第13話:ステラ争奪戦
「頑張りましょう。絶対に誰の手にも渡しません」
と惺は鼻息荒く、俺に宣言した。
「ありがとうございます。頑張りましょう」(負けるわけにはいかない。叩き潰す!)
尚、戦力調整の結果以下の参加者及びチームとなった。
【ラフィール王国】
・惺+ステラフィール
・紫+ソフィーテア
・迅+ジャンロック
【連邦国】
・煌(単独)
・氷河流(単独)
【ジャッジ】
・マリア王女
迅は一人で十分だと噛みついてきたので、ジャンロック様は、見守るだけという建前にしている。訓練で死なれたら元も子もないからね。
「それでは、第一回『ステラ争奪戦』位置について」
マリア王女の声が渓谷に響き渡る。
(ん?)
「ま、まって、マリア王女。第一回ってなんですか!」
「スタート!」
抗議しようとしたが、惺に手を引かれ叶わなかった。
***
と、取り敢えず一番になれば、どうということはない。
俺たちの周辺で、気持ちよさそうに、半目でジッとしていたロックリザードは、
煌による、《サンシャイン》による熱死。
氷河流による《アイスロック》による氷漬けで一鳴きもできずに一掃されてしまう。
あまりにも無情。害獣とはいえなんとも可哀想だった。
俺でもそう思うのだから…
「か、可哀想です...」
紫が、氷漬けになった半目のロックリザードを見て泣いていた。
「紫さん?」
ソフィーテアさんが声をかけるが、紫は俯いたまま動けなくなってしまった。
精神面が課題なんだよね、紫ちゃん。
「紫さん。一旦休憩しましょう」
ソフィーテアさんが優しく肩を抱いて慰めていた。
(まあ、これも訓練だ。頑張れ)
紫…ここでリタイア。
だが、それはそれ。
「こ、ここでは駄目です。惺さん向こうへ行きましょう」
距離を取って、狩るしかない。
***
「いいですか?私がロックリザードを呼び込みます」
「呼び込む?」
「呼び込みます。任せて下さい。
ですので、惺さんには、何でも良いのでドカンと大きい魔法をお願いします」
「わ、わかりました。やってみます…」
「準備はいいですか?」
惺が詠唱に入ったのを確認して、俺は…
「こほん…」と一つ咳払いを入れると、「ラララー」とメロディーを奏で始める。
聖女は戦意高揚の、バトルソングや、加護を降ろす唄など様々なバフを奏でて実現することが可能だ。
中には、獣や魔獣を呼び寄せるという魔寄せの唄も存在する。
ヒョコッと岩陰から顔を出すロックリザード。
《フレイムエクスプロージョン》
惺が呪文を発動する。
(あ、早い!)
ズズズズズバァガァァァーン!と凄絶な音を出して大きな爆発が起こった。
(あああ、一匹程度に勿体ない)
俺は惺にバッテンを指で作って、首を振り、ゼスチャーでもう一回唱えるように促す。
俺は唄を止める訳にはいかないのだ。
因みに。俺は魔寄せの唄を基本知ってても使わない…
だって、俺が使うと…
岩陰から
ヒョコ
さらに
ヒョコヒョコ
あっちも
ヒョコヒョコヒョコヒョコ
寝ていたものも、近くのものも、遠くのものも関係なく、ロックリザードがワラワラ、ワラワラと顔を出し、波が押し寄せるようにザザザザザザザザと物凄い音と、地を揺らしながら押し寄せてきた。
過剰に引き寄せてしまうからだ。
「ス!ステラさんー!。多い多すぎる!!」
(あああ、ばかー!)
惺は余りの多さに詠唱を止めてしまった。
「惺さん!詠唱、詠唱!」
もう、唄どころではない。俺は必死で叫ぶ。
「そんなこと言っても」
(あーもう)
(致し方ない)
俺は惺と、近くの岩に登る。
「私の詠唱に合わせて下さい!」
「え、ええ、はい!」
俺は、惺の肩に手を置き、詠唱を促す。
「其は我が怒りを」
「そはわがいかりを」
「具現する力なり」
「ぐげんするちからなり」
「「猛りてその力」」
「「我を害する彼の敵を燃やし尽くせ」」
惺の練った魔力に、肩に乗せた手から俺の魔力を無理やり加えてやる。
これでもかと…
《フェノム・フレア》
周囲の空気が熱と共に圧縮されていく。
ロックリザードの中心で白い輝きが発生する。
その光量は、周囲を溶かしながら膨らみ始める。
陽炎が立ち、ロックリザードが触れると一瞬で蒸発する。
渓谷の川が、岩が溶けていく。
熱した空気が上昇気流を発生させる。
俺は、《セイントウォール》を密かに唱え、惺の目を手で塞いだ。
***
「こ、これは何事ですか?」
雨に濡れたマリアが棒立ちとなる。
《フェノム・フレア》が終了したのち、急激に温められた地上の熱が上空に雨雲を生み、大地に激しい雨を降らせていた。
煌、氷河流、迅、紫、ソフィーテア、ジャンロック。そして惺さえも棒立ちで雨を滴らせている。
「こ、これは、惺さんの魔法です」
倒したロックリザードの存在を示すのは地面に残った影だけになってる。
「こんな、魔法聞いたことないですよ!」
見渡すと、渓谷も、その地形が変わっており、溶けて窪んだ河原に川の水が流れこみ。所々結晶化したところが雨の中でも輝いていた。
「そ、そんなことはありません。単なる火魔法の一つです」
バシャ
水音が聞こえたと思ったら、迅と煌が膝を着いていた。
「勇者とは…ここまでの魔法が使えるのか…」
氷河流が呟いた。
「凄いわね…いくら勇者様とはいえ自信無くすわ…」
ソフィーテアさんの顔色が悪い。きっと雨に打たれたせいだろう。
(やりすぎたか?)
でも、勝たなければいけない戦いだったんだ。戦いとは虚しいものさ…
「ステラ…倒した証拠が無いので負けにしていい?」
「やだー」
このとき、俺も気づかなかったが、溶けた河原の下で鼓動のようなものが響いていた。
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