第77話
「では私は公式にも怪しい人間なのですか?」
アデリアはすぐには答えなかった。
代わりに卓の下から分厚い本を三冊取り出した。
現行クラス集。
戦闘職種付録。
特殊適性分割表。
表紙からして硬かった。
本の匂いまで硬そうだった。
アデリアと老人は、それをレオンの前で順に広げた。
戦士系統。
違う。
武闘系統。
近いが違う。
魔法系統。
条件が違う。
探索系統。
方向が違う。
特殊戦場適応型。
半分だけ合い、半分がずれる。
ページがめくられ続けるほど、レオンの胸の内も少しずつ沈んでいった。
外の訓練場の音が妙に遠ざかった。
何もない人間は、名前一つだけでも耐える。
その名前がどこにも引っかからないと、笑っていた口も少しは乾く。
老人が本を閉じながら言った。
「ないな。」
アデリアも短くうなずいた。
「現行クラスにはない。」
その言葉が落ちた。
部屋の空気が少しの間、鉛のように重くなった。
レオンは思わず笑った。
笑いというものは、ときどき盾より先に持ち上がる。
「いいでしょう。」
「結局私はクラスのない男だったのですね。」
老人がちらりと見た。
「まだ終わっていない。」
「はい?」
アデリアがゆっくり席を立った。
「現行にないからといって、世界に一度もなかったという意味ではない。」
彼女は会議室の内側、普段は鍵のかかっている小さな扉へ歩いていった。
金属の鍵が回る音がした。
かちゃり。
扉が開くと、古い紙の匂いが押し寄せてきた。
乾ききった秋、長く閉ざされた倉庫、埃を食った時間。
そういうものが一度に混ざった匂いだった。
レオンは思わず姿勢を正した。
「まさか……」
アデリアが振り返りもせずに言った。
「古い記録を見る。」
ギルド裏手の記録室は、日光の入らない井戸の底のようだった。
窓は狭く高く、その隙間から入る光は埃を照らすことだけに熱心だった。
本棚は壁のようにぎっしり並んでおり、その上に積まれた帳簿や箱は、まるで時間が自分を層にして重ねたまま忘れてしまったようだった。
この部屋の中では、紙でさえ生きているように感じられた。
開かれる前から何かを知っていそうな、そんな気分。
レオンはゆっくり見回してから言った。
「うわ。」
老人がぶっきらぼうに受けた。
「怖いのか。」
「いいえ。」
「今、埃を吸ってくしゃみをするのが怖いです。」
「静かにしろ。」
くしゃみも許されない空間とは、本当に大したものだった。
アデリアは古い金属標識の付いた棚を一つ開いた。
中には現行クラス集よりはるかに荒い本が入っていた。
表紙は擦り切れ、角は摩耗し、革紐は硬くなっていた。
まるでとっくに死んだと思ったのに、牙だけはまだ残っている老いた獣のようだった。
彼女が最初の本を卓上に置いた。
「開拓期戦場系統。」
二冊目。
「辺境防衛系統。」
三冊目。
「廃止された特殊対応クラス。」
レオンが目を瞬かせた。
「廃止されたものも記録するのですか?」
アデリアが紙をめくりながら答えた。
「消えたものほど残すべきだ。そうしないと、同じものがまた現れたとき、皆が馬鹿みたいに初めて見た顔をすることになる。」
レオンはぼんやりとその言葉を聞いた。
消えたものほど残すべきだ。
不思議とよかった。
本当に不思議なほど。
老人は帳簿を一冊広げて、レオンのほうへ顎をしゃくった。
「立ってみろ。」
「はい?」
「剣を持って立て。」
「それから構えを取れ。」
レオンはとりあえず立った。
剣を握った。
そして構えを取ろうとして止まった。
「どの構えをおっしゃっているのですか?」
「私が知っている構えは今、かなり難解なのですが。」
老人は無心に言った。
「普段、お前がいちばん多く生き延びるときに取る構えだ。」
レオンはほんの少し沈黙した。
そしてゆっくり膝を落とした。
左足はぎこちなく半歩前へ。
上体は正面ではなく、わずかにひねって横へ。
剣は高く掲げない。
むしろ相手の刃に一度打たれてもまた続けられるように、小さく汚い線で。
美しくはない。
教本のようにまっすぐでもない。
だが体は、その姿勢をいちばん楽に覚えていた。
老人が帳簿を見下ろしながらつぶやいた。
「ふむ。」
次のページをめくる。
「怪我をしてもらわねばならん。」
レオンの表情がこわばった。
「え?」
老人は木の棒を一本取り上げると、きわめて平然と言った。
「心配するな。」
「死なない。」
「その言葉がまったく慰めになりませんが。」
アデリアが腕を組んだ。
「必要ならやるべきだろう。」
「支部長までなぜこうなのですか。」
老人がぶん、と木の棒を振った。
レオンは反射的に避けようとして、記録室の床に転がっていた低い台の角に足を引っかけた。
「あ。」
転んだ。
べちゃっ。
実にきれいに転んだ。
そしてほぼ同時に、木の棒が再び入ってくるのを見て、体が先に動いた。
床に手をつき、ひねるように起き上がりながら、剣先が短く跳ねた。
とん。
木の棒の弱い点を正確に打ったのだ。
棒は折れ、老人の手の中で力なく回った。
老人が目を細めた。
アデリアも一拍遅れて視線を上げた。
レオンは本人も気まずかった。
「いいですね。」
「今日も相変わらずです。」
老人はゆっくり帳簿をめくった。
また一枚。
また一枚。
その手が、ある古いページの前で止まった。
彼はページをアデリアのほうへ向けた。
そこには古い挿絵一つと共に、古い文字が記されていた。




