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異世界でも殺し屋さん?  作者: なきもち
41/42

43話

よろしくお願いします。


ヴィーノは物心ついたときには教会に預けられていた。そこでは何故か忌み子と言われ同じ孤児の子供達はもちろん教会のシスターからも酷い扱いをされていたという。そのため与えられるはずの愛情は無く、生きる意味すら見いだせないでいた。子供たちに遊びに誘われたと思えば呼び出された先で数人の子供たちに袋叩きにされたり、シスターにはご飯の時間を遅く伝えられ「遅れる悪い子にはご飯は無し」と食事を与えられないこともあった。

そんな嘘まみれの中虐めらる中ヴィーノは生きてきた。

一人で居るときが多く暇があれば魔力を操作してはあちこちを探索し、死の危険性があるにも関わらず魔物を狩りに行ったこともあった。そのせいあってか、10歳になる頃には中級魔法まで使えるようになっていた。それは冒険者顔負けの強さであったが、ヴィーノがそれを表に出すことは無く今までどおり同じ教会の人間たちに蔑まされ騙される日々を送っていた。時には教会の貢金として変態貴族の欲望のはけ口にされることもあった。ヴィーノはこの世界では珍しい黒い髪をしていた為貴族達の間でも多額の金でその体をいいようにされていたのだ。そんな環境の中で普通の感覚、感情が芽生える訳もなく常識なんて教える人間もいなかった為ヴィーノはどんどん自分から孤独を選ぶようになっていた。

そしてそれはある日突然起こった。

ヴィーノが14歳になる頃教会の人間はどんどん綺麗な顔になっていくヴィーノを貢金の返上として貴族に売る為度々外へ連れ出されていた。そしてこの日もまたヴィーノを売りに外へ出かけていたが、貴族の屋敷に向かう途中の森の中で野党に襲われたのだ。

教会のシスターは為すすべもなく体の自由を奪われ慰めものにされた。そして見た目が綺麗だったヴィーノもまた変わり者の野党に襲われそうになったのだがそこでヴィーノはある疑問を抱いた。


僕は何の為に生きているんだろう?


毎日毎日蔑まされ生きてきた。自分が何をしたと言うのだろうか?こんなことをして大人たちは何が楽しいのだろうか?人を痛めつけることがそんなに気持ちいいのだろうか?

そんな小さな疑問が今頭をよぎった。そしてヴィーノは初めて人間に魔法を使った。今までは魔物に対してしか使った事がなかった為手加減を知らないヴィーノは中級魔法で野盗の一人を消し炭にしたのだ。


「「は?」」


野盗たちは理解が出来ない。いつもどおりひ弱そうな女子供を連れ去り、たっぷり遊んだあとはそのまま奴隷商に売るだけだったはずだ。それなのにその少年は突然自分たちの知らない魔法で、それも圧倒的な火力で仲間の一人を死体を残さず消し去ったのだから。

そしてようやく思考の追いついた野盗たちはシスターをその場へ放り出すと一斉に剣や杖を構えヴィーノへと襲いかかろうとした。普通ならばここは逃げることを考えるだろう。勝ち目のない戦い。

しかしヴィーノの頭の中にはそんな単語はなかった。『気持ちいい?』そんな気持ちでいっぱいだったのだ。人を殺すということ。野盗を殺したことで動かなくなったソレを見たヴィーノは自然と笑っていた。そして襲いかかってくる野盗に次々と魔法を打ち込んでいき勝てないと思った野盗はその場から逃げ出した。


「やばいぞこいつ!もしかして冒険者の手先なんじゃ?」


「とにかくここは離れて頭のところに急げ!」


気づけば森の中は既に事切れた男たちと気を失って倒れているシスターがいるだけの空間になっていた。


「終わ……り?」


そこから何を考えたのかヴィーノはそのまましんだ男の死体にまたがると男の持っていた剣で男の腹を切り裂きそこに手を突っ込んだ。そして頬を赤くして呟く。


「あったかい………。これが人と遊ぶっていうこと?それとも……、あいを感じる?」


しかしその言葉を聞いたものはその場には居らずもちろん帰ってくる返事もなかった。










どれくらい時間が経っただろうか。倒れていたシスターが目を覚ました時初めに目に飛び込んできたのは驚きの光景だった。

目の前には首えおかしげてこちらを見ている忌み子。いつもであれば簡単に騙しそのまま森の中に置いてきぼりにすることも出来ただろう。しかしこの時ばかりは出来なかった。なぜならヴィーノの着ていた服にはどす黒い血の模様が大量についており、ヴィーノが怪我を負っていないことからそれが返り血であることを理解したからだ。目の前には返り血を浴びたヴィーノ。そして周りには無残な姿で倒れている男たち。これだけでもヴィーノが何かをしたというのは確実だった。シスターは震える声で問いかける。


「これは、あんたがやったの?……」


その恐る恐るといった質問にヴィーノは初めてシスターの前で笑顔を見せた。初めて見る笑顔で、それはその辺にいる女子供より純粋で綺麗な笑みだと思った。


「そうだよ?皆が楽しいって言ってた理由……僕にもわかったんだ!」


そして笑顔のままヴィーノはシスターに向かって魔法を唱えた。


「嫌よ……!いy――――」


シスターは叫ぶまもなくヴィーノの魔法によってその場に倒れた。戦っていくうちに加減を覚えたのかシスターの首から上だけが消し飛んでいた。喋らなくなったシスターに嬉しそうに近づいて行くヴィーノ。シスターが男たちとは違う体の作りを見て興味がわいたのだ。


「皆体のつくりが違う?」


ヴィーノは一つの答えにたどり着いた。皆は遊びながら勉強をしていたのだと。壊せば人間のカラダのつくりがわかる。そうすれば教会のシスター達が回復魔法を使っていたように自分にも傷を治せるようになる。そう考えて疑わなかったのだ。



それからヴィーノは連れてこられたときとはまるで別人になり、教会に板人間全てを壊した。その惨劇を見た人間はすぐに王国への依頼を出すと国はその問題を重要視し、すぐに動いた。

丁度その頃新しい勇者が召喚されておりその力試しということでその騒動を勇者に沈めてもらおうと王は思ったのだ。しかしそれは大きな間違いだったことを後に公開することになる。

ヴィーノが教会の人間を全て壊したことにより、ヴィーノの居場所はなくなってしまった。


「このままじゃご飯が食べられない……。みんな壊しちゃって遊ぶこともできない」


ここで初めて(自らの欲望を叶える為)だけに今まで生きようと思わなかったヴィーノが「生きたい」と思ったのだった。だが教会には人が居ない。自分には玩具をもっと沢山壊す為の力と愛を知るための知能が必要だと思った。ヴィーノは一人ぼっちになった教会に戻りシスター達の部屋にある本を沢山持ち出して森の中へ逃げ込んだ。森には魔物もおり普段から人が入らないようにしているとシスター達が言っているのを聞いたことがあったからだ。それが本当かどうかはわからないが今のヴィーノにはそれを信じる他に外の情報を取り入れる手段がなかった。


「かみの………おえ?」


「お―――。おし……え。教え」


こうしてヴィーノは誰に習うでもなく独学で知識を身につけていったのだ。そして森の中に入ってきた冒険者は壊した。壊して、壊して、遊び学ぶ。ヴィーノにとっては人間が森に迷い込んでくることが勉強を含めた遊びになっていた。最後には教会の本に載っていた治療魔法や傷の手当ての仕方を見よう見まねで使ってみる。自分では外傷を負うことはまずない為小さな魔物や動物を見つけるとそれらを傷つけて魔法を行使した。こうしてどんどん狂人的に育っていったのだ。どれくらい森の中にこもっていただろうか、黒く綺麗な髪はだらしなく伸びていたが顔立ちは綺麗なままだった。


その頃付近の町や帝国の冒険者の間では森にとんでもない魔物が出る、知能を持った魔物が出るなどの情報が出回っていたが、誰が初めに言い出したのか皆口々に「ギデオン」とヴィーノのことを称した。

勿論王国の送り出した勇者はヴィーノを発見した。

しかし勇者の性格は王道な優しい男だった為致命的な行動を取ってしまったのだ。それはヴィーノが夕食にするための魔物を狩って血抜きをし調理道具をガサツながら作った家へ取りに向かっていたときのこと。森の中を目を凝らして探していた勇者がまだ15~6歳くらいの男の子を見つけたのだ。それも返り血を浴びたのか怪我をしているのか見分けが付かないほどの血に濡れた服を着ている男の子。

勇者は全速力で男の子へ近づき心配したようにヴィーノへ声をかける。


「君!大丈夫かい!?そんなに怪我をして走っているってことはギデオンが出たんだね?」


「――――」


ヴィーノは驚いていた。今まで自分のガードをくぐり抜けここまで近づいてきた人間は居なかった。勿論相手が二人がかりで襲ってきたときは大変だったがそれでもなんとか対処できていたからだ。しかし目の前の男は今までの人間とは明らかに違っていた。身のこなし、装備品、全てが今までに見たことがなかったもの。

この人間を殺せば自分はもっと強く、もっと楽しく壊すことができるのではないか?相手は強いが自分を見て困った顔をしているようでそれはヴィーノにとって好都合なことだった。


「っ!?」


考えると同時にヴィーノは持っていた刃物に強化魔法を纏わせ何の躊躇いもなく男の心臓に突き刺した。なんの防御も結界も発動していなかったのかその刃はあっさり心臓まで到達し背中まで貫通する。


「まさか……」


たとえ勇者といえど防御の型や魔法を唱えず敵の間合いに――――。それも自分を殺すことになんのためらいも持たないものが目の前に居ては対応が出来ようはずもない。

しかし咄嗟にヴィーノに向かってスキルを発動する。


「わぁぅ」


ヴィーノは何が起こったのか理解出来なかった。男がこちらに手を向けた瞬間に自分の体が吹っ飛ばされたのだ。そのまま空中で回転して受身を取り再び男を見ると男が更に何かを呟いていた。


「我が剣よ、我の命により彼の者の悪しき心を断て!聖剣召喚!エクスカリバー!」


すると男の手には宙から現れた神々しい剣が握られていた。


「綺麗な剣……」


「ゲホッ……。まさか君のような少年がギデオンだったとはね。油断してしまったけどここまでだ。この聖剣エクスカリバーは悪しき者の心を断つ。そして聖剣は聖剣か魔剣でなければ撃ち合うことすら出来ない」


ヴィーノは男が何を言っているのかわからない。わかろうともしない。だが男が握っている剣は自分が持っているどの武器よりも強いことをこの一瞬で悟った。


「僕もその剣……。欲しいなぁ」


ヴィーノは寂しそうな顔で男の剣を見る。しかし男は油断させる為にヴィーノが演技しているのだと思いそのまま聖剣で斬りかかった。

ヴィーノは咄嗟に避けようとするが男の剣はそう簡単に避けられなかった。


『ヒュン』


気づくと脇腹のあたりが酷く熱い。ヴィーノは驚く。避けたと思ったがその攻撃はあたっており、致命的なダメージを負わせられたからだ。だがそのダメージは痛みだけで血は一切出ていないことに困惑の表情である。しかし驚いていたのはヴィーノだけではなかった。


「馬鹿な?……。何故まだそんな邪悪な顔をしている?何故そんなに邪悪なオーラを平気で放っていられる!?」


それもそのはず。邪悪を断つ性質を持つ男の特殊な聖剣で切られたヴィーノの体からは邪悪な気配が未だ消えていないのだから。

ヴィーノにとってこの感情は憎悪でもなく憤怒でもなく、純粋な心だからだ。更に男は驚愕することになる。目の前に板邪悪な子供は何かをブツブツつぶやき始めた。そしてそれは男がよく知っていた魔法の詠唱。言の葉。


「綺麗な剣さん、僕にも沢山壊す力を貸して。聖剣召喚―――。えくす……かりばー?」


すると男のときとは比べ物にならない輝きを放つ剣がヴィーノの前に出現した。聖剣は持ち主の意思に応え現れる。それも勇者にのみ行使可能な魔法。しかし男の目の前にいる邪悪は聖なる剣のはずの剣を召喚してみせた。それも 自らの召喚した剣よりもはるかに高位に位置する剣だった。


「どういうことだ?何故悪しき者が聖剣を?それよりも何故そんな……!?わからない!何故だ!」


気づいた時ヴィーノの剣は男を上回った動きで男の腕を両断する。既に致命傷を負っていた勇者は痛みと体力の消費により立っていられなくなった。


「何故だ………」


男は最早息をするのがやっとの状態だった。しかしヴィーノはそれだけでは満足せず男の上にまたがると、なんと自らの召喚した聖剣で男の腹を器用に裂き始めた。


「アアアアァァァアアア!………」


勇者はヴィーノについて考える余裕もなく残酷な死を迎えることを恐怖し叫ぶしかなかった。それがヴィーノにとって最高のスパイスになるとも知らずに。

それからヴィーノに送られる刺客はいなくなり、災厄のギデオンとして国中が恐れた。もちろんヴィーノにとっては退屈な日々が訪れるだけでいい事など一つもない。ならばと、本から得た知識を元に街へ趣いた。

ギデオンは恐れられてはいるものの姿は知られておらず街や村への侵入は容易だった。そして少しでも強そうな人間がいれば的確に挑発したり誘導したりと自らの欲望を満たしていった。











「そっか」


普通なら苦労してきたね、大変だったねと反応するところなのだろうがヴィーノが求めているのはそのどれでもなさそうだった。

そう思うとサキはすっと手を出すとヴィーノの頭をわしゃわしゃと撫でる。


「話してくれてありがとう。俺はこの世界の人間じゃないからね。この世界の情報をくれるヴィーノには助けられているよ。他にこの世界に関して知っておくべきこととかあるかな?」


するとヴィーノはしばらく考え込んだ。その間もサキは器用に髪を切っていく。


「今は思い浮かばない……ゆきぃごめんなさい……」


サキがヴィーノを責めることはなかった。


ヴィーノからは戦闘に関しては学ぶべきことが多そうだし……。ここは上手く取り繕っておかないとね。


こうしてサキはヴィーノと上手く関係を築くべく試行錯誤するのだが、今後大きく悩まされる事をまだ知らない。












後半は来月までに上げられればと思います。これからもサキの成長を見守ってくださると幸いです。

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