42話
近々投稿とは……。待ってくださっていた方々、申し訳ありません。
よろしくお願いします。
「シカリウスねえ……」
ヴィーノの話によると、以前にシカリウスの組織の一員と名乗る男と遭遇していたらしい。
それはある日のこと。ヴィーノの背後に突然知らない男が現れた。しかしヴィーノはいつもの癖で反撃していた。
「どうも、俺は……!っと」
そういう男の風貌はシンプルな服装だが中にはしっかりと軽鎧を着用しており、他にも武器を所持しており明らかに冒険者ではない風貌だったが当時のヴィーノにとってそれはどうでもいい情報だった。
その男はシカリウスに属する中でも下っ端ではあるがB級冒険者並みの力を持っていた。そしてシカリウスから指示を受けヴィーノを仲間に勧誘しようと近寄ってきたのだ。しかし男にとってヴィーノは最も相性が悪い相手といえよう。男の得意とする戦術は騙し討ちや暗殺、毒殺といった不意をつくものが多い。しかしヴィーノには全てが効かずこうして正面から戦うことになった。男の目的はシカリウスへの勧誘と情報収集。だがヴィーノにそれを話す前にこうして戦いを挑まれた形になったというわけだ。
「まさか話もきかねえやつだとは思っても無かったぜ。それにあんな長ぇ髪して女かと思えば男だしよぉ……」
そうがっかりした様子を見せつつも男はヴィーノの隙を伺う。それに対するヴィーノは何度も自分の攻撃がかわされているにも関わらず楽しそうに口角を上げる。そんなヴィーノの情報は男を更に苛立たせた。
両者の攻撃が続く中男は突然攻撃の手を止め武器を収めた。
突然のことだがヴィーノもまた一瞬悩んだが攻撃の手を止める。その表情には困惑と苛立ち。自分の遊びを突然邪魔されたという苛立ち。
「なあギデオンさんよぉ、ちょっくら俺と話をしねえか?元々そのつもりで戦う気なんてこれっぽちもないんだ」
そう言う男だがヴィーノには不快以外のなにものでもない。しかし無抵抗の人間を殺すほどつまらないことはないこともよくわかっていた。こんな時どうすればいいのかわからないままヴィーノは男の挙動を見逃すまいとじっと見続ける。
男はヴィーノが話を聞く気になったのだと思いそのまま自分の目的を話し始めた。
「俺はシカリウスっていう組織に属しているんだが、頭に命令を受けてなぁ。昔とある孤児院に居たガキが一人で冒険者や勇者、教会の人間を皆殺しにしたって話を耳にしたらしくてな、その力を買ってうちに勧誘して来いってな」
ヴィーノにとってはだからなんだと思うしかない。壊した玩具の話しをされたところで動揺するわけでも無くただただ男との再戦を考えるばかり。しかし男はまだ続ける。
「あんたを探すのには苦労したぜぇ?情報収集は俺の十八番みたいなもんなんだけどあんたはどこにも情報が残らねえし残ってもねえ。でも今回見つけられたのはラッキーだった。んでお話しようにもあんたには隙はないしこうして戦ってもお互い互角ってところか?それじゃあ無駄な戦いでしかない。とにかく話がしたかったんだ。頭はお前のことを相当かっててな?何が何でも手に入れるって感じだぜありゃぁ。つまり何が言いたいかって言うと……わっとぉ?」
話を最後まで聞かずヴィーノは再び武器を構えると男に向かってそれを突き出した。男も咄嗟ながらそれを避けるが残念そうに呟く。
「ったく話も聞かない男だったとはな……交渉決裂だ!半殺しにしてでもお前を連れていかにゃぁならねえ!」
再び男とヴィーノは戦い始める。森の中には何時間も戦闘音が響き渡る。両者互角と思われた勝負だったが疲弊しているのは男だけでヴィーノは息一つ乱していない。
「はぁ……。一体……どうなって………はぁはぁ……」
流石の男もヴィーノの実力を見誤ったと思った。ずっと打ち合いをしているにも関わらず息が上がっているのは自分だけ。
ここは一旦逃げて体制を立て直すか……。
男は胸元から何か黒い玉を取り出すとそれを思い切り地面に向かって投げつけた。
ヴィーノは警戒しつつも黒い玉から距離をとり男のいる場所を見ようとした。しかし――――。
『バン!』
何かが一気に噴射したような音と引き換えにあたり一面煙だらけになった。それは黒い玉を中心に拡散されており既に男の姿は見えなくなっていた。
しかしヴィーノは煙の中だというのにある方向へ向かって走り出す。しばらくして煙を抜けた先には小さな獣道のような後があった。それしてその先方には先ほどの男が高速で移動している姿があった。
「はぁ!?なんで煙の中まっすぐ俺のことを……!?」
急いで逃げようとするが疲労している体の男と違い息に乱れのないヴィーノの方が早いのは明らかだった。
『ヒュン』
何かに音が男の耳に届いたがそんなことを気にしている余裕は無く走ることだけを考える。しかしそれはすぐに叶わなくなった
男の視線が突然地面を映し出す。あまりに突然すぎたため受身を取れずに男は顔から地面に叩きつけられた。何があったのか理解が追いつかない。目の前にはヴィーノが息切れとはまた違う、興奮したような吐息とともにこちらを見下ろしていた。
男は思う。
はぁ!?……。
しかし思う暇もなくヴィーノによって両腕を掴まれ身動きを封じられる。その体勢からでもわかった。自分の足がないのだ。
しかも両方の足が……。気づいてしまった。気付いたとことでじわじわと痛みが頭を支配し始めるがそれはヴィーノが許さない。
「ふふ………」
その笑みには男ですら恐怖を覚えた。自分を玩具としか見ていない目。それは男を見ているのではなかった。
「なんだよお前……。俺は殺す気はなかったじゃねえか!?なあ!」
そんな男の叫びは虚しくあたりに響き渡る。ヴィーノにとってそれは最高のスパイスのようなもの。まるで味のないスープに味を付け加えるかのように男の悲鳴を響かせる。
「おい!何でだ!俺を殺しても頭はお前を手に入れるってよ!!俺の仲間には俺以上に強い奴らがゴロゴロいるぜ!?いいのか!そいつらが来ちまってもよお!?」
もはや男の言葉にヴィーノを止めることは出来なかった。その間も男はペラペラと自分が助かるために重要な情報をなりふり構わず吐く。
男の絶叫がここまで続くのは仕方がないことだ。死なない程度の傷をつけられ生きたまま腹を貪られているのだから。
男は思う。こんな仕事請け負うんじゃなかったと……。しかしその後悔はもう遅かった。
「いつもよりあったかい………」
そう呟きながら溶けるような笑顔のヴィーノ。男はまだ叫び続けるが構わず腹を裂いて行く、太い血管は避けて細かい血管を先に斬っていくことで出血を抑えつつ痛みを与える。そして神経の部分はズタズタに、しかし器用に引き裂くとその度に男は涙を流し叫んだ。誰も助けに来るはずも゜無く男は叫び続けた。
ヴィーノは久々に骨のある人間を殺した事で気持ちが高揚しきっており普段よりゆっくりと楽しんだ。ひとしきり楽しんだヴィーノは男の死体をそのままに町の方へと戻っていった。
その後はいつも通り玩具を壊していたところでサキに出会ったのだという。
「なるほどね……」
もしこの話が正しければヴィーノと一緒に居る俺にも何かしら害があるかもしれない。でも……。
サキは頭ではヴィーノを置いていくべきと判断しているのにどこか妙な気分になった。ヴィーノを置いていくのは何故か拒まれる感覚があったからだ。
それに自分お情報を知った人間をそのまま野放しにするのは女神たち同様に危険であるため仕方なく、と自分を納得させる。
ここに来てから俺はおかしい………。ただ言われるままにしていた時より判断することが多くて頭が処理しきれていない?
そう考えたところにヴィーノは心配そうな困ったような顔をしてサキを見ていた。
「ごめんなさい………。あまり情報持って……あぁ!嫌いにならな………で」
今にも泣き出しそうなヴィーノの頭をなで「大丈夫だから」と声をかけるとヴィーノは落ち着きを取り戻した。その話を聞いていた女神たちの顔は真っ青だった。この世界でも名の知れた裏組織の人間が自分たちと旅を共にする者を狙っている。それはつまりサキにも被害が出るのは確実。それを女神たちは良く思わなかった。かと言ってサキの前でヴィーノを批判するようなことを言えば今度は間違いでは済まされないかもしれない為、お互い女神通信で会話するほかなかった。
(私はユキ様が決めたのならあの男を連れて行くことを許していいって思ってるわ)
(え?アクエル?ついさっきあんな目にあったばっかりなのにあの男を連れて行くことに賛成するって言うの!?私は嫌だよ!)
(でも私たちみんなユキ様に助けられてるじゃない?今はこうして生かしてもらって助けてもらったっていうのに私たちの勝手でユキ様の旅路の邪魔はしたくないの)
(ねえセラ!なんとか言ってよー!)
(私は……。ユキ様が上手く手綱を握っていると見ているわ)
(手綱)
(そう、ヴィーノさんはユキ様に……。私たちの見ていないところで何かされたんじゃないかって思うの)
(何をされたのさー!自分に害が及ぶかもしれない存在なのに!)
(流石にそこまではわからないわ。でもユキ様が決めたことだもの。私たちにそれを否定する権利はないわよ。それに……私はユキ様についていくって決めているもの。その決定には当然従うわ――。例え私達に害があるとしても……)
(……私だってユキ様に助けてもらったもん……)
フレイアは悲しそうに、しかしほっぺを膨らませ憎めないといった表情でセラを見ていた。アクエルもまたセラの意見には賛同なのかそれ以上は何も言わなかった。
「さて、これからの目的を決めようか。まずはヴィーノ」
突然自分の名前を呼ばれまっすぐ目を見られたヴィーノは何か崇拝するかのような目でサキをじっと見返す。
「ふぇっ?」
「これから色々な場所に行く上でその身なりは中々目立つからね。ちょっと整えようか」
「う……うん」
そして嬉しそうにサキを見つめ髪をわさわさ振ると全く手入れがされていなかったのか毛先は酷く枝毛になっていた。サキは美容師の資格を持っていた為簡単なカットや身なりの整え方なら熟知しており、近くの切り株にヴィーノを座らせるとアイテムボックスから愛用のナイフを取り出す。
ヴィーノは刃物を持ったサキに一切の警戒心をを抱くこと無く無抵抗に切り株に大人しく座っていた。サキがヴィーノの髪を切ろうとしたときサキが思い出したように呟く。
「あ」
すると周囲の者全員がサキを見ると心配そうな視線を向ける。
「な、何かありましたか!?敵が!?」
「私にお任せを!力は衰えても多少の魔法程度なら!」
「ユキ様が作業をするっていう時に気を散らせるなんて何者!許さないわよ!」
「近くに敵は………いないと思う……」
そんな周りの反応で逆にサキは困ってしまう。
思い出したことを言おうとしただけなんだけど……。
「いや、別に対したことじゃないんだけどね。ここに来るまで皆はろくに休憩も取れてなかったから散髪している間にお風呂でもどうかなと思ってね」
敵ではなかったことに喜ぶのも束の間女神達は早とちりだったことを恥じらうように皆俯く。
そんな女神達の気など知る余地もなくサキはクリエストの街付近で作っておいた木の凹凸部分を組み合わせて四角い形の湯船を作り上げると、そこに火と水の魔法を組み合わせて作り出した温水を流すことで簡易的な露天風呂を作り上げる。
女神達の体のサイズに合わせた部品を君合わせただけの為時間はかからなかった。
「わー!私お風呂大好きになっちゃいました!」
「フレイアは元々お風呂苦手だったもんね~」
おちょくるようにアクエルがフレイアにちょっかいをかける。
「もー!ユキ様の前で変なこと言わないで!何時だって浄化していたから綺麗だもん!」
「うふふ、二人共落ち着きなさいって」
そんな二人をセラがなだめその姿を確認したサキはヴィーノを連れて別の切り株へと移動した。
「ごめんね。とりあえず適当に切っちゃうけどいいかな?」
「うん……」
そんな少ない言葉だけの会話を済ませるとサキはヴィーノの髪を切り始めた。
黙々と作業をしているサキを見ていたヴィーノが突然口を開いた。
「サ………キ」
サキの手が一瞬止まる。
「ヴィーノ。この世界の俺は『ユキ』だよ?」
「あ……ごめんなさ……」
「あといちいち謝らなくてもいいから要件をまとめて話して欲しい」
「う……」
まるで叱られた子犬のようにしゅんとするヴィーノをみてサキはまた手を動かし始める。それを確認したヴィーノは話していいのかと今度はおろおろし始めた。それを見かねたサキが会話を紡ぐ。
「それで、要件は何かな?」
話すことを許されて嬉しかったのかヴィーノは落ち着きを取り戻すとまた話し始める。
「ユキ―――――。僕のこと……鑑定して欲しい」
突然のことで疑問に思った。自分を鑑定して欲しいと言い出した理由がわからなかったからだ。しかし疑ったところで何がわかるわけでもない為サキは言われたとおりに鑑定スキルを発動しようとする。
そのタイミングでヴィーノは何かのスキルを唱えた。
「おいで……僕の剣さん」
するとサキが鑑定スキルを使用したと同時に突然空中に眩い光が満ちる。そしてその光が収まった時、ヴィーノの目の前には光輝く剣が浮かんでいた。流石のサキにもなにがなんだか分からない。そんな中冷静な声が頭の中に流れる。
『鑑定スキルの熟練度が一定に達した為最上級鑑定スキルを入手しました』
一気に複数の高位な存在を鑑定した為溜まっていた熟練度がマックスになったのだろう。しかしなぜわざわざヴィーノがそんな行動に出たのかサキにはわからなかった。いくらヴィーノを見て心を、感情を読み取ろうとしても以前と同じ榊と同じ感情が向けられている。
まただ、またこのもやもやした感覚……。嫌じゃないけどもやもやさせられる感情。俺はおの感情を知るためにヴィーノをそばに置いてもいいと考えている?………。なら何故―――。
考えてもわからない事は考えない。それがサキのスタンスだった。そして直接本人に来た方が早いとの回答に至ると再びヴィーノとヴィーノの前にある剣に目を向ける。
その剣はとても神々しく、なにかとてつもない力を秘めているような感覚がした。何かのエネルギー集合体のようなそんな力だった。
「説明はしてくれるのかな?」
「うん……」
ヴィーノが害意を持ってないことはずっと見ているため確実だろう。しかしそれを上手く隠している千もいがめない為念のための警戒はしておく。
「ユキは僕を理解してくれた……。だから知って欲しくて……。鑑定スキルは上位の存在……。この剣みたいなものを鑑定していたら……あがるから………」
そう弱々しい声音で話すとヴィーノの前にあった剣は光の粒子となって消え去った。
「そっか。突然の事で驚いちゃってごめんね。ヴィーノの思ったとおり俺の鑑定スキルは最上級鑑定スキルになったけど、これで俺に何をさせたいのかな?」
そう優しい声音でヴィーノに問う。するとヴィーノはもう一度自分を鑑定するようにとジェスチャーする。
「もう一回……」
すると今までは名前と性別しか表示されなかったヴィーノのステータスが表示される。
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名前 ヴィーノ
Lv156
性別 男
スキル 中級魔法(全属性)魔力操作
プロテクト 隠密Lv6 体術Lv6 剣術Lv6
弓術Lv4 最上級鑑定
+聖剣召喚
称号 忌み子 蔑まされる者 罪人 狂人
+勇者の血を継ぐ者
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スキルに関してはおそらくサキよりも高いであろうステータス。そして先ほどの剣の招待はおそらく聖剣召喚というスキルだろうと予測をつける。
以前異世界ものの本に同じようなスキルがあったことを思い出す。そして驚くべきはその称号だった。+マークの意味は分からないが何かしら隠れたステータスなのだろう。ヴィーノは少し嬉しそうにこちらを見ている。
「ヴィーノはこれを俺に見せたかったの?」
「うん………。僕の先祖は……勇者………。これで少しでも……役に立てるかなって………」
確かにこのステータスならそのへんの人間を弄ぶことは簡単だろうと思う。しかし称号やスキルに関しては疑問ばかりが浮かんできた。
一気に質問攻めにしたらヴィーノも混乱して泣き出しそうな顔をするのは目に見えているんだよねえ。
「ねえ、ヴィーノ」
「?」
だからサキは思い切った質問をする。
「ヴィーノが構わないのであれば、ヴィーノの過去………。教えてくれないかな?」
「ぅ………」
ヴィーノは一瞬考えるが一言だけ震えるような声で聞いた。
「嫌いに……ならない?」
そんなヴィーノの肩に手を沿え、安心させるように全力の演技でこたえる。
「もちろん」
諸事情によりPCに触れる機会が少なくなってしまいましたが、一段落付いたので落ち着いた投稿頻度でこれからも作品を書いていきたいと思います。これからもよろしくお願いします。




