第68話
笑ったのかどうか曖昧なほどに。
だが、それで十分だった。
リリアはスプーンを置き、レオンを見た。
その視線は少し複雑だった。
感謝、申し訳なさ、驚き、そしてまだ名づけられない何かまでが一度に混ざった顔。
「あの。」
彼女の言葉は低く短かった。
「さっき……」
「本当にありがとうございました。」
レオンは首を傾げた。
「背中のことですか、金庫のことですか、それとも全般的に全部ですか?」
リリアの顔が一気に赤くなった。
「ぜ、全部です!」
リナがすぐにくすくす笑った。
「背中も含むんだって。」
「わざわざ具体化しないでください。」
レオンがため息まじりに言った。
マヤは面白そうな表情で、エリンは疲れた顔でも口元をほんの少し上げ、ヘレナでさえペン先を止めて一度くらいリリアのほうを見ていた。
いい。
このくらいなら、今日の食卓の雰囲気は生きている。
ヘレナはメモ用紙の上でペン先を止めたまま、低く言った。
「祝杯はありません。」
リナががっかりした顔をした。
「なんで。」
「今日は勝ったと騒ぐ日じゃない。」
「今日は、辛うじて奪われなかった日でしょう。」
食卓が少し静かになった。
それは冷たかったが、間違ってはいなかった。
エドモンドが低く付け加えた。
「その通りだ。」
そしてそのあと、とても短く言った。
「だが、だからといって、生き残ったことを軽く見るつもりもない。」
今度は誰もすぐには言い返さなかった。
リリアが印章箱のほうをちらりと見て、ヘレナはメモ用紙の上で指を止め、セラは杯を置いた。
マヤは目を伏せ、リナもパンをちぎる手を少し止めた。
それは祝いの言葉より、もっと祝いの言葉のようだった。
今日は辛うじて奪われなかった日。
けれど、まさにそのために、より生きている日。
レオンはスープ皿の底を見ていて、ふっと笑った。
うん。
そうだな。
大した勝戦でもなく、世界がひっくり返ったわけでもなく、隠されたすべてを一度に明らかにしたわけでもない。
ただ自分たちの分を奪われずに持ちこたえた日。
なのに、そういう日のほうが本物らしい。
食事が終わる頃には、皆が少しずつ人間らしい顔に戻っていた。
リナは満腹のせいで鈍った顔で椅子にもたれ、マヤは空の皿の縁でフォークをくるくる回し、エリンは結局メモ用紙の横に突っ伏すように顎をついた。
ヘレナは最後まで整理していたが、ある瞬間ペンを置いた。
セラは窓の外を一度見た。
夜明けがほとんど終わりかけていた。
灰色だった空は少しずつ青みを帯び、城壁の上の旗手もさっきよりはっきりしてきた。
夜がすべて終わったわけではなくても、少なくとも押し戻されてはいた。
エドモンド辺境伯はゆっくり席から立ち上がった。
全員の視線が彼に集まった。
彼は長くは話さなかった。
「今日は休め。」
その一言が先に出た。
そして少し、本当に少し間を置いてから付け加えた。
「ベルハルト家は今日のことを忘れない。」
また短かった。
けれどその短さが、なぜかこの老いた貴族が差し出せる最大限のもののように聞こえた。
リリアも席から立ち上がった。
彼女は印章箱を胸元に抱え、レオンとセラ、マヤ、リナ、エリンを順に見つめた。
目元には疲れがあったが、もうふらつく顔ではなかった。
「本当にありがとうございます。」
彼女が言った。
「今度は……私も覚えています。」
「誰が私の名前を守ってくれたのか。」
マヤが照れくさそうに鼻先をかいた。
リナはあからさまに満足そうで、エリンは視線を少し逸らした。
セラはただ静かに一度うなずいた。
レオンはそれを見て笑った。
いいな。
本当に。
誰が誰を救ったのか、誰が誰に借りを作ったのか、そういうことをあまり長く問い詰めなくてもいい瞬間がある。
ただ今日は、一緒に奪われなかった。
一緒に持ちこたえた。
一緒に生き残った。
それだけで十分な夜もある。
いや、今は明け方だけど。
まあ、それは流そう。
ヘレナが最後の整理表を畳みながら言った。
「いいでしょう。」
「では本当に解散しましょう。」
「捕虜の監視は城内の人員に引き継ぎ、エリンと私は文書側の最終点検後に交代します。」
「セラのパーティーは休息を。」
リナがすぐに尋ねた。
「食べてすぐ寝てもいい?」
「いいわ。」
「最高だ。」
マヤがため息まじりの笑いを漏らした。
「本当に単純でいいな。」
レオンは席から立とうとして、少し止まった。
肋骨がまた抗議した。
とても律儀に。
「ううむ。」
セラが隣で短く言った。
「大丈夫か。」
レオンは少し考えてから答えた。
「品位はありませんが、生きています。」
セラがほんの少し笑った。
「ならいい。」
その一言が、今日一日全体の結論のようだった。
品位はない。
だが生きている。
ならいい。
レオンは食堂の敷居の前で一度振り返った。
エドモンド辺境伯とリリア。
整理された文書の山。
半分冷めたスープの匂い。
ようやく人の暮らす音のように聞こえる低い声たち。
そして血の臭いの代わりに、パンの匂いが少し強くなった空気。
応接室で毒を吐き出した家が、今はようやく息を吸い直していた。
その姿が少し気に入った。
仕方ない。
せっかくここまで来て一緒にめちゃくちゃになった以上、潰れかけた家がまた息をする様くらいは、最後まで見たくなる。
レオンは音もなく笑った。
彼の目の前に最後の文言が浮かんだ。
【辺境伯の物語一段落】
【生存確認】
【裏切り者確保】
【名前保全成功】
【個人的感想:はい、今日はこれで十分です】




