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異世界でも殺し屋さん?  作者: なきもち
42/42

44話

よろしくお願いします




僕の中でサキは特別だ。

ずっと一人だったけど別に寂しいという感情はなかった。知らない人間似合えばそいつらはいつも同じことを言う。


「ヒィイ!助けてくれ!なんでもする!命だけは取らないでくれ!金でもなんでもやるから!」


誰もかかってこようとしない。僕はただ知りたいだけなのに……。

でもサキは違った。僕を殺せる実力をもち、僕を否定しなかった。それだけかもしれないけどそれがすごく嬉しかった。それだけで十分だった。


これまで僕はたくさん壊した。だからいつかは誰かに壊されると思っていたけど。




「ユキになら………」


僕は普通とは違うかもしれない。思考も脆い玩具と同じ考えが出来ない。だから協会のシスターや友達と呼ばれていた子供たちの考えが読み取れなかった。もちろん向こうは僕の気持ちなんて考えようともしなかったと思う。でも何故かサキは僕を見透かしているような気がした。いや、多分見透かしていたんだと思う。

僕がたくさん壊して迷惑をかける存在だとわかっていても連れてってくれると言ってくれた。僕の知識が少しでも役に立つならなんでもしたいと思った。

僕にはできないことがたくさんある。サキが教えてくれる常識はまだ難しいことばかりだけれど頑張って覚えたい。例えサキが僕のことをなんとも思っていなくても僕はサキに全てを捧げたいと思った。だって僕が人にこんなことを思うなんて初めてのことだったから。

サキは異世界の人間だと言っていた。しかも勇者召喚?という形式ではなく神器の影響で飛ばされたと。勇者としてのステータスがなくてもサキは強い。でもそれだけじゃシカリウスの人間は一筋縄ではいかないと思った。勇者という存在に出会い戦ったからこそわかる。


剣さんには同じ剣質じゃないと戦うことすら出来ない。


僕があの時剣さんを呼べたのは何故か分からない。多分勇者の子孫だからその資格があったんだと思う。でもサキは違うんだ。

できれば僕の剣さんを貸してあげたいけどきっと無理だと思った。サキも断ると思う。ならどうしたらいいのか。

昔協会の本に書いてあった[魔剣]それならきっと同じ剣質かもしれない。でもいつこの話題を切り出せばいいのか分からない……。




僕はいつまでたっても自分の思っていることを人に伝えられないのかな………。















「…………」


「……ーノ」


「ヴィーノ?」


何度目か何かに呼ばれている気がして意識を覚醒させる。

考え事をしていたことで周りに意識が向いていなかったことを反省するヴィーノ。そしてサキの呼び声に反応できなかったことを酷く後悔した。


「あ………。ご、ごめんなさ……」


「大丈夫だよヴィーノ。それよりお願いがあるんだけどいいかな?」


ヴィーノは迷うことなく答える。


「ユキのお願いなら……なんでも」


「しばらく俺と殺し合い……。じゃなくて、戦闘訓練という意味で戦って欲しいんだよね。犬相手だけじゃ限界があるし。もちろん殺すのは禁止だけど殺す気で戦うのは前提条件かな」


一瞬ヴィーノの顔が嬉しそうに歪んだがすぐに戻りハッとする。


「犬?……。あ、もちろん……それがユキの願いなら」


「ありがとうヴィーノ。ああ、犬っていうのはヴィーノじゃなくてホワイトウルフを飼ってるんだけど、今はお使いをさせていてね。後でちゃんと説明をするよ」


ヴィーノは少し落ち込んだ様子を見せるがサキが微笑んだことですぐに笑顔に戻った。


「よし」


サキがそう言うとヴィーノに被せていたシーツのような布を一気に払い、首筋や顔についた毛を落とすと全く手入れのされていなかったボサボサの長髪は綺麗に整えられていた。

前髪は少し右目にかかる程度の長さでしっかりストレートになっており、後ろは首筋くらいの長さまでに合わせられている。


「わぁ……。いつもより見える」


「気に入ってくれたなら嬉しいかな。普通に男前でかっこいいと思うよ」


「っ………」


ヴィーノはそのまま俯いてしまった。


とりあえずこれで一段落かな?あとはおつかいがちゃんとできていればいいんだけどねえ。


「そろそろ戻ってくるころなんだけどね」


そう言いながらあたりに視線を向けるサキを見てヴィーノもあたりの気配に集中するが何も感じなかった。


「サキ?」


「ああ、特に何もないから気にしなくても大丈夫だちょ。まだここから動くわけにはいかないから少し休んでいてもいいよ?」


ヴィーノは首をかしげながら聞いてくる。


「ユキは……。何かするの?」


「俺は魔法の練習とかスキルの修練とかかな。まだこの世界には俺より強い奴だって沢山いるだろうし」


ヴィーノは逡巡するとサキに提案する。


「じゃあ、僕が………その……。手伝う」


ヴィーノから積極的に意見するのは正直意外だった。自分のレベルにあわない人間であればすぐに切り捨てるであろう提案だったが、何故かヴィーノならどっちでもいかなと思えたサキ。


「じゃあお願いしようかな。それとこれを渡しておくよ」


嬉しそうな顔のヴィーノに何かを布を手渡すサキ。

広げてみるとこの世界では見ない形の服のようなものだった。それはサキが普段愛着しているワイシャツである。


「それなら動く時も邪魔になりにくいからね。街に行けばもっといい服を買ってあげるけど今のところはそれで我慢して欲しい」


さっとワイシャツに着替え少し腕を回したりジャンプしてみるとヴィーノはまた嬉しそうにサキの顔をみる。


「じゃあ始めようか。さっきも言ったけど、訓練とは言っても殺さない程度が最低条件。他は特にないかな。質問はあるかい?」


「何を使っても……いい?」


さっきの剣のことかな?


「この辺の地形が大きく崩れない程度なら何をしても大丈夫。あまり目立って近隣の冒険者や役人が来たら大変だからね」


「わかった」


二人はそれ以上喋ることはなかった。お互いが向かい合って臨戦態勢になる。

数秒の後、最初に動いたのはヴィーノだった。動きと言っても指先がほんの数ミリ動いただけだがサキはそれを見逃さなかった。

すかさず指先の斜線から切れるように体をかわすと後ろのあった細めの木に切り目が入る。

そしてヴィーノがまた指先を動かすと細い木はバランスを崩し中間のあたりから綺麗におられたまま地面へ倒れた。


「糸状の武器かな?目には見えないけど」


「今のをかわす人間はユキが初めて……。でも……武器じゃない」


「武器じゃない?」


「これは魔力の……。糸……。それに地属性の魔法で加工して……更に身体強化をかける………」


勇者の子孫だからなのか強いならこんなこともできるのかと素直に感心する。魔力操作をマスターすればこんなことも出来るのだろう。


「俺も出来るように練習しておこうかな?……」


ぼそっと呟いたつもりがヴィーノは嬉しそうな顔で返答を返す。


「ユキならすぐ……」


じゃあ次は俺の番かな。


サキはアイテムボックスから一瞬で何かを取り出す。それを目にも止まらぬ早さでヴィーノに向かって投擲するとヴィーノは避けようとしてその場を飛び退いた。

サキが飛ばしたのは長めの釘のような暗殺用の武器だった。ヴィーノが後退したその着地地点に素早く移動し後ろからジャックナイフを刺そうとしたが、どうやったのかヴィーノは変な方向へ体を曲げると空中で回転しその反動を利用してかかと落としで反撃する。サキは後ろに後退し態勢を立て直すがお互い全く息は切れておらず余裕の表情だ。


どういう動きをしたらあんな回転できるんだかねえ。もしかして体のつくりが違うとか?


色々考えることはあるがヴィーノはそんな隙を与えなかった。

次にヴィーノは身体強化の魔法を唱えサキに突っ込んでくる。考えなしに突っ込んできているわけは無いと思ったが動きが雑すぎるのだ。


避ける?いや――――。


反撃に出ようとした瞬間だった。サキの攻撃の間合いに入る寸前でヴィーノの体が二つに分身し後ろと前を挟まれる形になる。

これも何かのスキルかと思ったが先ほど確認した時にそのようなスキルは見当たらなかった。つまりこれは――。


ただの身体能力と身体強化で物理的に不可能なことを可能にした?


サキの中の常識は一瞬で崩れる。物理法則を無視した動きを無表情で行うのだ。これに驚かない人間は居ないだろう。

しかしサキもまた普通の人間ではない。自分の常識に囚われずその場の環境や状況にすぐに適応するための対策を練る。

今までもそうやってきたためかヴィーノの動きが尋常でなかったとしてもその柔軟性と冷静さはそのままだった。


考えはしたけど……、どっちが本物かは流石にわからないや。


流石のサキも初見で相手の技を見破るのは中々難しかった。それも異世界で未知が多すぎる状況ならば最もだろう。サキはアイテムボックスから木の枝から作っておいた杭のようなものを2つ取り出し今まさに攻撃を仕掛けてこようとする二人のヴィーノに向かって投げた。

ただの木の杭ならばそのままヴィーノは突っ込んできただろう。しかしサキが投げた杭はただの木の杭ではなかった。


「無詠唱………」


そう。サキは無詠唱で木の杭の先端を『水刃』と同じ容量でコーティングしそれを投げていたのだ。『水刃』でコーティングされた場合、例え木製でも威力は段違いである。

下手をすればその辺のナイフよりも切れ味があるだろう。


それをあの一瞬で見破って攻撃を瞬時に止めてくるヴィーノもすごいんだけどねえ。


サキは決して慢心はしなかった。それは元の世界では常識だったと同時にサカキにそう教えられていたからである。優れた技術を持っている者がいればそれがたとえどんな異常者だったとしてもサキは素直に感心する。感心し認めたうえでその技術を盗むのだ。


まあ今回のアレは流石にできないかな?


「サキ………強い」


「まあそこらへんの人間よりほんのちょっと強いかもしれないねえ」


笑顔で返すとヴィーノも嬉しそうに笑顔で返す。その瞬間――。


空気が変わった。

ヴィーノの周りを禍々しい空気が包み込んだと思うとそれは次第に綺麗な紫の光になりヴィーノの周りを更に包み込んだ。


これがオーラ?……。


サキに見えていたのは間違いなくオーラだった。そしてそれはとても綺麗で、まるで薔薇の花のような印象を受けた。とても綺麗で純粋な花だが触ろうとすれば自らの身が滅ぶ。そんな危険さを感じるオーラ。

サキが自分のオーラを確認できたと思ったのかヴィーノは少しだけおいてから何かを唱える。


「おいで、僕の剣さん」


すると先程散髪中に出したヴィーノの聖剣であろう光輝く剣が現れた。


さっきの聖剣かな?にしては害意を一切感じない……。


そう、ヴィーノの聖剣からは害意を一切感じず、寧ろ引き込まれそうな何かを感じたのだ。ヴィーノの召喚した聖剣はそのままヴィーノの手の中に収まるとヴィーノの周りに漂っていたオーラが一気に剣の中に吸い込まれオーラは見えなくなった。


驚いた……。あの剣を使えばオーラの隠蔽も出来るって事だよね?―――。


考え事をしたその一瞬。目を離さなかったはずがヴィーノはサキの視界から消えた。

どこへ行ったのか慌てず周りの気配を探る。しかし何も感知することはなくサキは次の手を考える。


なるほどね…………。


ヴィーノは一向に姿を現そうとしないが、サキはそんな中一人動いた。両方の指先から魔力の糸をだしサキの周囲一体に網のようにして被せる。するとサキにはこの範囲内全てが手に取るように伝わってきた。

木の本数、虫の位置、女神たちまで全てを感じ取れた。そしてもう一つ。

サキの目の前でじっと動かずこちらを伺う動きをしているヴィーノの反応を捕らえた。


練習してた甲斐があったかな。


サキは何をしている時もずっと指先から魔力を糸の形にする練習を行っていた。感覚を掴みそれをまた効率よく復讐することでようやく形にはなったようだった。しかしまだ完璧に習得したわけではなかった為分からなかった。

サキの目の前に動かないヴィーノの反応ともう一つ背後にも同じようにヴィーノの反応があるのだ。


まだ俺の理解出来ない事が多いけど……。


そう考えたところでサキはアイテムボックスから刀を取り出すとまずは目の前にいるであろうヴィーノの反応に斬りかかるが、刀は空を切り何も捉えることは出来なかった。そしてサキの背後から一瞬害意の無い純粋な殺意を感じる。

慌てることなく振りかざしていた刀の刃を反対に向け背後に居るであろうもう一つのヴィーノの反応へと斬り返すと、甲高い金属音が反響する。


「なんで?……」


驚いた表情のヴィーノだが姿勢は崩さず二人の剣はぶつかりあったままだ。


「魔力の糸でね」


そこまで言って通じたのかヴィーノは表情を変えずに微かに口角を上げると、更に剣に力を込めサキへ斬りかかる。



ヴィーノの剣から凄まじいエネルギーを感じ取った。死ぬ攻撃が来るわけではない。サキならば多少の無理をして耐えられるであろうエネルギー。しかし―――。


「ヴィーノ。ストップだよ」


次の瞬間。サキは刀をアイテムボックスにしまい戦闘終了の合図を送るとヴィーノから発せられていたエネルギーは一瞬で霧散した。


「な………で?」


「ここら一体を吹き飛ばしたらいくら戦闘訓練でも始末に負えないよ」


そう。ヴィーノのエネルギーにはここら一体を吹き飛ばし更地にすることも可能なほどのエネルギー量だったのだ。それではすぐさま帝国から兵隊が送られてくるだろう。ヴィーノはオーラを隠すことが出来るがサキにはまだそれが出来ない。現場から逃げてもいずれ見つかってしまうだろう。それを説明したところヴィーノは落ち込んだ様子を見せる。


「ごめんな……さい……」


「いや、おかげでまた色々学ぶことも出来た。それにヴィーノの戦闘力の高さも知ることが出来た気がするよ」


ヴィーノの戦闘力は想像した遥か上をいっていた。

単純な戦闘力で言えばサキよりもヴィーノのほうが上だろうと思った。しかしセンスで言えばサキとヴィーノには圧倒的経験の差があった為それをうめる術をヴィーノは持っていなかった。

ヴィーノは少し考える素振りを見せる。


「どうかしたかい?」


何か言いたそうなヴィーノの意思を汲み取る。


「サキ………。ずっとオーラ出てる……」


「あぁ、俺はまだ隠蔽スキルととあるアイテム?が無くてね。オーラを隠すことが出来ないから色々面倒事の種は残したくないんだよね」


「剣召喚すれば……」


「それはヴィーノとひと握りの人間しか出来ないと思うんだよね。少なくとも俺には出来ないんだ」


「…………」


「まあ、ヴィーノがそこまで気にすることはないよ。隠密スキルっていうのもそのうち取れると思うし。後はシカリウス?の誰かが持ってるアイテムを手に入れるかダンジョンに潜ってそのアイテムを手に入れるかだからね」


「僕も……手伝う……」


「ありがとう」


不器用ながらもサキの力になりたいと訴えるヴィーノの気持ちはわかるつもりだった。






全く理解出来ない………。戦闘中も戦うと言うより俺の知らない技術を見せることで覚えさせようとする。積極的に協力する姿勢を見せてくる。今までこんなことする人間見たことない……。

サカキ以外に何かを教わることはなかったからなぁ……。


ヴィーノや女神たちにあ出会ってからずっと思考をかき乱されているような感じがした。理解出来ない思考は理解出来ないのだから仕方ないと思う。しかし―――。



















まあ、何かあれば消せばいい………。俺にはサカキ以外要らない――――。






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