第23話:お金って…大事だけど
俺は末席に近い位置に座っていた、商業ギルド長に視線を向ける。
(ここで動くの?)
「商業ギルド長。サラス何かあるのか?」
手を上げた、商業ギルド長に王は発言を促しす。
現在の商業ギルドは、サラス伯爵夫人が取り仕切っている。
俺は、商業ギルド長がこの部屋に入ってきたときから感じていることがあった。
「商業ギルドとしては、反対致します」
時計の針を戻すかのような発言だった。
(ああ、そう云う魂胆か…)
「…いかなる理由で?」
「我が国は、二年前の連邦、昨年の帝国に遅れ先日勇者が召喚されました」
「星の巡りが関係するため致し方ありませんでした」
俺の言葉に王が頷く。
「そのため、人の流れ、物の流れ。つまりお金の流れが王国から遠のいていました」
「今は、国の…人類存亡の話をしているのだぞ!」
騎士団長が睨みつける。
「長い魔王との戦で、資金面で王国に貢献しているのは誰だとお思いですか?」
騎士団長が机を叩き黙り込んでしまった。
「そうだ、王国は困窮している。人の流れを王国に向けさせるのは今しかない」
高位貴族が息を吹き替えしたかのように、サラスに同意をしめす。
(あーこれは嫌な流れだなー)
俺は内心で、机に突っ伏す。
「人の流れも、金も、王国が無くなっては意味がないだろう。我々や国民は商人と違って、ここが駄目ならあっちでとはいかんのだぞ」
(おお、軍務卿頑張れ!)
「そうだな、我ら貴族は領地を護るのが責務だからな」
「しかし、財源がなければ維持も出来ぬぞ」
(…ははは、高位貴族が揉めだしたよ)
王も困りつつ呆れた顔をする。
(器用だな)
「連邦に、帝国に流れたお金を取り戻してからでも遅くないのでは?」
ギルド長サラスが、舌舐めずりするかのような顔を見せる。
「そうだな」
「それがいい」
「我が国も潤わ無ければ不公平だ」
(あー上手いなー)
「だ、大聖女はどう考える?」
王が、困った顔で丸投げしやがった。
俺が怒りを抑え込んだ笑顔で王を見ると、王がヒッっと声を漏らしそうな顔をした。
(ふぅ…)
致し方ない…
俺は目で対面に座っているシャルロット王女に合図する。
だが、「?」な顔とともに頬を赤く染めてしまった…
(お前気づいてないのか?)
いいやもう!
「みなさん、その考えがどれだけ、魔族を利するかお考えください」
「どういうことだ」
「魔族は勇者が集まるのを恐れています」
本当は、皆の安全のため…
「商業ギルド長サラス様の…」
この会議の後に処理したかった。
「なんですか?大聖女様」
サラスが俺を睨む。
「姿を模した魔族のように」
俺は唱える《(プチ)セイクリッド・ピラー》俺を中心に同心円状に光の柱が広がって行く。プチをつけたので本来の百分の一の威力に押さえた《セイクリッド・ピラー》だ。
ほぼ同時にシャルロット王女も、《セイントウォール》を発動させたのを目の端に捉える。
(気づいてたのかな?)
《セイクリッド・ピラー》は人間や動物には影響がない、精々病気が治ったり水虫が治ったりする効果がある程度だ。だが魔族にとっては消滅しうる魔法だ。
サラスに光の外縁が到達すると、サラスが壁まで吹き飛ばされそのまま迫った光に絡めとられて、壁に張り付いた状態になった。
「大聖女!一体何をした!」
高位貴族が叫ぶ。
「おい、あれを見ろ!」
一同がサラスに視線を向けると…
サラスの顔が青黒くなり、白目が黒へ、瞳が赤へと変貌した。
「魔族!」
近衛騎士がすぐさま、剣を抜きサラスを囲むように移動する。
『大聖女…気づいてたのか!』
俺は肩を竦めてみせる。
『ギャザリン様が大聖女に気をつけろと言われたのはこのせいか…』
「色々教えて欲しいけど…まずサラス様をどうしたか教えてちょうだい」
『生かしておくとでも?』
(そうだよな…お前たちはいつもそうだものな…)
「ステラ、その魔族は此方で引き取ろう」
王がそう言って、騎士団長に目くばせする。
しかし、シャルロットが張った《セイントウォール》の外側で、突然空気が、会議室の調度品や絵画が、魔族に向かって吸い込まれ始めた。
ギャユゥゥゥウゥゥウウンという音がしたような気もするが、無音だったかもしれない。
壁や床、天井を迄も魔族と共に消失し大きな穴が開いていた。
「どうなった」
「逃げたのか!」
「大聖女!」
俺に視線が集まる。
「魔族は消失しました」
俺は魔族の消えた場所を見つめたままそう答えた。
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