30話
今回は少し短めです。
私は驚きを隠せませんでした。
自分を迎えに来るのはいつも国の兵士や重鎮の人物だったから。でも今私の目の前にいるのは今までに見たことのない人物でした。
いつ入ってきたのかわからないけど扉を開ける音どころか気配すら感じなかった………。
その人間は最初女性のように肌が綺麗でした。女の子だと思っていたのですがよく見ると男性の顔立ちをしています。
髪は中性的な長さでとても穏やかな雰囲気です。でもどこか儚い目をしています。私にはこの人間が何を考えているのかわかりません。でもなんだか不思議な雰囲気の人間でした。
明らかにこの城の兵士ではないでしょう。ですがここは城の宝物殿です。となれば泥棒でしょうか?
しかし私をみつていることからもしかしたら目的は私自身………クリスタルなのではないかと思います。
私はとても目立つ場所に置かれています。泥棒であればいち早く私の存在に気づくでしょう。ですが私は彼の行動で考えを変えました。
なんと彼は私を手元に引き寄せるとそのまま封印の紙を剥がそうとしたのです。
ダメです!それをはがしたら!……………。
私は女神通信である程度の情報は知っていました。他の女神たちはすぐに意識がなくなってしまったのか返事がなくなっていきましたが私は属性の関係性自我を保っていることができました。
その間集めていた情報の中にクリスタルの封印を無理にとくと女神自身の魂が崩壊するというものがありました。他にも沢山の噂がありましたがこれが一番怖かったのです………。他の二人が無事だったとしても私の時も無事だとは限らないのですから。
しかし彼は今まさにその封印を解こうとしている。
私はこんな死に方をするのでしょうか?…………。まだ皆と話したいこともあります。本当の自分の悩みを打ち明けられてすらいません。
相談に乗ると言ってくれた親友の顔が頭に浮かびました。いつも一緒にいた仲の良い親友の顔が。
その時私の視界は光で溢れました。
眩しい…………。さようならみんな……。
私は死んだのでしょうか。女神に死はないです。ですが魂が崩壊すれば話は別でしょう。
二度と輪廻の輪に戻ることはなくその魂は『無』になるのです。
しかしいつまでたってもそんな様子は無くむしろいつもと違い体が軽く感じられました。目を開けてみると目の前には先ほどの彼が私を見下ろしていました。
何か甘い匂いでしょうか………匂い?
クリスタルに封印されている時は匂いは愚か風すら感じることができませんでした。ですが今は違います。
私は自分の体が元に戻っている事に驚愕しました。そんな私をよそに彼は渡しに話しかけてきました。
「こんにちは女神さん。体は大丈夫?」
「え…………ぁ」
あ………。ずっと口で話すことがなかったのでろれつがうまく回りません。勢いで変な声だけ返してしまいました。
きっと変なやつだと思われてしまったでしょう……。しかし泥棒かと思ったのですが泥棒にしては丁寧すぎると思いました。
普通ならクリスタルのママに使用したほうが言うことも聞かせることもなく使い勝手がいいはずなのですから。そんな思考をしている私でしたが彼は更に続けます。
「とりあえず今は休んで。俺はアクエルとフレイアから君の事を聞いて連れ出しに来たんだ。今は何も言わず付いてきてくれるかな?」
その言葉を聞いて私はほっとしてしまいました。
だって彼の言う二人は私の親友なのですから。それに気になっていた人間がまさかこんな優しい方だとは思っていなかったのです。
欲のない目に相手を包み込むような声音。何故か彼の雰囲気は落ち着いてしまうのです。初めての体験でどうしたらいいのかわかりません。
突然なのでやはり少し疑ってしまいます。
完全に信用出来るわけじゃないですけど…………。私にはこの人間がいい人にしか見えないのです。
私は迷った末ずっと考え込んでしまいました。
「もしも嫌なら今日はこのまま帰ると。声が出しにくいならジェスチャーで答えて欲しい。いいのなら首を縦に、嫌であれば横に振ってくれるかな?」
なんと私が考え込んでいることを配慮してそこまで気遣いをしてくれるのです。
今までにこんな人間を見たことはありません。ですがこのままここを抜け出したら彼に迷惑をかけてしまうでしょう。
そして二人の女神の居場所であるそこに私の居場所はないかもしれない。
ですが彼を見つめているとそんな私でも包み込んでくれそうな気がします。それほどまでに自愛に満ちた目をしているのです。女神である私がこんなことを思うのは行けないと思うのですが……。
って、私は一体何を考えているんでしょう。
しっかりするのよセラ!
セラはふと昔のことを思い出した。
相手を信用するのにたるかどうかは目を見ればわかる。自分の創造主たる神々がそう言っていたのを思い出したのだ。
セラは男の目をジッと見つめる。どれほどの時間がたっただろうかわからないがその目には嘘偽り無く自分を心配してくれている顔だった。
私は…………、私の選択を信じようと思います。
この人についていけばきっといいことがある。人間不信になりかけ心を閉ざしていたセラの心を少しでも開かせた瞬間だった。
セラは思い切って首を立てに振る。
すると男は自分の医師を汲み取ってくれたのかとても素敵な笑みを浮かべてくれた。そして自分の内ポケットを指差す。
別にとんでも構わないが久しぶりすぎて声も出せなかったのだ。心配してくれているのだろう。初対面でこんなに親身になってくれる人間をセラあ初めて見た。
もちろん女神が見える人間自体少ないため当然のことなのだろうが、人間の性格や性質を考えるとやはり珍しいことなのだろう。
「外に出るまではここで休んでいて欲しい。本当はベッドに休ませて上げたいけど今は狭いポケットで許してね」
女神といえども所詮は目に見えない存在。しかし女神通信で稀に自分たちが見える人間がいると聞いたことがあり二人の女神は見える人間に助けられていると言った。話を聞くだけで経験がなく、ここまで優しくしてもらった事のないセラの心は揺れていたのだ。
私は女神………。こんな気持ちはいけないのです……。
しっかり気を持つと男のポケットに入る。しかし男の顔が見えるなくなると途端に心に隙間ができた感覚がした。
まだ自分は不安になっているのだろうか。
ポケットから顔だけを出し男を見つめているとまた安心感が心を包む。
創造主様……。私はダメな女神になってしまったかもしれません。
一人心の中でそうつぶやくと、男の温もりを感じつつ城をあとにしたのだった。
女神を連れてヤドリギに戻ったサキは女神達を再開させた。
はじめは寝ているから無理に起こさなくてもいいとセラは言っていたが朝にはやることがあったので皆を起こしたのだ。
フレイアとアクエルは泣きながら抱き合ってお互いをなだめ合っていたが女神通信・勇者・Lv150を閉じ込められるクリスタルを作る者………。問題が山積みなのも事実だ。
サキは思う。
何もしてないのになんで問題ばかりに足を突っ込んでるんだろう?
今までにない経験ばかりで悩むサキだった。




