表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
83/141

第83話

足元の砂利がさらりと滑った。


レオンは一瞬バランスを崩してよろめいた。


「おっと。」


しかし今回は転ばなかった。


彼はねじれた姿勢のまま立ち止まり、その場所から左の茂みの下に半ば埋もれた細い鉄線を一本見つけた。


レオンは目を細めた。


「あ。」


道中の罠だった。


誰かがわざと砂利を撒き、よろめいてもう一歩踏み出す者を引っかけようとした跡。


鉄線の反対側には古い木釘が二つと、その後ろに鋭く削られた鉄片が結ばれていた。


人を殺すには少し弱く、足を使えなくさせるには十分な程度。


レオンはしばらくそれを見てから、ごく小さく笑った。


「よし。」


「早くも心が温まる歓迎ですね。」


マヤがくれた小さなナイフが最初に役立った。


彼は鉄線を切り、罠を脇へどけた。


そして痕跡を調べた。


新しい。


少なくとも二日以内。


中継所がただ静かなのではなく、誰かがわざと道から塞いでいるという意味だった。


レオンの笑みが少し消えた。


よし。


なら話が少し変わる。


彼は足取りをもっと軽く変えた。


大きな音を立てず、けれど必要以上に隠れもしないように。


静かすぎると、かえって狩られる側に見える時がある。


レオンは狩られる側には慣れていたが、今日は少し変わりたかった。


斜面を一つ越えると、灰岩中継所が見えた。


本当に小さかった。


石で低く積まれた柵。


半ば崩れた馬小屋。


烽火台を兼ねた木の塔が一つ。


そして母屋と呼ぶには気恥ずかしい四角い石造りの小屋が一軒。


問題は、静かだという程度ではなく、静かすぎる点だった。


馬のいななきもなく、人の声もなく、煙もなかった。


烽火台のてっぺんには黒く冷えた火鉢だけがあった。


レオンはすぐに剣の柄へ手を置いた。


「はい。」


「雰囲気が悪いです。」


「とても。」


彼が柵を越えた途端、カラスが三羽、屋根の上から羽ばたいて飛び上がった。


その音だけでも心臓が一度どきりとした。


風は乾いていて、土の床には靴跡が入り乱れていた。


二つ、三つ、いや四つ以上。


一部は急いで走り、一部は引きずられた跡のように長く滑っていた。


扉の前には血が乾きついていた。


レオンは唇の内側を軽く噛んだ。


そして扉を押した。


中は滅茶苦茶だった。


卓はひっくり返っている。


椅子は壊れている。


記録板は割れている。


壁に掛けていた小さな鐘は半分ほど落ちている。


人が戦った。


それも少し振り回して終わったのではなく、かなり必死に。


レオンは小さな声で呼んだ。


「生きていますか。」


少し後。


低く、とても低く、どこかからうめき声がした。


レオンはすぐに身を低くした。


音は床の下だった。


貯蔵庫。


ひっくり返った卓をどけると、蓋が一つ見えた。


錠は半ば壊れていて、取っ手には血のついた跡がはっきり残っていた。


レオンは剣の代わりに小さなナイフを握り、蓋を慎重に持ち上げた。


下に人が二人いた。


一人は中継所の管理者らしき中年の男だった。


額が割れ、肩を負傷したまま壁にもたれていた。


もう一人はギルドの伝令服を着た少年だった。


年はレオンより少し下か、同じくらいだろうか。


脚の下のほうが崩れた木棚に挟まれていて、顔は恐怖と怒りと屈辱でぐちゃぐちゃだった。


少年はレオンを見るなり、歯を食いしばって言った。


「……誰だ。」


レオンは息を吐いた。


「よし。」


「話す力があるなら、生きる可能性もありますね。」


「質問に……」


「答えろ。」


「ギルド所属のレオンです。」


「アデリア支部長から烽火が途絶えたと聞いて来ました。」


中年の男が割れた声でつぶやいた。


「一人で……?」


レオンはおとなしくうなずいた。


「はい。」


「私もそこが少し気になっています。」


少年の顔が一瞬で歪んだ。


「くそ……」


「一人?」


「ふざけてんのか?」


「外の奴ら、まだ行ってないんだぞ?」


レオンの目つきが細くなった。


「外にいるのは人ですか。」


「密輸業者どもだ……」


「三人、いや四人。」


「中継所の帳簿と封印郵便の袋を漁っていった。」


「俺たちが死んだと思って去ったが、たぶんまだ近くを探り回っている。」


あ。


よくない。


人が問題なら、話が通じる可能性がほんの少しはある。


同時に、見くびってくる可能性も高い。


それはレオンにとって、たいてい両刃だった。


レオンは下へ降り、中年の男の傷を先に見た。


深くはない。


だがかなり血を流していた。


少年のほうはもっと深刻だった。


脚を抜かなければ移動は難しい。


彼が棚を覗き込むと、少年はまず癇癪を起こした。


「何してる、早くしろよ。」


レオンは落ち着いて言った。


「分かりました。」


「ただ、一つお知らせしておくことがあります。」


「何だよ。」


「私は一人で来ましたし、脚力は今あまり万全ではなく、外には密輸業者が四人いるかもしれません。」


「だから?」


レオンが笑った。


「ですから、あまり急かされると私の気分が損なわれます。」


少年は呆れた顔をした。


「この状況でそれが大事か?」


「思ったより大事です。」


そしてすぐ棚を押し上げた。


ぎいっ。


重かった。


肋骨がうずいた。


それでも持ち上がった。


少年が歯を食いしばりながら脚を抜いた。


ぱんぱんに腫れていた。


折れてはいないようだが、まともに歩くのは難しい。


中年の男が息を整えながら言った。


「名前はオーウェンだ……そいつはキース。」


キースが顔をしかめた。


「こんな所で自己紹介なんかしたくないんだけど。」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ