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異世界でも殺し屋さん?  作者: なきもち
28/42

29話

よろしくお願いします





セラという女神はとても慈悲深く、人間の絶対的味方だった。

人間は他の村や国の封印された女神のクリスタルの力を恐れ自分たちにも力を貸して欲しいとセラに頼んだ。

しかしセラには人間の味方であっても争いごとは好きではなかった。またセラ自身にも戦う能力はなかった。

それを知った人間達は毎日恐怖に襲われることになった。自分たちには女神の力に抗うことはでいず、頼みのセラには戦闘力がない。

しかしセラはその度癒しの魔法をかけ人間達を癒した。

だがそれも長続きしなかった。

女神達の通信魔法ではセラはあまり話す方ではなかったが、ほかの女神が封印されてしまったことを聞くととても悲しんだ。

そして察していた、自分もいつか封印されてしまうだろうと。自分には戦闘能力がない。自分より優れた女神達が封印されているのだ。自分が耐えられるわけないと思った。

争いごとが嫌いと言ってもそれは口実にすぎない。本当は戦って助けたい。

それが彼女の本望だからだ。

村人たちはそんなセラの思いも知らずクリスタルの話しを聞くと我先と飛びついた。

村の中で一番の金持ちだった男がクリスタルを独自の裏ルートで手に入れセラをクリスタルへ誘導したのだ。

セラはわかっていたが拒むこともなくクリスタルに封印されることにした。

しかし村人たちはまんまと騙されたのだとセラを馬鹿にした。今まで守っていてくれたセラを裏切り、ただの道具として使い始めたのだ。

彼女の司る属性は光。

もちろん戦う力などクリスタルに閉じ込めたところであるわけがない。それに人間達はがっかりし同時に思いついた。

癒しの力なら人を回復することも生き返らせることも出来るのではないかと。しかしそれはなんの代償もなく出来る事ではない。

生き返らせる時、その術を使ったものの魂の生命力を削るのだ。それを知らない村人たちはやがて戦争になっても何度も何度も死んでは行き帰りを繰り返して戦った。

そんな戦法がいつまでも続くわけはなく王国との戦いに敗れそのクリスタルは奪われてしまった。

セラはとても嘆いた。

自分が大好きな人間達が争い自分のせいで魂が削れていき、やがて顕界に達した魂は尽く死んでいってしまったのだから。

本来ならば輪廻の輪に戻るはずの魂は永遠の死を言い渡され二度と転生することはなくなった。

セラはそれ以降心を閉ざし必死に何年も何十年、もう数えることをやめるほど長いあいだ女神通信魔法で声をかけ続けた。

そしてついに近くに女神通信を受け取るものが現れたのだ。

それがフレイアとアクエルだった。二人が目の前に来てくれたときはいつも通りの自分を演じた。自らの魔法のせいで何人もの人間が死んだなどと自分の口から話せるわけがなかったからだ。

二人共一度はクリスタルに封印されたものの心優しい人間に助けられたらしい。女神が見える人間は珍しいが優しい人間というのはもっと珍しかった。

彼女はそれだけでとても嬉しかった。自分の好きだった人間にもまだ心優しいものが残っていてくれたとわかったのだから。

彼女は自分は封印されたままだというのに自分のことのように喜んだ。二人はまだこの街にいるという。ちょこちょこ会いに来てくれると聞いたときは嬉しさと悔しさでいっぱいになった。

本当の自分を見せられない悔しさ。一方でこんな自分に会いに来てくれる友達への嬉しさ。

彼女は二人を見送り再びひ一人になる。

暗い部屋の中一際目立つ場所に大切そうに置かれたクリスタル。

王国にとってこのクリスタルの重要性は高かった。使用者の魂が削れると言うことは判明しておらず、適応しないものは死ぬと言われることや、魔力の少ないものは死ぬ等見当違いな思い違いをしていたのだ。

それでも戦争で傷ついた兵士達や、戦死した屈強な戦士を生き返らせるのに重宝された。例えどんな犠牲を出すと分かっていても10になる者のためなら1を切り捨てる。それが国の考えだったのだから。

そんな扱いをされ続けたセラの心はとても傷ついていた。

自分は何の為に神々の力を授かったのか。

自分は何故生まれたのか。

そんな自問を繰り返し暫く一人で考えているといつの間に部屋に入ってきたのか、目の前には一人の人間が自分を静かに見つめ立っていた。











女神達から話を聞いたサキは考える。

行動を起こすなら早いほうがいい。もし戦争になったり既に戦争で力が必要なとき人間達は必ずクリスタルに頼るだろう。

せっかく居場所がわかっているのに持って行かれては面倒だと考えたサキは早めに行動を起こそうと考えた。

しかし、その後はどう処理したものかと悩むところもある。少なからずユキとしてはこの街にはもう少し滞在することになる。そんな中この国がどう動くかわからないからだ。

そう。異世界の知識が不足しているからこその迷いでもあった。


わからないなら情報分析からなんだけど………。情報網がないんじゃねえ。


サキは考えた末にクリスタルを回収することにした。


どうせまた場所がわからなくなるなら手元に置いておいたほうがいいし………。光魔法ってのも気になるからね。


サキは光魔法と聞いて思い当たる節がある。というのも元の世界の小説に同じような魔法で傷を癒したり死人を生き返らせるという話があったからだ。


創作の世界の知識をあてにするなんてよっぽどだなぁ…………。でもまたサカキと話せる可能性が出てきたかもしれないし、やってみる価値はありそう?でも非現実的な……。


一人で自問自答を繰り返しつつも考える。

どのみち常識が通じない世界なのだ、可能性があるならやってみる価値はあると。それにはまた高度な演技が必要だろう。サキとしてではなく『ユキ』として。


サキは作戦を決めると女神達が眠ったことを確認し、街の中央にある王城へと侵入した。


街に入った時は城に入ることになるなんて思わなかったなぁ。しかもこんな形で。

世の中何が起こるかわからないね。


どうでもいいことを考えつつも警戒は怠らない。

女神達から聞いた場所は城の中でも警備は厳重だ。サキは正門が見える高台に上ると見張りの確認をする。

城の前には眠そうにあくびをしている兵士が数人見回りをしていた。

サキはそのまま高所からなるべく音を消して降りると正門を避けて、反対側の城壁を見上げる。


「ここら辺からでいいかな」


するとアイテムボックスから出発前に作っておいた紐を縫い込んだ太いロープのようなものを取り出すと先端に返しのついたフックを装着する。

このフックは鉄製ではなく道端に落ちている石から作られていた。もちろんサキお手製である。

するとそれを城壁めがけて投げると小さな音が響く。しかし周りの気配が動くことはなく音にすら反応していないようだった。


本当に見張りなのかな………。


城壁に上手く返しが引っかかったのか力強く引いても返しが抜けることはなかった。そのまま紐を上手く使い城壁を素早く上り難なく城内に侵入することができた。

展望から城内に侵入したサキは暗い廊下を進んでいく。すると見張りの兵士が3人廊下をウロウロしているが、その動きにはまるで覇気がなくただただ廊下を徘徊しているようにしか見えなかった。

それもその筈である。この世界の兵士でも平均レベルは20前後強くてもグレムより弱いのだから。

しかしサキもこれまでの経験を考えて兵士達が真面目に警備してるのだろうと踏んで廊下の影の部分に自分を溶け込ませるように隠れた。

すると兵士達が真横を歩いているにも関わらずサキに全く気づかない。そのままサキは闇に紛れつつ女神たちの情報を頼りに宝物殿へ向かった。






暫くして女神達の情報通り宝物殿に到着した。慎重に中の気配を探るが人の気配はしない。


宝物殿なのに誰も居ない……?って妙だよね。とりあえず入ろうか。


サキは警戒しつつ宝物殿に入ると一際目立つ場所にあるクリスタルへまっすぐ進む。

そしてクリスタルの中にある人形のような美しい彫刻を見て確認してみる。


多分これだよね。


そしてそのままクリスタルを掴み手元に寄せるとそのまま封印の紙をはがした。すると二人の女神と同じように光を発しながら封印は解かれる。

そのクリスタルから出てきたのはこれもまた他の女神同様小さな見た目の女の子だった。

サキは警戒されないようにユキとしての演技をする。


「こんにちは女神さん。体は大丈夫?」


しっかり相手の目を見て催眠を交えつつ微笑みで話しかける。


「ぇ…………あ」


まだ声がうまく出せないようだ。今までの話を聞く限り女神達は人間に裏切られている………。優しい人間を演じる。しっかり相手にも気を配れる人間に。

サキの知識には沢山の人格者の特徴が書かれた本の内容が入っていた。それはサカキが少しでも感情を理解して仕事を円滑に進めるためにサキに渡したものだった。サキはその本をボロボロになるまで読み続けた。大事に大事に保存しておきいつの間にかそれを読むのが毎日の日課になっていたほどである。

それでも自分自身の感情に変化はなかったが、理屈では理解できるようになり仕事にもそれをいかせるようになった。

その時の内容をひらすら今のユキという人物にトレースする。女神の過酷な過去を包み込んであげられるような優しい人格に。


「とりあえず今は休んで。俺はアクエルとフレイアから君のことを聞いて連れ出しに来たんだ。今は何も言わずについてきてくれるかな?」


温和な笑みを浮かべ最大限の演技をする。セラから読み取れる感情は様々だった。アクエルとフレイアの名前を出す前は怯えや恐怖と困惑だったが二人の名前が出ると目に見えてホッとしていた。


もうひと押しかな?


「もしも嫌なら今日はこのまま帰るよ。声が出しにくいならジェスチャーで答えて欲しい。いいのなら首を縦に、嫌であれば横に振ってくれるかな?」


セラはサキの目をじっと見つめる。

どれくらいの時間が経っただろうか。数分見つめ合った末彼女は首を縦に振った。

サキはもう一度笑顔を浮かべるとセラを自分の内ポケットに入るようにジェスチャーする。


「外に出るまではここで休んでいて欲しい。本当はベッドに休ませてあげたいけど今は狭いポケットで許してね」


すると彼女は少し気を許したのか自らポケットに入り頭だけをひょこっと出すとサキの目を見る。

まるで準備は大丈夫と言いたげな感じだった。それを受け取ったサキはそのまま城を脱出した。













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