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第73話

それはどことなくリナらしい哲学だった。


市場の隅、玩具とがらくたを売る露店の前で、リナは急に足を止めた。


そこには小さな木槌や、布人形、ビー玉、粗雑な金属飾り、子ども用の木剣がぎっしり並んでいた。


リナはしばらくそれを見下ろしてから、意外にもごく小さな木の兎の彫り物を一つ手に取った。


マヤが目を細めた。


「何それ。」


「珍しく可愛いもの。」


リナは大したことでもないように言った。


「なんとなく。」


「なんとなく?」


「うん。」


「なんとなくリリアを思い出して。」


マヤは少しの間、何も言えなかった。


あのリナの口から、あんな脈絡のない優しさがぽろりと出てくるとは予想していなかった顔だった。


リナは兎の彫り物をくるりと回して見ながら言った。


「あの子、最近ちょっと笑うようになったでしょ。」


マヤは少し黙ってから言った。


「うん。」


「だから、このくらいは買ってあげてもいいかなって。」


マヤは結局笑った。


「あんた、意外とこういうのに弱いね。」


「なんで、だめ?」


「いや。」


「いいよ。」


それは本心だった。


リナはなんとなく得意げに肩をそびやかし、マヤはそんなリナを見ながら心の中で思った。


そう。


このパーティーが妙にうまく回る理由の一つは、いちばん騒がしい奴がいちばん単純に優しいからだ。


エリンの休日は半分ほど失敗した。


なぜならエリンは休み方をよく知らないからだ。


彼女は最初、たしかに休もうとしていた。


部屋に入り、扉を閉め、ブーツを脱ぎ、ベッドの端に座り、ため息をつき、目を閉じた。


そして十分後、また目を開けた。


頭の中に墨線の文様が浮かんだ。


金庫扉の蝶番の上にあった黒い染みが浮かんだ。


応接室の床を這っていた粘つく汚染の匂いが浮かんだ。


いい。


完全に駄目だった。


結局エリンは、ギルドの資料室の片隅にこもった。


資料室は日差しがあまり入らない部屋だった。


分厚い帳簿、カビの匂いの直前までいった紙、インクの染み、整理されていない標本箱、そして誰かがいつか必ず整理しようと誓うだけ誓って諦めてしまった各種の記録。


エリンは不思議と、こういう空間では心が少し落ち着いた。


人より紙のほうがうるさくないからだ。


彼女は北部で見た汚染の様相をメモし、似た呪式の項目を探った。


手は速く、表情は疲れていて、目の下は暗かったが、不思議と集中力だけはいっそう澄んでいた。


かなり時間が経ってから、資料室の扉がそっと開いた。


レオンだった。


エリンは本から目も離さずに言った。


「あなた、回復室じゃなかったの?」


「脱出しました。」


「なぜ。」


「薬の匂いが濃すぎまして。」


「それは回復室だから当然でしょ。」


「おっしゃる通りです。」


レオンは向かいの椅子に、きわめて慎重に座った。


座るだけでも慎重すぎるほどだった。


肋骨がまだ無事ではないという意味だった。


エリンはそれを見て舌打ちした。


「休まずにここまで来て何するの。」


レオンは資料の山をちらりと見てから笑った。


「エリンさんは休みの日でも休まないんだなと思いまして。」


エリンは返事の代わりにページをめくった。


「眠れないの。」


ごく短い言葉だった。


けれどその一言には、一日中積もった疲れがすべて入っていた。


レオンは少し黙ってから、小さく言った。


「そういう時もありますよね。」


エリンはようやく彼をちらりと見た。


レオンは本ではなく、資料室の窓の下に積もった埃と光だけを見ていた。


いつものように飄々としているわけでもなく、かといって深刻ぶっているわけでもなく、ただ静かにしていた。


妙に楽な沈黙だった。


エリンはまた本へ目を戻し、つぶやいた。


「昨日のあの汚染式、灰色眼球会のやり方と完全には同じじゃない。」


「では?」


「混ざってる。」


「誰かが別の方式まで差し込んだ。」


「だから余計に気味が悪い。」


レオンはゆっくりうなずいた。


「では後でさらに面倒になるわけですね。」


「うん。」


「ものすごく。」


「いいですね。」


エリンが眉をひそめた。


「何がいいの。」


レオンはごく当然のように言った。


「面倒だということは、まだやることがあるという意味ですから。」


エリンは一瞬、ページをめくる手を止めた。


そしてごく小さく笑った。


「変なところで前向きね。」


「よく転がる人間の長所です。」


「それは長所じゃない。」


だが完全に間違った言葉でもなかった。


エリンはため息をつき、本を一冊レオンのほうへ押しやった。


「じゃあ、そこに座っているついでにこれを読んで。」


レオンが表紙を見た。


「古代封印式クラス草本。」


「うん。」


「休みの日にですか?」


「あなたも休まずに来たでしょ。」


正確だった。


いい。


これで共犯だな。


レオンはふっと笑いながら本を開いた。


資料室の窓の隙間から差し込む午後の光が、埃の上に静かに降りた。


二人はしばらく黙って座っていた。


一人は資料を探り、一人は無理やり難しい本を読み、そして二人とも休むことに失敗した顔をして。


だがそれはそれで悪くなかった。


そしてレオンの休日は、結局半分ほどは都市散歩で終わった。


回復室にだけ横になっていると腐りそうだった。


資料室にだけ座っていると目が抜け落ちそうだった。


だから彼は夕方頃、ギルドの外へゆっくり出た。


一人で歩く都市は、昼より少しゆっくりしていた。


店の雨戸を半分下ろす人々、一日の商いを終えて伸びをする商人たち、夕焼けの下でゆっくり帰っていく荷車、路地の入口でもう酒を飲んでいる人間たち。


空は赤く、屋根は灰色で、その間を歩く人々の顔はみな少しずつ疲れていた。


いい。


これもいい。

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