第96話
「エリンは臭いと術式を掴め」
「当然でしょ」
「私は中心を斬る」
アデリアはその言葉を静かに聞いていた。
セラは最後に、自分の腰に掛かった青銅プレートを一度だけ触れた。
そしてとても短く、ほとんど息のように付け加えた。
「レオンは連れて帰る」
それは命令ではなかった。
宣言だった。
マヤが弓弦を再び掛けた。
赤い髪が夜の光の下で、鞘から半分抜けた炎のように揺れた。
「今回は先に射る」
「口を開く隙も与えない」
エリンは指先に青い光を一度咲かせてから消した。
「生きて連れて帰って、拉致術式を剥がして、マルセラはまた寝かせる」
「順番さえ守ればいい」
リナは歯を見せた。
「それからものすごく叱ってやる」
アデリアが小さくつぶやいた。
「それはレオンにか、敵にか」
リナの目がぎらりと光った。
「両方」
その答えがあまりにも即答だったので、マヤの口元がほんの一瞬動いた。
セラだけは相変わらず笑わなかった。
彼女はギルド正門の向こう、都市の北東の闇を見ていた。
ギルドの階段の下には、まだ灯りの消えた店が並び、その向こうに屋根が果てしなく重なっていた。
そしてそのさらに遠い闇の端には、古い水門区画がある。
昔、水路を付け替えていた石造りの構造物と腐った木の手すり、人より鼠が多く、昼より夜のほうが馴染む場所。
人を隠すにはよく、探しに来た人を害するにもいい場所。
しかし今夜だけは、その場所を間違った選択にしてやるつもりだった。
セラの眼差しはそう言っていた。
ギルドホールのランプの灯りが一度揺れた。
そして次の瞬間、四人は同時に動いた。
リナは屋根の縁を蹴り、下の路地を割るように走った。
猫耳とはまったく似合わず、彼女の突進は隠密より災害に近かった。
マヤは反対側の煙突を踏み、さらに高く跳ね上がった。
矢筒が肩で揺れ、尻尾の先が方向を指した。
エリンは折り畳みナイフに残った余韻を指につけたまま、最も短い息で追跡式を編んだ。
青い光の糸が一本、夜気の中に細く浮かび上がった。
セラは最後に屋根の端に立った。
夜風が彼女のコートの裾に一度だけ触れた。
彼女は振り返らなかった。
ただとても低く、自分にだけ聞こえるほど小さく言った。
「待っていろ、レオン」
その言葉には慰めがなかった。
心配もなかった。
ただ確信だけがあった。
見つける。
必ず。
そしてその確信が、むしろこの夜全体を少しだけ余計に怖くした。
都市は相変わらず他人の事情を知らないふりをしていた。
屋根は黒い波のように背中を寄せ合い、路地は秘密を抱いたまま口をつぐみ、月光は割れた瓦の上を薄くかすめて通り過ぎた。
だがもう夜の方向は決まっていた。
誰かがレオンを連れて逃げた。
そして誰かが、それよりもっと怖い顔で後を追い始めた。
次に壊れるのは、おそらく屋根ではないだろう。
次に引き裂かれるのは、敵である可能性が高かった。
レオンが再び目を開けた時、世界は臭いから違っていた。
宿の臭いではなかった。
パンも、酒も、濡れた木も、人の暮らす体温もなかった。
代わりに鼻の奥を長く引っ掻く酸っぱい薬品の臭いと、濡れた石壁の冷たい生臭さと、古い布切れが腐りきれないまま湿って生き残っている臭いがあった。
染料倉庫のような臭いだった。
濃い藍色を水に溶かして何日も放置すれば、こんな臭いがしそうだった。
絵の具ではなく、都市の影を絞って搾り取った汁のような臭い。
よくない。
かなり。
レオンはそう思った。
問題は、思考だけがはっきりしていて、体はそれよりはるかに遅いという点だった。
手首が先に痛んだ。
後ろで縛られていた。
縄ではなかった。
革帯と金属の輪。
強く締めすぎてはいなかったが、むしろそのせいで余計に悪かった。
玩具のように扱いやすく合わせた拘束具だった。
足首も椅子の脚に固定されていた。
腰と胸には幅広いベルトが巻かれており、首元にはまだ、あの暗い沈黙呪術の残滓がこびりついた感じが残っていた。
喉の奥に濡れた鉛の塊を一つ入れられているような気分。
彼はゆっくり息を吸い込んだ。
肋骨が痛かった。
肩も痛かった。
後頭部も少し響いた。
よし。
生きている。
思ったより確認基準はいつも単純になるな。
彼がそうつぶやこうとした瞬間、闇の中で蝋燭が一本灯った。
ぱあっ、と。
すると部屋の輪郭がゆっくり露わになった。
石室だった。
天井は低かった。
古い倉庫の地下か、倉庫下の貯蔵室を急いで改造したような場所。
壁には釘打ちした木棚が並び、そこには空の染料桶がいくつかと、古びた布包み、乾いた革袋、ガラス瓶などが積まれていた。
床は湿っており、排水溝のようなものが片側の壁の下に沿って長く走っていた。
部屋の真ん中にはレオンが縛られた椅子があり、その向かいには小さなテーブルが置かれていた。
テーブルの上には水差しが一つ。
布切れが数枚。
細い金属ピン。
そして青銅色ではない、灰色がかった金属の箱が一つ。
ああ。
見るだけでよくない物ばかりだな。
「目が覚めたのね」
声は柔らかかった。
だから余計に嫌だった。
マルセラが蝋燭の横へ歩み出た。
彼女は相変わらず整っていた。
それが一番気分が悪かった。




