41話
女神たちのところへ戻ると皆笑顔でサキを迎え入れるがその後ろから出てきたヴィーノを見て一瞬で表情で強ばった。
「ユキ様……。その、後ろの方は一体?」
恐る恐る聞いたのはアクエルだった。その後ろではフレイアが敵意むき出しの表情でヴィーノを睨みつける。セラは既に魔法を詠唱する体制に入っていた。しかしその行動も直ぐに抑制される。
「皆、彼は新しく行動することになった仲間?のヴィーノさんだよ。仲良くしてね」
するとフレイアとアクエルは多少警戒はしつつもヴィーノを観察する体制に入るがセラは違った。
「ユキ様!その者のオーラは………。とても不吉です!」
サキはセラの「オーラ」という単語に興味を示した。というのも先日クリエストの街で自らが宝物殿に入った証拠として取り上げられた未知の能力だったからだ。
「セラ。そのオーラっていうのに関して詳しく教えてくれるかな?後ヴィーノの腕の回復もしてあげたいから回復魔法についても色々教えて欲しい。いいかな?」
そう困ったような顔でお願いするとセラは「うぅ……」といいながら不満げにしつつも説明を始める。
「分かりました。ユキ様がそういうのであれば……。まずはヴィーノさんの腕の回復からですね」
セラはヴィーノの腕の断面図をまじまじと見つめる。そしてどこの細胞がどう傷ついているのかみわけるのだ。そして驚いた顔でサキをみる。
「ユキ様、この傷はどこでつけられたのでしょう?」
「ああ、色々あって俺が斬っちゃたんだけど………。ごめんね、お粗末な斬リ方になっちゃったかな」
サキは一人で先程斬った時の角度を頭の中で計算し直す。どの角度ならば痛みを与え相手の思考を邪魔しつつ戦うことができたか。しかし殺す気の一撃で無かった為無駄を省いたつもりだったのだがセラは何を気にしているのだろうと一人考える。
その間ヴィーノはぼーっとしているように見えたがしっかりサキの目線を追いどこに女神たちがいるのかを把握したうえでセラが自分の傷を見ている事を知ると、傷口を見やすい位置に変える。そんな普通ではない状況の中セラは思った。
この断面……。明らかに表面は細胞が死んで膿んでしまってもおかしくない傷なのに……。ユキ様はやはりすごいです切られた断面も綺麗だしユキ様の魔力があればきっと治せるわね。
でもこのヴィーノという男は危険ですね。私たちが見えていないはずなのにユキ様の視線と会話からどこに私たちがどこに居るのかを確認したうえで見やすい位置に腕を向けてくる……。一体何者なのかしら?もしユキ様に悪影響を及ぼすなら私が――――。
どこまで考えたところでセラに声が掛かる。
「セラ。セラはそんなこと考える必要はないよ?」
一瞬何を言われているのかわからなかった。しかしセラがサキの目を見たとき、自分の全てが見透かされているよな気がしてセラは慌てて目を逸らす。そんなセラの反応を気にすることもなくサキは続ける。
「それとヴィーノの腕は治りそうかな?おれはまだ回復魔法を使ったことが無いからセラが教えてくれないと……」
「は、はい!以前ユキ様には応急処置の魔法として「ヒール」を唱えればある程度の傷は回復するとお教えした事は覚えていますか?」
「うん、結局使う機会がなくてまだやったことがないんだけどね」
頭を書きながら困った顔のサキにセラは思わずドキドキしてしまう。しかしその思考は直ぐに切り替え真面目な顔をしながらヴィーノの傷口を見て何の魔法が適正処置なのか考える。
「簡単なものなら「ヒール」で治りますが、今回は部位破損なので……。「ローレム」という魔法を使って頂ければ治るかと。ただ……」
セラは少し申し訳なさそうになる。
「ん?その魔法に何かデメリットでもあるの?」
「いえ!決してユキ様の魔力量を疑っているわけではないのですが……。普通であれば魔法回復は他者の傷を自らの魔力で再生能力を強化し、回復速度を上げたことであたかもすぐ治ったように見えるのです。ただ部位破損の場合はそうはいきません。部位破損はその部位があればあまり魔力を必要としませんが、その部分がない場合は失った部分だけ魔力で細胞を作り出すことになります。私は光を司る女神で人体の構造をある程度理解していますから魔力さえあれば部位破損を回復することは可能です。ですが……」
要するにセラは人体の構造を理解していなければ再構成することは難しいと言いたいのだろう。困った顔でサキを見つめる。しかしサキにとって人体の構成など知っていて当然の知識。むしろその知識がなければ殺しなどやってられない。殺し屋にとっては殺すだけではなく医療技術も多少は必要なのだ。そのためセラを安心させる声音でいう。
「大丈夫だよセラ。俺もある程度人間の体の構造は理解してる。だからやり方だけでも教えてくれれば後はやってみるよ」
その言葉を聞きセラは安心したのか落ち着き始める。
「では、初めに魔力を操る感覚を研ぎ澄ませます。これは慣れれば直ぐに終わるのですが初めての場合は時間をかけなければ変な形の腕に……。例えば指の本数が多くなったりしてしまうので慎重にお願いします」
サキは普段から練習していた為成果が出たのか魔力の感覚を完全にモノにしていた。それを確認したセラは次の段階に進む。
「後はヴィーノさんの腕の断面からイメージした腕の部分を魔力で形作ります。断面の部分と魔力を繋ぐには繊細な操作が必要なのでゆっくりと、正確にお願いします。そして一つ一つ神経を繋ぐ時別の組織を邪魔しないように上から構成していきます。これも慣れれば一瞬で行うことが可能ですがそれをできる人間はそういませんね。あとは指先まで同じ順序で続けていただきます」
口では簡単に説明しているが実際の作業はとてつもなく集中力を使う。
それはサキにとっても同じで少しづつ魔力を腕の形にしていく。そして綺麗な薄水色の目に見える粒子となった魔力がどんどんヴィーノの腕を形成していく。それを嬉しそうに見つめるヴィーノ。
思ったより難しい作業……。でも慣れれば戦闘中絶対に役に立つ魔法だしもっと練習しておかないとね。
サキは自らの魔力が減っていく事を感じつつ指先の繊細な部分までしっかりイメージし魔力を人体の一部に再構築する。セラはそれをしっかりと見つめるがそれはとても初心者とは思えない繊細さだったがサキの知識とセラがそばに居たからこそ実現出来たであろう治療だった。
そして指先まで粒子が形どられると次の段階に進む。
「そしたら後は腕の魔力と自分の繋がりえおゆっくり切ればヴィーノさんの魔力と一体化し体の一部として機能し始めるはずです」
言われたとおり先程まで自分の魔力だった腕と魔力の繋がりを切ると、光の粒子だった腕の部分はみるみる元の肌の色、形になっていき数秒後にはしっかりと腕になっていた。
「ヴィーノ、腕はどんな感じ?動くかな?」
サキの問いに即座に反応したヴィーノは先程までぼーっとしていたとは思えない動きで立ち上がると腕をくねくね回したりグーパー運動を何回か繰り返すと子供のような無邪気な笑みをサキに向ける。
「ありが………う。ゆきのおかげで………また壊せる……。あは…………ぁはっ」
そして嬉しそうな顔で腕をまじまじと見つめサキに抱きつこうとするがサキがそれを回避すると残念そうな顔であたりを見渡し始めた。
そんなヴィーノは放っておいてサキはセラの方に向き直す。
「ありがとうセラ。おかげで上手くいったよ」
自分の魔力が減った感覚はしていたがそこまで減ったような気はしなかった。サキは気づいていないが、毎日最低限魔力を残し残り全てを使うようにしていたため魔力の最大値が増えていたのだ。
もちろんセラも魔力枯渇を起こしていない事に驚きはしたが、サキのレベルなら部位破損の一部位で倒れることはないだろうと予測していたがそれでも嬉しくて目が潤んでくる。アクエルとフレイアはその光景を見て微笑ましい表情をしていた。
「いいえ。ユキ様の初めてとは思えない手際の良さあってのことで私なんて……」
「いや、光の女神って言われてるだけあってすごい丁寧な教え方だったし的確な指示だったよ。それにイメージもしやすかったんだ。ありがとうセラ」
微笑みかけるとセラは顔を真っ赤にして慌てて話題を振る。
「そ、そういえばオーラの話でしたね!」
そして問題の単語が出てきたことでサキもまた真面目な顔に戻る。
「「オーラ」は最上級鑑定スキルでしか見えない色のついた煙のようなものです。そのオーラは人によって見え方は様々ですが、その存在を知っているのも極一部と言われています。とういうのも最上級鑑定スキルを持ってる者が少なすぎるのも原因の一つで、帝国や他の大国がその情報をひたすら隠蔽していたためでもあります。「オーラ」が表沙汰になれば自分の国の……。見られてはいけない部分まで見えて自国が不利に成る可能性が高いからでしょう。ですが私たち女神には初めからそれを見極めることができます。そしてヴィーノさんの「オーラ」は歪なんです」
「なるほどね。でも歪っていうのはどういうこと?」
オーラがどんなものかわかったが今のサキにはそれを見極めることができない。そしてそれを隠蔽する術も持っていない為十八番である返送も意味を成さなくなるのはこの世界で生きていくことがより困難になったということでもあった。
「はい、彼は……。ヴィーノさんは純粋なんです。純粋でいて悪。平たく言ってしまうと、純粋な気持ちで悪事を働くことができる異常者……。善悪の判断ができていないようなそんなオーラです」
「そっか。でもそれだったら俺のオーラも歪なんじゃないかな?平気で人を殺すこともできるしなんならここに居るみんなを今すぐ皆殺しする事だって出来る」
その言葉に女神たちは一瞬悲しもの表情になるがすぐにサキの目を見た。
「他の人にはどう見えているかわかりませんが、ユキ様のオーラはそんな部分も綺麗なんです。私情を挟んでいるわけではなく事実です!善悪の区切りがつかない異常者のようなオーラのヴィーノさんと違ってユキ様にはわかっていてそれを実行する。そんな意識の切り替えのような……。上手く言葉に出来ませんがそういうオーラなんです!私がユキ様に隷属したいと思ったのもこれが理由の一つでした。今まで見たこともない綺麗なオーラだったんです……」
「なるほどね。でもそのオーラが見える人間が少なくともゆうしゃの中には沢山いそうだね。それにクリエストの街にも居たんだ。何かしら隠蔽する方法とかないかな?」
するとセラは少し唸った。やはり難しいのだろうかとサキも諦めようとしたが不意にアクエルがサキの前に出ると「少し宜しいでしょうか?」と伺ってくる。
「どうしたの?アクエル」
「はい、私にもユキ様のオーラは多少見えておりますが、オーラを隠蔽する方法は無くはないです。ただ……」
そこで口ごもるアクエルに不思議そうにサキは聞き返す。
「何か問題でもあるの?」
「問題といいますか………。いくつか条件があります。一つは鑑定スキルが最上級であること。二つは隠密のスキルを所持している事。そして三つ目が、とあるアイテムが必要だということです」
その説明を聞いたフレイアはアクエルが何を考えているのか察したようで大きな声を出す。
「なるほどねー!アクエルってたまに頭いいよね!」
何が何だかわからないといった顔をしているとセラが慌てて説明をする。
「えっとですね!鑑定を最上級にする方法はそれほど難しくはありません。私たちのような高位の存在を鑑定するかひたすら特殊なものを鑑定しれいれば熟練度が溜まりすぐです。そして隠密のスキルですが……。これに関してはスキル本を手に入れるか剣術と同じで隠密スキルに似通った行動をとり続けることでスキルを入手することができます。そしてアイテム………。これは高難易度ダンジョンの報酬として存在していることは知っていますが、今のユキ様ではダンジョンを踏破することは難しいでしょう。ですがそのアイテムを持っている人間……。といいますか組織を知っています」
鑑定の方法と隠密スキルはなんとかなりそうだと考えるがセラの言うアイテムを持っている組織というのには興味がわいた。高難易度ダンジョンと聞くだけで今の自分には無理だろうとサキでも分かる。しかしそんなダンジョンをクリアしなければ手に入らないアイテムを持っている人間が只者である筈もない。セラに続きを促すと説明を始めた。
「その組織はあらゆる国の汚れ仕事から用心棒の仕事までなんでもこなすプロの組織と聞いています。ですがメインの生業は殺し屋です。ですがなかなか情報が出回らない為組織の名前までは……」
セラがそこまで言うと今まで誰にも意識されていなかったヴィーノが口を挟む。
「シカ………リウス」
セラはヴィーノを見る。しかしヴィーノの視線はサキに向いておりサキもまたヴィーノを見つめていた。
「ヴィーノ。セラのことが見えている?それとも声が聞こえているのかな?」
いつもより低めの声でサキが問いかける。その目にはまるで全てを見透かすような何かが感じ取れた。それはそれだけでサキが警戒しているということでもあった。その視線に射抜かれ、何もされていないはずのヴィーノはじめんに膝をつき弱々しい瞳でサキを見つめるとポツポツ言葉を零す。
「ぁ………。ゆきぃ……嫌いに…………ならない……で」
そのセリフから、表情からヴィーノが何かを隠していないか注意深く観察するがその兆しがなかった為サキは少し声音を柔らかくして言う。
「大丈夫だよ。ヴィーノが俺を裏切ったりしなければ俺がヴィーノを殺すことも嫌いになることもない。だからどうして女神が見えないとか声が聞こえないと言ったのに会話に入ってこれたのか……。教えてくれる?」
その言葉にヴィーノは目を見開きサキを見つめる。その見開かれた目からは否定の感情が痛いほど伝わってきた。まるで嘘はついていないと必死で訴えているように。
「嘘は付いていない。それはわかるよ。でもそれが本当だとしたらどうやって女神たちの声が聞こえているような行動が取れたのか教えてくれうかな?」
「見えない………。でも……声は聞こえるように…………。ゆきとの会話に混ざりたくて……ごめ………なさい」
しかしヴィーノの発言に真っ先に意を唱えたのはアクエルだった。
「ありえません!ヴィーノさんが言っていることが正しければこの短時間で私たちの声が聞こえる能力を身につけたことになります!ユキ様!彼は危険です!今すぐにでも仲間になることを考え直していただいたほ――――」
そこまで言った時だった。
『キィン』
金属と金属がぶつかり合う音が響く。
「え?」
アクエルは今自分に何が起こったのか理解が追いつかなかった。それは他の女神も同じでフレイアもセラもただただ状況を見ていることしかできなかった。
「ヴィーノ?ここにいる女神たちは今は俺の仲間で隷属状態。そして敵じゃないって教えたよね?いうことを聞けない駄犬は一緒に連れて行くことはできないよ?」
冷たい声と視線。
サキの手の中にはアクエルが優しく抱えられており、反対の手にはいつ取り出しのかわからないジャックナイフが握られていた。そのナイフの腹にはヴィーノの突き出した短剣の先端が突き刺さっていたがお互い刃こぼれ一つなくそのまま硬直する。
ヴィーノは一瞬で懐に持っていた短剣を取り出すとそれを声で場所を特定するとそこに向かって短剣を突き出したのだ。
サキの言葉にヴィーノはボロボロと涙を零す。
「あぁっ…………ゆきぃ……。嫌いにならな………いで……。もうしないから………なんでもする………。連れて行かないって言われて……怖くて……」
そのヴィーノの行動にサキはまたモヤモヤした気持ちにさせられる。
まただ。またこの正体不明な感情が邪魔をする。この気持ちは一体なんだろう……?
そこまで悩むサキだがすぐに思考を切り替える。
「そこまで後悔するなら次からはしっかり考えて行動しないとダメだよ。ミス一回で自分は死ぬと思って行動するとミスが減るって俺の知り合いが言ってた。だからヴィーノのそれをやってみたらどうかな。次は……無いよ?」
「ぅうぁ……」
持っていた短剣を懐に戻すとヴィーノは泣きながらサキに抱きつく。サキは今度は避けようとせずにアクエルを守りつつヴィーノを受け止めるとそのままヴィーノが落ち着くまで待った。
どうして俺は今……。榊からもらった言葉をヴィーノに教えたんだろう?どうしてこの世界に来てからずっとこんな……。
サキは確かに殺しのプロであり殺人マシンだった。しかし自らの感情と言う理解を超えるモノに振り回され自分でもどのように行動したらいいか分からずに居た。それが女神やホワイトウルフ、そしてヴィーノに会ったことでそれらがより鮮明に自分を主張しているかのようでますます思考が乱されていた。
暫くの沈黙の後女神たちもやっと状況についていけたのか辺りを見渡す。アクエルもサキのてから飛び立ち女神たちの元へ戻るとセラに慰められていた。
そしてサキは落ち着いたであろうヴィーノのに再び問う。
「どうやって見えも聞こえもしない存在を認識できない女神たちが?」
「それは……。場所はゆきの………目線で……」
「確かに俺の事をジロジロ見てたけど、それじゃ声を聞き取れた説明にはなってないね」
「声は………、上手くせつめ……できない………」
そう言い留まるヴィーノは心から悲しそうな表情でサキを見つめる。それはサキから見ても嘘を付いている目ではなかった。
「実際にやってみて?どうやっているのか。説明もしてくれると嬉しいんだけどね」
微笑みと微弱な催眠を交えることでヴィーノの説明を促す。
すると何が嬉しかったのかぱぁっと歪んだ笑みのヴィーノはサキに近寄ると、先程ナイフを交わした俊敏な動きをしていたとは思えない弱々しい動きで手のひらに魔力を集中させた。それはサキもなんとなくそこに魔力が集まっているだろうと感じ取り更にヴィーノの動きを観察する。
「この魔力……。薄く細くして………。このあたりに張り巡らせた……。後は振動で聞き取る………」
その説明を聞いてやっと理解出来たのかセラはサキの方を向き直る。
「なるほど……。私たち女神の姿は捉えるのは難しいです。ですがこの方法を使えば声は魔力に反応して振動し、体が触れればそこに何かがいることも感じ取ることが出来るということなのでしょう」
セラの説明を聞いてサキは納得する。ようは元の世界の糸電話のようなものなのだろう。サキも仕事で壁伝いに相手の足音や空気の流れで場所の把握などを行う。
しかしアクエルは納得出来なかった。
「だとしても!その方法ならできるとしてもこんな得体の知れない人間がそんな高等な技術を持っているわけ………。それに魔力を魔法に顕界するのでさえ大変なんです。それを魔力を形にしてそこから情報を得るなんて!」
だがアクエルの言っていることも事実である。
ヴィーノが簡単そうにやってのけたことはそう誰しもができることではない。指先からの情報に全ての神経を総動員し、更に目線から目標がどこにいるのか常にイメージし続ける。そして一番大変なのは魔力を形作る明確なイメージだ。魔力は魔法を発動するために詠唱やイメージに乗せて使うもの。
それを魔力の形そのものを変形させる荒業はそう簡単にできるものではないのだ。
「でも、現にヴィーノができているなら信じるしかないねえ」
首を傾げつつもサキはヴィーノの動きをしっかり観察する。その指先の魔力を操る仕草、目線、重心の動き。そしてサキも手のひらに魔力を薄く細くするイメージで集中させる。
「ユキ様?」
それを見ていたフレイアは驚きの表情になる。
サキもまた今まで魔力操作の練習をしていた為か自分の魔力の動きを始めの頃よりも鮮明にイメージできていたのだ。そして細かく編みあがった魔力で風の音也周囲の土の中に魔力を突き刺すことで土の中にいる生き物の生態音まで聞き取れた。振動を聞き取ることに関しては、元居た世界で使っていた技術の応用で苦ではなかった。一通り魔力を操作し終えたサキは一息つく。
「なるほどね……。これなら確かにみんなの声は聞こえて当然だね。そしていい技術を教わったよ。ありがとうヴィーノ」
そして礼の言葉と共に微笑むとヴィーノは目を見開き嬉しそうに自分の体を抱きしめ震える。
そして誰にも聞こえない小さな声で呟く。
「サキ………。ほめて……くれた………。ふふっ………」
そんなヴィーノのことは気にもとめずサキは再び魔力を具現化させるイメージで今度は体を動かさずに指先から魔力のみを細い糸にして出す。しかし数メートル出たところで魔力の糸は切れ霧散してしまった。再び挑戦するが少し距離が伸びただけで再び霧散してしまう。
これは要練習かな。でもうまくいけばこれからの戦いにもうまく利用できるかも知れない。
そんな中まだ納得の行っていないフレイアが割って入った。
「ユキ様!おはなしえお聞いていましたがやはりおかしいですよ!見た目から冒険者でもなさそうですし彼は一体何者なんですか?さっきからずっと鑑定をかけているのに鑑定結果も出ません。絶対に怪しいですよ!もしかしたらユキ様の事を調べている怪しい人間かもしれませんし!」
自分がサキに嫌われるのが怖いのかヴィーノはフレイアを一瞬睨むがサキの殺気で我に返る。そしてサキも気になったのかヴィーノを鑑定してみた。
確かにこの世界に来て鑑定したのは女神や草木だったからなぁ……。
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名前 ヴィーノ
性別 男
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名前と性別が表示されただけで他は表示されなかった。つまりヴィーノはサキよりも高い鑑定スキルを持っているということになる。
俺で上級鑑定……。そのうえってことは最上級鑑定?
「上級鑑定でも名前と性別しか表示されないみたいだね」
すると女神たちは驚く。上級鑑定よりも上位に当たるスキル「最上級鑑定」でなければサキの鑑定を防ぐ方法はない。つまり―――。
「「最上級鑑定スキル?」」
「やっぱり只者じゃないですね……」
「私はおかしいと思ってたわよ……。でもこれ以上ユキ様の前で彼の事を悪く言うのはダメね」
何やらこそこそと会話をし始める女神たちは放っておきサキはヴィーノへ近づく。
「ヴィーノ」
「ふぇ?」
突然話しかけられたことで今まで黙っていたヴィーノは変な声を出してしまう。
「ヴィーノのステータスが鑑定できないのは俺の鑑定スキルが低いからっていうのはわかった。これに関しては自分でなんとかしておくよ。問題はさっきの話の続きなんだけど……。話、聞かせてくれるかな?」
サキが何を聞きたいのか直ぐに理解したヴィーノは思い出すように話し始める。
「僕もあんまり………。詳しいことわからない……けど………」
ヴィーノはとある組織『シカリウス』についての情報を話し始めた。
中途半端になってしまっていますが続きも近々投稿予定です。これからもよろしくお願いします。




