表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
98/136

第98話

「個人的な感情は後です」


彼はレオンを見て、医者のように冷静に言った。


「あなたを連れてきた本当の理由は単純です」


「灰色眼球会は昔から『生き残る者』を探していました」


「死ぬべき場所で死なず、崩れるべき時点で耐え、侮辱と苦痛を逆に力へ変える種類の人間」


レオンの表情がほんの少し固まった。


灰色手袋は続けた。


「夜を刻む棺をはじめ、我々が扱う封印物は普通の人間には耐えられません」


「触れた者を先に壊します」


「肉体であれ精神であれ」


「ですがあなたは違う」


「傷、屈辱、恐怖、抑圧」


「そういうものが積み重なるほど、むしろ耐える軸が生まれるようですね」


「北部で何度も確認しました」


「廃礼拝堂でも、応接室でも」


「あなたは見た目よりはるかに珍しい構造です」


レオンは喉を湿らせるように唾を飲んだ。


「つまり……」


「人を探したのではなく、実験体を探したわけですか」


灰色手袋は軽く首を傾けた。


「正確です」


正確だからこそ、なおさら汚らわしかった。


マルセラはその言葉の上に自分の怒りを乗せた。


「それに、あなたはセラを揺さぶれます」


「マヤも、エリンも、リナも」


「あなた一人が消えれば、向こうはそれなりに乱れます」


「だから私的にも公的にも、あなたは抜き取っておく価値が十分にありました」


レオンはとてもゆっくり息を吐いた。


よし。


これでかなりはっきりした。


拉致の理由は三つだ。


一つ目、生還者の検証。


二つ目、封印物実験用の材料。


三つ目、パーティーを揺さぶる人質。


本当に無駄なく悪党だな。


彼の目の前に文言が浮かんだ。


【状況整理】


【使用者、敵組織基準でかなり希少な材料扱い中】


【よくない】


【かなり】


はい。


私も同意します。


しかし状況はそこで終わらなかった。


灰色手袋がテーブルの上の灰色の箱を開けた。


中には手のひらほどの薄い金属片がいくつかと、黒い糸を巻いた針のようなもの、そして透明な液体の入ったガラス瓶があった。


エリンが見たら本当に顔をしかめる道具だった。


呪術を人の体に打ち込む時に使う道具たち。


綺麗に包装された悪意。


レオンが顔をしかめた。


「まさか今すぐ試すつもりですか」


「基本測定だけです」


灰色手袋は淡々としていた。


「本儀式は別の場所で行います」


「ここでは反応を見る程度で十分です」


マルセラは横で低く笑った。


「それに私は、その前に少し晴らしたいものもありますし」


レオンはその言葉が何を意味するのか、すぐに分かった。


よくない。


本当に。


マルセラがゆっくり近づいてきた。


彼女はまず水差しを持った。


レオンは本能的に顔をしかめた。


冷たい水が頭頂から注がれた。


ざばっ。


息が詰まった。


ただの水だった。


だが冷たく、唐突で、縛られた体で浴びると、それだけでも全身が痙攣した。


濡れたシャツが肋骨の痣と肩の傷口を一瞬で掴んだ。


冷たく濡れた布は傷を包むのではなく噛みつく。


レオンの歯が、かち、とぶつかった。


「これは……」


「趣味がかなり悪いですね」


マルセラが濡れた彼の髪を指でかき上げた。


その手つきが余計に鳥肌を立てた。


「あなたはあまりにも簡単に正気を取り戻しますから」


「少し鈍くする必要があります」


彼女は金属ピンを一本持ち上げた。


長く細かった。


そしてそれを、レオンの肩の傷のすぐ横、まだ治りきっていない肉の近くへ、とてもゆっくり押し当てた。


ぶすり、と入る種類ではなかった。


そうではないから余計に悪かった。


傷を刺す代わりに、傷が一番嫌がる角度でずっと触れ続ける。


浅く。


長く。


息を止めて耐えようとすると、そのタイミングを外してくる。


叫ぶほどではなく、だからといって無視できるほどでもない痛みを長く引きずるやり方。


レオンの指が背中の後ろで強く丸まった。


「はあ……」


「笑ってみてください」


マルセラが囁いた。


「いつものように」


レオンは目を開けた。


マルセラの顔が近かった。


怒っていた。


かなり。


だがその怒りは、悲鳴を上げたり物を投げたりする種類ではなかった。


長く押し込めていた毒を一滴ずつ垂らすほうだった。


「北部であなたが割り込まなければ、リリアは私の手の中にいました」


「金庫も開いたでしょう」


「辺境伯も膝をついたはずです」


「それなのにあなたは、いつもよりによってその瞬間に転び、滑り、突っ込み、投げ、笑いました」


「見た目もひどいのに、結果は腹立たしいほどよかった」


ぴん。


金属ピンが今度は肋骨の下の痣をまともに押した。


レオンの腰が縛られたまま跳ねた。


「くっ……!」


「その笑いが嫌いです」


マルセラの声が初めて少しひび割れた。


「人があれほど壊れているのに、どうしてずっとそんな顔をするんですか」


レオンは歯を食いしばった。


痛みで目の前が一瞬白くなった。


だがその最中でも、答えが先に浮かんだ。


「そうしないと……」


彼が息を整えた。


「あなたみたいな人が、あまりに楽しそうに見えますから」


「それが嫌なんです」


そして今度は手の甲が飛んできた。


ぱしん。


唇の内側がまた切れた。


マルセラの息がとても短く荒くなった。


よし。


引っ掻いた。


少し。


大きくはなくても、間違いなく。


灰色手袋がそれを見て低く言った。


「そこまで」


「壊してはいけません」


「分かっています」


マルセラは歯を食いしばったまま答えた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ