「兄妹とはいえ王子と王女って、あまり交流ないんですよね。腹違いですし…」
(…そうなんだ…)
「知ってることは、17歳の時に剣聖の称号を頂いてることくらいです」
「え、17歳で?それは凄いことではないですか」
俺は素直に驚いた。
「はあ、ですが…剣聖の称号を頂くとともに、隠遁生活始めまして…」
(ナニソレ)
「以来、6年間人前に姿を見せていません。なんか剣聖の称号が一個欠けた状態になってて世間様に申し訳ない感じです」
シャルロット王女が、申し訳なさそうに項垂れてしまった。
「シャルロット王女のせいではないですからね」
(つまり、引き篭もりを連れてけってことか…どれだけ難易度の高い命令だよ)
俺は目眩を覚えた。
俺は王に言われた。マキシミリアン王子を説得して連れて行くために、シャルロット王女と二人で南の森に向かっていた。
シャルロット王女を連れてきたのは、兄妹だし何とかならないかなって打算だったりする。
王女に二人で一緒に行こうと話したら喜んでついてきてくれたし、王女も兄に会いたかったのだろう…
南の森は、魔物の報告も今のところない。
中央に湖をたたえる自然豊かな森で観光地にもなっている。
だが、その全容は山々も抱く深く広い森であり、人の手が届かない場所も多々ある。
そんな人の居ない場所にマキシミリアン王子はいるらしい。
「もう、やだー。なんでこんなところに住んでるのよー!」
「後少しの筈です、頑張りましょう」
シャルロット王女が、文句を言い始めた。
従軍もする聖女から、文句が出るのだから、険しさは推して知るべしだ。かく言う俺も…同じ気持ちだ。
(王のバカァァァー)
***
「あれじゃないですか?」
木々に覆われた山や川を幾つか超え、暗くなり始めた頃、目的の場所に辿り着いた。
崩れかけた小屋。小屋の脇には薪やトグリング・フレームに鞣した皮が張ってあるのが見える。
「確かに住んでそうですね…」
(んっ?)
「シャル!後ろ!」
「えっ?きゃ!」
俺はシャルロット王女の手を引いて自分の方へと引き寄せる。
シャルロット王女のいた場所に、スーっと白刃を持った人影が現れる。
「マ、マキシミリアン王子ですね」
「貴様ら。何者だ?」
「陛下の命令で貴方に会いに来ました、聖女です」
「…そんな桃色聖女など居るものか!」
マキシミリアン王子は、シャルロット王女を指さした。
我が儘ピンク法衣…確かに…
「酷いです。私をお忘れですか?お兄様!」
マキシミリアン王子は怪訝な顔をする。
「兄だと?妹なのか?」
「シャルロットです」
目を細めてシャルロット王女を見るが、分からないらしい。
「すまん、王女が40人も居るんだ、妹だけでも20人近い…とてもじゃないが憶えてられない」
(そりゃそうか)
「そうですね、私も憶えていません」
(お前もかい!)
「しかも、腹違いだから、容姿もバラバラだからな」
「そうそう、そうなんですよね」
「で、そっちの豪華な法衣の小娘は誰だ」
目つき鋭く俺を睨んでくる。
「私は…」
「この方は、大聖女ステラフィール様です」
俺が喋ろうとしたら、シャルロット王女が俺の前で両手を星の瞬きのようにひらひらさせ、言い終わると何故かフンスと胸を張る。
「大聖女?聖女メリージェーンがなるんじゃなかったのか?」
「お兄様…五年前の事件も知らないのですか?」
「う、うむ、ここから一切出ないからな」
(筋金入りの引き篭もりか!)
「でも、それでは足りないものも出るでしょう?」
「毎月国から必要なものは送って貰ってるから問題ない」
(ニートじゃん!)
「メリージェーン様は、五年前…魔族の手に掛かって…お亡くなりになりました…」
「なんだと…お美しい方だったのに…」
つと俺を見る。マキシミリアン王子。
「お前も綺麗だな…」
(なんですかその意味ありげな言い方は…)
「それより、何しに来た」
「陛下よりのご命令をお伝えに…」
マキシミリアン王子は俺が言い終わる前に、10メートルを一瞬で後ろに下がり、木の陰に隠れてしまう。
「俺は、ここを動かんからな!」
(説得できる気がしない…)
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