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第91話

屋根の上で弾けた足音、路地の下で響いた怒号、割れた瓦が転がり落ちる音、誰かの短い悲鳴、弩の弦が震える余韻。


それらはしばらく、夜気の中でぶつかり合いながら漂っていた。


都市の屋根は黒い波のように重なり合って立ち、路地はその下で雨に濡れた鞘のように長く冷たく口をつぐんでいた。


煙突の煙は深夜の汚れた息のようにゆっくり流れ、月光は屋根の斜面を薄く舐めてはすぐに途切れた。


誰かがついさっき上を通り、誰かを下へ引きずっていった。


その事実だけは、夜全体が知っていた。


そしてその夜の真ん中で、最初に爆発したのはリナだった。


「レオオオン!」


彼女はほとんど跳び上がるように塀を踏み、屋根の縁まで跳ね上がった。


本来なら二度ほど足場を踏む高さだったが、今回はそんな計算がなかった。


ただ跳んだ。


鈍器を握る手には筋が浮き、猫耳は完全に後ろへ伏せられていた。


明るく、騒がしく、よく笑うリナの顔は、普段ならいつも日なたの側にあったが、今は違った。


今の彼女は、とても単純な種類の怒りだった。


自分のものを奪われたと思った獣のような顔。


屋根の上に残っていた黒衣の一人が彼女を止めようとした。


よくない判断だった。


リナは何も言わなかった。


ただ振った。


ドン。


鈍器が盾を砕いた。


ガン。


二度目の一振りで肩を折った。


三度目はあえて必要なかったが、リナはやった。


敵が屋根の上を半回転ほど転がり落ちるまで。


「どこへ行った!」


その怒鳴り声は質問というより咆哮に近かった。


だが答えはなかった。


あるのは血の臭いと砕けた瓦と、ついさっきまで誰かが踏んでいた跡だけ。


マヤはすでにそれより先に動いていた。


彼女は矢をもう一本つがえると、屋根の上を滑るように走った。


肩の傷は間違いなく痛かった。


弩のボルトがかすめた場所でマントが赤く濡れており、腕を上げるたびに微かに表情が歪んだ。


それでも止まらなかった。


むしろさらに速くなった。


赤い髪が夜気の中を刃のように切り裂いた。


狐耳はぴんと立ったまま風の流れを読み、尻尾は低く流れたまま均衡だけを保っていた。


彼女は屋根の縁で一度膝をついて止まった。


そして歯を食いしばった。


いない。


逃走経路はある。


縄の跡もある。


瓦が削れた場所、滑車が通った痕、血の一滴、かかとの跡、重さが乗った方向。


だがレオン本人はいない。


その事実がマヤの腹の内を掻いた。


「くそ」


彼女がとても低く吐き捨てた。


いつものように軽く笑う口調でもなく、他人をからかう時の悪戯っぽい声音でもなかった。


ただ本物の罵声だった。


短く荒く、血の混じった悪態。


少し前、弩使いの挑発に自分の眉が揺れたことを思い出した。


あの半拍。


あの一瞬。


自分がそこに反応していなければ、二本目の矢はもっと早く飛んでいたかもしれない。


レオンを掴んでいた奴の太腿ではなく、首を貫いていたかもしれない。


いや、せめてあの滑車を断つことはできたかもしれない。


そう思った瞬間、マヤはそのまま屋根の手すりを蹴った。


バキッ。


古い木の手すりが片側へ引き剥がされた。


下の路地で誰かが「なんだまた!?」


と叫んだが、彼女は気にも留めなかった。


「……もう一回言ってみな」


マヤが誰もいない闇へ向けてつぶやいた。


「安い女だって?」


その声は笑い気のない低さだった。


エリンは反対側の屋根の端で立ち止まっていた。


彼女は他の三人のように叫ばなかった。


物も壊さなかった。


その代わり静かすぎて、むしろ余計に怖かった。


銀色の髪が夜風に薄く散り、青白い顔にはほとんど表情がなかった。


だが目は違った。


青い瞳の奥で、何かとても冷たく精密なものがずっと計算されていた。


追跡。


臭い。


流れ。


魔法の残響。


呪術師特有の残滓。


レオンの体に残っているはずの薬草の臭い。


今しがたの拉致術式に混ざっていた暗呪紋様の波長。


エリンは膝をつき、割れた瓦の欠片を指先で撫でた。


そこには薄く黒い灰のようなものが付着していた。


マルセラが使った沈黙呪術の残響だった。


彼女はそれを嗅がなかった。


ただ指先につけたまま目を閉じた。


冷たい。


湿っている。


人を眠らせるより、意識だけを重く掴んで引きずり下ろす系統。


ああ、本当に性格が悪い。


そしてその呪術の残響の真ん中に、ずっと馴染みのある臭いがごく微かに混ざっていた。


レオン。


薬草の臭い。


血。


埃。


そして妙なほど人間らしい体温の匂い。


エリンは目を開けた。


その直後だった。


屋根の下の路地からセラが上がってきた。


他の三人と違い、彼女は走っていなかった。


走っていたのだろう。


だが見た目には歩いてきたように見えた。


あまりに精密に力が整理されていて、速度を測りにくい動きだった。


灰色の都市の夜の上で、セラの黒いコートの裾だけがごく短く揺れた。


狼耳はまっすぐ立ち、青い目は静かすぎて、むしろ冷えた刃のように見えた。


彼女は屋根の上に上がるなり、何も言わず周囲を見渡した。


砕けた瓦。


血。


縄の跡。


黒衣の一人がまだ呻きながら身を丸めている地点。


そしてレオンが消えた方向。


セラはそのすべてを一度に整理した。

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