第17話:10歳の決意
(うーむ。暗殺計画とか、とんでもないことを聞いてしまった)
俺は作業の手は止めず、心の中で頭を抱える。
(誰かに通報するか?)
俺は自分の身体を見下ろし頭を振った。
(いい線いってるけど、流石に10歳じゃあな…)
誰も信じてくれないと、悟ってしまった。
話したこともない、王様はどうでもいいが、シャルロットに危害が及ぶのはなんとかしたい。
「ほう、小さいのにいい仕事をするね」
「ありがとうございます」
(会話をしていた以上、暗殺者は複数犯だ…)
「名前は?」
「ステラフィール・ローゼマイヤーです」
(暗殺の手段もわからない。どうするかな)
「おお!ローゼマイヤー侯爵の息女か、美人なわけだ母に似て良かったな」
「有難うございます。よく言われます」
(基本シャルロットに注意を払って、他の王女も…シャルロット含めて43人いるんだっけー無理じゃん)
「ハハハ。面白い娘だ、気に入ったこれをやろう」
「ありがとうございます」
なんだろう、頭を撫でられ、何かを手渡された。
「それじゃあ。また会おう。頑張れよ!」
「はい、ありがとうございました」
物思いに耽って、相手を確認もしなかったが、渡された手を見ると指輪を握らされていたみたいだ…指輪には見覚えのある精緻な家門が彫られていた…なんだっけーー?
まあいいか…今はそれどころではないのだから。
俺は、取り敢えずベルトに押し込んで固定した。
(…女官服にポケットなんてついてないんだよ!)
俺は、さっさと仕事を終えると、女官長に許可を貰って、作業を終了にさせてもらった。
なんてったって10歳なんだから、眠いと言えば許される筈だ。
「な、なんだーこの美しい飾り方は!」
「この花の飾り方。見たこともない飾り方よ!」
「今後もあの子にお願いしよう!」
俺のエンジェルイヤーに、またしても不穏な言葉が飛び込んできた…
まあいい、次は派手に失敗して幻滅させてやろう。
***
俺は、先ほど声が聞こえてきたであろう場所まで走った。
流石に、誰もいなかったが…靴の跡で人数を、靴の沈み方、大きさで体重と性別、年齢の当たりをつけていく。
足跡は五人、平均男性二名とやや体重のある男性が一名、女性が二名と推察した。
この人数だと…王女全部を狙う事は不可能だ、だとすると誰が狙われるかだよな…
43人…と言っても、結婚したり、留学して城にいない王女、生まれたばかりの王女も省けば、なんとか両手の指位だろう。
致し方ない…
「出来る限りやってみますかね…」
***
晴天に恵まれ。
園遊会が開始された。
庭園には、王家に呼ばれた多くの貴族や商人が集っていた。
俺は何をしているかというと。
女官見習いなので、隅の方でコートを預かったり、空いたグラスを片づけたり。
ついでにたまに姿を消す。
***
王女には護衛が付く、王女のランクによって変わるが、シャルロットには二人の近衛が付いていて、昼間は部屋の前に騎士服姿で立っている。
精悍な顔立ちで、隙のない佇まい。剣の道を極めようとしているのを、剣だこがそれを物語っている。
「ぐぁ」
騎士の一人が呻き声をだす。
「おい、どうした!」
呻き声をだした騎士は何処から現れたのかもわからない二人の暗殺者に、短刀で腹を刺されていた。
「貴様!誰だ!」
誰何しながら
騎士は流れるように剣を抜き、滑るように足を運んだ。
だが、暗殺者は騎士の剣を手甲で逸らすと、短刀を横にして騎士の胸に突き刺した。
屈強な護衛たちが何もできずに倒されてしまう。
「姫様…」
暗殺者は、倒れた騎士を一瞥すると扉に手を掛けた。
「!」
暗殺者の一人がガチャガチャとドア開けようとする。
「どうした、早く開けろ」
「開かないんだ!」
「なんだと?」
もう一人に代わるが、開けない。
「鍵など無いはずなのに。この部屋。入れないぞ」
(うん、開くはずがない)
今回。シャルロットには、園遊会に出席していない王女たちを、「園遊会の料理を一緒に食べましょう」という事で部屋に集めて貰った。
そして、部屋に《クロックロック》という、次元の異なる空間の鍵を掛けた。
もう、誰も手出しができはしない。
だが、そこまでして俺はミスをしてしまった。
「このまま帰れば見逃してあげますが…どうしますか?」
「いつの間に!」
俺は胸を刺された騎士の横。暗殺者に背を向けて両膝をついて騎士の容態を診ていた。
「誰だ!」
「申し訳ありません、名乗るわけにも顔をお見せするわけにもいきません…」
俺は、自分のミスにイラついていた…騎士で対処できればと思ってしまい、出るタイミングを逸した。その結果、騎士が傷ついてしまったことに…
「なんだと、ふざけるな!」
「お帰り頂けないようですね…残念です」
《スタンボルト》背中越しに俺がそう紡ぐと、バシッっという強烈な音とともに暗殺者は後方に向かって弾丸のように弾かれ、ドアまで吹っ飛んで、ぶつかって声もなく気絶した。
《グレートヒール》これは近衛騎士の二人に対してだ。
逆再生のように傷が消えていく。
「すまなかった」
俺は立ち上がると園遊会の方を見つめた。
あと、三人。
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