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異世界でも殺し屋さん?  作者: なきもち
35/42

36話後編

投稿頻度を落とさずいけたらと思います。よろしくお願いします。





ヤドリギに戻ったサキを出迎えたのはギルとロイズだった。


「ええ、二人共どうしたんです?なんだか街の様子も慌ただしかったですが……」


何も知らないかのような顔で答えるサキ。だが二人の形相はとんでもなく焦っているようだった。

最初に口を開いたのはギルだ。


「お前街で何か声かけられたり……なんか言われなかったか?」


それは心配している顔と少しばかりの疑いの顔だった。

ロイズにはその感情は微塵も感じられないがやはりギルという男は一筋縄では行かないようだと再認識するサキ。


「いえ?ただ街の中が少しそわそわしているというか……。何かあったのですか?」


サキのその言葉を聞いてホットしたようにギルは今の現状を説明し始めた。

国王が何かを盗まれ激怒していること。ここ最近この街に出入りした人間を探していること。そしてサキの知り合いと言う設定の「ガイア」を探しているということ。


「このままだと彼の知り合いだというお前に目をつけて城に連れて行かれるだろう。ただでさえ異国から来て目立つ容姿なんだ。何もしていないことはわかるが俺達はお前を逃がしてやりたい」


まさかこの二人がどこまで『ユキ』を信用してくれているなんて思わなかった。にしてもここまでおおごとになっているなんてね………。


サキは考える。

このまま二人に匿われて逃げれば確かに見つからない確率は上がる。しかし………。

サキが気になったのは勇者大輝の存在だ。この世界なら連絡手段は豊富だろうその中で死人を生き返らせ情報が聞かれていたりでもしたらと思うと悩まされた。


一応処理はしたけどあれも完璧とは限らない………。そのうち蘇生条件も調べておかないといけないか。


この状況でサキは街に残ることにしたのだ。それも「ガイア」として。


「分かりました。みなさんのお心遣い感謝します。ですがこんなに警戒レベルの高い状態で逃げられるのでしょうか?……」


そんな心配はないとロイズが得意げに口角を上げた。


「はっはっは!そういうと思ってしっかりルートも確保しているぞ?スラムの城壁には王国兵の知らない密輸ルートがあってな………」


守秘義務に反することをペラペラしゃべっているがいいのだろうかと思うサキだがギルは「やれやれ」と呆れつつサキに準備をするように促す。


「まあそういうわけだからとっととヅラかる準備をしなってことさ」


言われるがままに宿屋の皆に挨拶を済ませスラム街の方へ移動を始めるサキとギル一行。それと時を同じくして街にはいち早く報告を受け取った『勇者』の一人が向かっていた。
















「以上がクリエストでの全てでございます」


「全てって………。それじゃあ何の報告にもなっていない気がしますが……。分かりました。これからそのクリエストに向かいます。そして一刻も早く『彼』の行動を抑制しましょう」


「御意」


その短いやりとりは迅速に行われ承諾の言葉を後にその部屋は静寂に包まれた。まるで初めから誰も居なかったかのように。










サキは二人に連れられてクリエストの脱出に成功していた。


「ここまでくれば大丈夫だろう」


「ありがとうございます!本当みなさんにはいろいろとお世話になりました。まだ聞きたいことも沢山残っていましたが……。また会えますよね?」


「ったりめーよ!というかもう合わないとか言いだしたら一発殴るところだったぜ?俺が認めた男なんだからな」


そう二カッと笑うギルは本気の目をしていた。よほど『ユキ』のことを気に入ってくれたのだろう。しかしロイズは神妙な面持ちで口を開く。


「ユキ君。いらんことだとは思うが、ステータスカードはあまり他人に見せないほうがいいだろう。冒険者登録も完了している今わざわざステータスカードを見せなくても冒険者ギルドで名簿確認が可能だ。君は何かと目を見張る才能が有る気がしてね。あまり深い意味ではないから安心してくれたまえ」


「そうでしたか………。僕の国ではステータスの情報も曖昧なところが多いので基準も何もわからないのですが僕のステータスは周りから見てどうなのでしょうか?」


素直に思っていることを聞いてみた。勇者の話や女神達の話を聞いた今自分の持っているステータスに関しての情報はあまり当てにならない。今後関わりを持ちにくい彼らに聞いておくのもいいだろうと思ったのだ。するとロイズは少し難しい顔をする。


「ステータスか………。昔はレベルが全てだったと聞いたんだが、何があったのか、勇者様が召喚されてからステータスの見方が変わった。詳しい話は知らんが、圧倒的レベル差があった教官を敗北寸前まで追い詰めたのが当時レベル2だった勇者様だったらしい。それが原因でステータスの概念は覆されたそうだ」


なるほど………。レベルはステータスの基礎になりうるけど重要なのは話から察するにスキルかな?情報はセラから聞いた通りであっていたみたいだね。


すると今まで黙っていたギルが口を開く。


「まあお前のことだから考え付いたと思うが、ステータスはスキルが重要になってくるってこった」


「そうなんですね!ありがとうございます……」


「そんなに落ち込むなって!その年で魔法適正があるだけでも十分だぞ!?」


どこか同情したような眼差しで見つめてくるギルだがサキは別に落ち込んでいる演技をしたつもりはなかったためギルなりの優しさだったのだろう。その言葉をありがたく受け取るとロイズとギルは真剣な顔に戻る。


「まあ、こんな別れ方になっちまったがいつでも遊びに来いよな!俺にとってお前はもう弟弟子なんだからよ」


「そうだな、君の反射神経はとても素晴らしかった。もし食うに困ることがあればいつでも私のとことに来てくれたまえ!」


そう言って二人は暖かく見送ってくれた。


「ああ、最後に言い忘れていたが、この先の森は危険だ。いくら君の目が良くても体力的にも戦力的にも身の安全を確保するのは難しいだろう。森の無効は帝国の地となっている。行くならば逆方向をおすすめしよう」


そう言うと「そろそろ戻らねばならないのでな!」と言いながら二人は街へ戻っていった。


「ありがとうございましたー!」


サキは二人の姿が見えなくなるまで手を振り続ける。やがて二人の気配が完全に消えたあと、周りに人がいないことを確認すると持っていた荷物を全てアイテムボックスにしまいこんだ。


「なかなかいい人たちだったけど。なんでそこまでして俺を逃がしたんだろ?」


サキにとってはまだ出会ったばかりでそこまで信用する仲ではなかったはずだった。しかしあの二人の行動はサキにとって予想外のことばかりだ。

戦闘の指南も自分の時間を犠牲にして教えていた。ギルドでのステータスカード偽装もバレれば自分たちにも責任が降りかかる危険性があるにも関わらず請け負っていた。


俺にもいつか分かる日がくるのかなぁ…………。


そんなことを思いつつサキは『ガイア』の変装の準備をし始めた。国王がガイアを探しているのなら危険があるもののガイアの変装をして情報収集をするのが一番だと思ったのだ。


みんなにはもうしばらく森の中で留守番してもらうことになるな。


変装を終えたサキは城の方へと全速力で向かう。

途中家の屋根を飛び移りながら移動したため最後に着地したのは城内の庭のような場所だった。


バルコニーかなにかかな?


するとそんなサキに声をかけるものがいた。


「何者だ!ここは関係者以外立ち入り禁止のはず!」


「ああ、この国の兵隊さんかな?私はガイアという者だ。王が私を呼んでいると聞いて馳せ参じたのだが」


サキの自己紹介を聞いた近衛兵は険悪な顔になると直ぐに持っていた長槍をサキに向けてきた。


「貴様が王の探していたガイアだな!貴様にはそのまま武器を捨てて同行してもらう!持っている武器を全て地面に置き両手を頭の上にくめ!」


サキは言われるがまま持っていた飾りの剣を地面に置き両手を頭の後ろで組んだ。するとほかの近衛兵が武器を拾い、後から駆けつけた近衛兵達に連行されるような形で王のいる謁見の間へと連れて行かれた。


先が侵入した庭からしばらく歩くと以前忍び込んだ時とは別の近衛兵が廊下を徘徊していた。以前とは違い何か雰囲気が険しかったのはきっと警戒態勢のレベルが高かったからだろう。

いくつもの曲がり角を曲がりひときわ目立つ大きな扉の前に立たされ両腕には縄を結ばれ完全に罪人のような扱いのまま謁見の間に通された。


そこは綺麗な濃い赤の絨毯が敷き詰められており、中央には玉座。そこに座しているのは聞くまでもなくこの国の王であろう。国王は怒り狂った顔で座っていた。


「貴様がガイアか?」


「はい」


国王は確信があるのか直球な質問をしてきた。


「貴様は女神のクリスタルと言うアイテムを知っているか?」


このまま本当のことを言うべきか?………。


嘘をついても構わなかったが、このファンタジー世界には自分の知らない術で敵の情報を探る魔法等もあるかもしれない。そこで嘘をついたら更に変な目で見られてしまう可能性があった。かと言って自分がクリスタルを持ち出したとなればアイテムを返せだの死刑だの面倒な方向へ話が進むのは明白だ。


一番最悪な状況は俺が女神の声を聞くことができ、その姿を視認することが可能って事がバレた時……。


そう考えたサキは逡巡した後直ぐに顔を上げ答えた。


「はい。知っていますが、それと俺がどうしたというので―――」


その後続けようよするが許されなかった。


「今質問しているのはわしじゃ!貴様は聞かれたことだけを答えよ!」


何もそんな形相で怒らなくても………。


そう思うサキだったが王は悪びれもなく質問を続ける。


「単刀直入に言おう。我が国にも女神のクリスタルは存在していてな、先日それが盗まれたのだ」


「ほう………。それでどうして他の物ではなく俺なのですか?」


「この国はそれほど大きくはない。ほとんどの人間の素性は調べてある。その中で一番怪しいのは貴様と数人の貿易商人だけだ。しかし最近この街に来たという商人もほとんどが貧弱そうな男たちでな。ギルド員に聞いても疑わしい報告はなかった」


「なるほど?ですがそれだけで俺を犯人扱いされたんじゃぁたまったもんじゃない。何か証拠はあるんですか?」


その言葉を待っていたと言わんばかりに王は顔を歪ませる。


「ははははは!存外世の中を知らんのだな?我が国には宮廷魔導師に匹敵する魔法師がおる。そやつは他人の特別なオーラを追跡するユニーク魔法を使うことが出来るのだ。先ほど貴様が連れてこられたときに調べさせたとき、宝物殿に残っていた微弱なオーラと貴様のオーラが一致したのだ。あとは言わんでもわかるな?」


そうか………。この世界にはまだまだ俺の知らない情報が多いみたいだ。


そこまで考えると次の手を考えたサキが行動に出ようと腕の縄を解いた瞬間『彼女』は現れた。








サキが謁見の間に連行されたのと時を同じくして、城門前には人だかりが出来ていた。


「私たちは帝国から派遣された勇者です。諸事情により国王様への謁見を申し立てます」


クリエストの王城の前には黒髪長髪の女性が立っていた。

何やら王に用があると言っているが今王はそれどころではないだろう。しかし状況を把握している彼女の態度は普通とは違っていた。


「今王様は忙しい身でありまして………。いくら勇者様でもお通しできませ―――」


『スッ』


刹那。


腰に指してあった剣を近衛兵の首へと突きつけたのだ。


「なっ!?」


「私の言うことが聞けないのですか?事情は全て把握しています。そちらがそれでも動かないのであれば強硬手段を取らせていただくだけですが?」


何の感情もこもっていないような冷たい目に怯えた近衛兵はおずおずと門を開くことしかできなかった。

すると勇者と名乗った女は先ほどの態度とは一変し穏やかな笑顔でお礼をするとそのまま城の中へ入っていったのだった。









『バン!』


勢いよく謁見の間の扉が開かれる。

謁見の間に居た近衛兵と王、そしてサキの目線が扉を開けた彼女へと向けられた。


「何事じゃ!無礼であろう!」


すぐさま王は彼女へと怒鳴りつけるが怯むことなく彼女はサキの横へと並びサキを一瞥するとそのまま王へ向き直ってこう告げた。


「先ほど帝国に連絡が入りました。我々帝国はこのクリエストとは停戦状態にありましたが、近々勇者を交えた軍隊で攻め込む所存です」


突拍子もない彼女の提案に王は即座に反論する。


「何故じゃ!何故突然攻めてくることに!?それにお主は何者だ!いくら帝国の使者でもこのような横暴な―――」


王の言葉を遮り女は自己紹介を始める。


「申し遅れました。私は現在モノシリウス学園にて学問に励んでおります勇者の小鳥遊 優香と申します。これより国王クロンガム様には談合か開戦かを選んでいただきたいと思います」


突然すぎる選択肢に唖然とする王。そんな中サキはいたたまれなかった。


よりによってこの姿でか………。オーラなんてものも意味がわからないし更に勇者の登場……。自体はますます嫌な方向に進んでいくね……。


すると小鳥遊はサキに視線を戻すと問いかけた。


「あなたはこの王とどういったご関係なのでしょうか?」


あー………。何とかしてこの街から出ておけばよかったかなぁ。でも本屋のおじさんのところにもよらないといけないし………。


サキはこの世界に来て初めて思考の破棄をしたいと思った。

まさか自分が情報を入手するために潜入したところに勇者がくるなど誰が予想できようか。このままガイアを捨て新たに人格を作らなければと思い始めるサキ。


勇者のスキルもステータスも不明な今下手に動くのもまずいかもしれない……。でもこのまま何もしないで変な魔法をかけられても困るしなぁ………。何もしないよりはマシか。




意を決してサキは動いた。





















至らぬ点多々ありますがこれからもよろしくお願いします。また誤字脱字の指摘大変助かっております。

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