第86話
「オーウェンさん!」
「残りの油を上げます!」
オーウェンが下から桶を結んで上げてくれた。
キースも片脚で踏ん張りながら手伝った。
そうして三人は、あまり立派とは言えない格好で、烽火を再び生かした。
火が最初に立ち上がるときの音は、人を安心させる。
ぼわっ。
赤い息。
黒い煙。
そしてすぐ、西の空へ向かって上る細くもはっきりした柱。
レオンはそれを見ながら小さく笑った。
「いいですね。」
本当にそうだった。
一人で来たのに、結局一人だけの火ではなかった。
下からキースが顔を上げて尋ねた。
「もう降りてこい!」
「はい!」
そしてレオンはとても正確に、降りる途中でまた滑った。
どしん。
今度は尻からだった。
キースが心底うんざりした顔をした。
「……本当に変な奴だな。」
レオンは土の上から手を上げた。
「今の表現はかなり正確です。」
帰り道は来た時よりもさらに遅かった。
オーウェンは歩けたがかなり遅く、キースはほとんど半分ほどレオンにもたれなければならなかった。
レオンは片手でキースを支え、もう片方の手で剣を握ったまま、西の道をさかのぼって下りた。
烽火はすでに上がっているので、都市のほうでも異常に気づいたはずだ。
だが支援隊が来るまでに、連中がもう一度襲ってこない保証はなかった。
保証というものは、たいてい物語の外にしかない。
レオンはそのことをよく知っていた。
だから、当然のように、帰り道には待ち伏せがあった。
廃採石場の下の岩の隙間。
矢が一本。
ひゅっ。
レオンは反射的にキースを押しのけた。
矢が自分の肩の横をかすめた。
痛かった。
本当に律儀に痛かった。
岩の後ろから罵声が飛んだ。
「くそ、まだ三人とも生きてるのか!」
あ。
もう一人いたな。
よし。
なら、これで最後だ。
オーウェンが息を飲んだ。
「逃げろ……!」
キースは脚を引きずりながら歯を食いしばった。
「畜生……」
レオンは二人を後ろの斜面側へ押した。
「よし。」
「慣れた構図ですね。」
彼は岩の間を見渡した。
敵は一人。
だが位置がいい。
上側。
弓あり。
こちらは二人を守らなければならず、自分はもう肩までまた擦られた。
つまり。
はい。
完璧だ。
二本目の矢。
レオンはわざと遅れて動いた。
完全には避けず、ぎこちなくよろめいた。
矢が腕の袖を貫いた。
岩の上の奴があざ笑った。
「間抜けだな。」
【『取るに足らない』判定感知】
【補正上昇】
はい。
もう十分です。
レオンはそのまま後ろへよろめくふりをして、わざと砂利の山を踏んだ。
体が下へ傾いた。
とても見事に転がり落ちた。
キースが悲鳴を上げた。
「おい!」
しかし転がった位置が重要だった。
レオンは岩の下の死角まで一気に下りた。
弓使いの立場からすれば、視界を失ったことになる。
【転倒判定】
【接近成功率上昇】
レオンはすぐ横にあった割れた採石の欠片を拾った。
上の岩の角へ投げた。
こつん。
音は小さかったが、敵は反射的にそちらを見た。
レオンはその瞬間、岩の横をよじ登って相手の足首を引っ張った。
「何!」
男がバランスを崩した。
弓が揺れた。
レオンはそのまま体を起こし、奴の腰へぶつかった。
二人は一緒に砂利の斜面を滑り落ちた。
とても醜く、とても痛い乱闘だった。
拳。
肘。
砂。
石。
膝。
剣ではなく、ほとんど喧嘩だった。
だがレオンには、こういう方面のほうがむしろ慣れていた。
戦場で最も格好よくない瞬間。
教本には載らない姿勢。
地べたで互いに歯を見せる距離。
男が悪態を浴びせながら肘を振るった。
レオンの目元が裂けた。
男がげらげら笑った。
「一人で来て英雄ごっこでもしてたのか?」
【『取るに足らない』判定感知】
【補正上昇】
レオンは息を荒げながら笑った。
「いいえ。」
彼は男の手首をつかんだ。
とても強く。
「私は元からこういうほうです。」
そして頭突きをした。
ごん。
男の鼻が潰れた。
体から力が抜けた。
終わりだ。
レオンは少しの間、その上にうつ伏せになったまま息だけを整えた。
世界が少し揺れた。
肩も、肋骨も、目元も全部痛かった。
だが振り返ると、オーウェンとキースはまだ立っていた。
よし。
それならいい。
キースが呆然とした顔でつぶやいた。
「お前、本当に……いかれた……」
レオンは土と血の混じった顔で笑った。
「はい。」
「今日は何度も聞きました。」
彼は最後の弓使いの手首までしっかり縛ってから、オーウェンに中継所のほうを顎で示した。
「中の三人も縛っておきました。」
「烽火を見たなら、支援班が来るはずです。」
「直接連れて行く必要があるのは、話が通じるこの最後の一人だけで十分でしょう。」
オーウェンは息を整えながら短くうなずいた。
「そうだ……残り三人はあそこに置いていっても走れない。」
よし。
これで残った密輸業者の行方も整理できた。
直接都市へ連れて行くのは弓使い一人。
中継所に縛っておいた三人は、烽火信号を見た回収支援班が拾っていけばいい。
都市の城門が見えたころには、日がほとんど傾きかけていた。
西の空は長く煮詰めたザクロの汁のように赤く、城壁の影は野の上へ長く横たわっていた。
城門前の衛兵二人は、血まみれの三人を見て目を丸くし、そのうち一人はレオンに気づくなり、かなり複雑な表情になった。
『またお前か』と『今度は一人か』と『なぜ生きている』が同時に入った表情だった。
レオンはその視線を見てふっと笑った。
「はい。」
「私も似たようなことを考えています。」




